大方《おほかた》の 憂きにつけては いとへども いつかこの世を背《そむ》きはつべき 出家をした藤壺の中宮から源氏の君、東宮様に🪷 〜世の中のの嫌なことからは離れたけれども、 子どもへの煩悩は いつになったら すっかり離れ切ることができるのでしょうか。 【第10帖 賢木 さかき】 東宮のお使いも来た。 お別れの前に東宮のお言いになった言葉などが 宮のお心にまた新しくよみがえってくることによって、 冷静であろうとあそばすお気持ちも乱れて、 お返事の御挨拶を完全にお与えにならないので、 源氏がお言葉を補った。 だれもだれも常識を失っているといってもよいほど 悲しみに心を乱しているおりからであるから、…