新宿に住んで12年が過ぎると、ふるさとの風景が、変わっていることに気づかないまま過ごしてしまう。帰省したとき、桜井駅の前に、金色の看板を光らせた台湾料理店があるのを見つけた。 大きく書かれた営業時間、吊るされた真っ赤な提灯、中国語でびっしり書かれたメニュー。その外観だけでも、ここが本気であることが伝わってくる。 「汇鑫源(カイシンゲン)」。中国語で「お金」と「繁栄」を意味する、縁起のよい名前。いつからこの町にあるのか、家族に尋ねてみると「数年前から」と母があっさり答えた。こんな辺鄙な田舎に、なぜか異国の香りがする暖簾がかかっている。 A定食(880円) 八宝菜 青椒肉絲 きくらげたまご B定食…