……というような『食刻』と実に対照的なのが、『食刻』のひと月後に発売された潮谷験『名探偵再び』(講談社)である。名探偵再び作者:潮谷験講談社Amazon 柾木と同じくメフィスト賞の出身である潮谷はデビュー作である『スイッチ 悪意の実験』以降、特殊なシチュエーションや、虚構設定の奇病、SF的な設定の中に登場人物を放り込み、その状況でこそ輝く論理を用いた謎解きを得意としていた。その方向性を選んだ結果として、名探偵や館、密室などといった本格ミステリのガジェットとは一定の距離をおいていたように思える。スイッチ 悪意の実験 (講談社文庫)作者:潮谷験講談社Amazon それが『伯爵と三つの棺』で架空の歴…