或夏の日暮です。 歌舞伎町の西らへんの公園で、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。 若者は名をトシハルといって、元はNO.2ホストでしたが、今は財産を費い尽して、 その日の暮しにも困る位、憐な身分になっているのです。 何しろ歌舞伎町といえば、センター街くらい、繁昌を極めた街ですから、住来にはまだしっきりなく、ホストやキャバ嬢が通っていました。公園一ぱいに当っている、油のような夕日の光の中に、お年を召したホストのかぶった紗々みたいな帽子や、トルコ系お嬢の金の耳環や、現NO.1ホスト“白馬”の衣装に飾った色系の手編が、絶えず流れて行く容子は、まるで画のような美しさです。 しかしトシハル…