アコスタが工房を訪ねると、職人どもはもう既に今日の仕事を終えており、せっせと金貨を飲んでいた。 比喩ではない。 日給を安酒に変えてとか、そういうワンクッション置いた、取引を交えたものでなく。 率直に、物理的な意味合いで――金貨を砕いて粉にして、一定量をざらざらと、喉の奥へと流し込むのだ。 (Wikipediaより、砂金) 「やあ、精が出ますな」 と、この品のいいイエズス会士が言ったかどうか。 ここはスペイン、マドリード。 ジャコモ・デ・トレゾの作業場。 この日の業務は幾点かのブロンズ像へ、金メッキをすることだった。 その具体的なやり方は、日本に於いて奈良時代、東大寺の毘盧遮那仏をきんきらきんに…