雨の日だった。朝から大雨が降っていた。何年も前から、ずっと恐れていたこの日。 1泊2日の林間学校。小学生になって、初めての宿泊行事。 玄関の前で、固まったように足が動かなかった。 「こころ」 ぐずぐずと泣いていた私に向かって、お母さんが言う。 荷物はすべて抱えていた。靴も履いていた。ただ、ドアの先へと足が進まない。進めたくない。行きたくない。 「こころ、もう時間だよ。早くしないと、バスが」 母は焦っているようだった。学校から長野県まで、借り切りのバスで向かう。そのためには絶対に守らなければいけない集合時間があった。遅れたら、バスが発車してしまう。まだ家で燻ぶっている私にも、集合時間は刻一刻と迫…