遠くの砂丘を眺めながら、ウィリアム・バンクスは昔のラムジーのことを思い出していた。ウェストモアランドのとある田舎道を、生まれつきとも見える孤独な雰囲気を漂わせながら、ラムジーは闊歩していたのだが、その歩みが突然止まった、とバンクスは古い記憶(たしかそんな事があったはずだ)の音をたぐり寄せてみた。足が止まったのは、一群のひよこをあばうように羽根を広げた雌鳥の姿がラムジーの目にはいったからで、彼はそれをステッキで指しながら「いいねーいいね」と言ったのだ。 なぜなら、実は、わしはなしえたかもしれぬ仕事をなし遂げてはいないからだ。 こういう人たちの無意味な世間話に加わりたくない、と彼は考えていたのだ。…