映画より映画館のファンだ。生まれ育った桜井市(奈良県)の地元には映画館はなく『ドラゴンボール』『ドラえもん』『ルパン三世』の新作が公開されると桜井市民会館に足を運んだ。スクリーンの緞帳(どんちょう)には、大和の古地図が大きく描かれ、タイムスリップしたような魔法にかけてくれた。銀幕の暗闇に飛び込み、放たれる光が自分を生まれ直してくれた。小さな箱を出て日常に帰るときは違う人間になっている。 映画館は「どこでもドア」。外国にも宇宙にも行ける。映画館は「タイムマシン」。太古にも未来にも行ける。だから映画はテレビやPCではなく劇場で観たい。 2019年、埼玉にある『深谷シネマ』を知ったのは偶然だった。廃…