なんでその子のことを思い出したか分からないが、季節がちょうど今頃だったからだろうか。 「30代になると記憶力かなり落ちますからね、がんばってください」 などとおじさんの教官に言われて、悔しい思いをしながら通っていた自動車教習所。その子は同じ時期に通っている女子大生だった。 もともと可愛らしい顔立ちに派手過ぎないメイク、流行りを適度に押さえた優しい色合いの洋服。 はきはきして明るく、友達も多そうだった。大手企業に就職も決まり、仕事で必要だからと免許を取りにきていた。 いいなぁ、若くて可愛くて、将来も明るそうだし、男の子にも好かれそうだし。というのが、私の第一印象だった。 その子とはすぐに言葉を交…