訓読 >>> 言(こと)問はぬ木にもありとも我が背子が手馴(たな)れの御琴(みこと)地(つち)に置かめやも 要旨 >>> 言葉を語らない木ではあっても、あなたが弾きなれた御琴を地に置くような粗末などいたしましょうか。 鑑賞 >>> 天平元年(729年)10月7日、大宰府にいる大伴旅人から、都の中衛府(ちゅうえいふ)大将・藤原房前(ふじわらのふささき)のもとへ、手紙とともに一面の琴が贈られてきました(巻5-810~811)。この歌は、琴を受け取った房前から旅人への返事に添えられた歌です。 旅人は、なぜ房前に琴を贈ったのでしょうか。そこで、この背景にあった不穏な政情にも触れなければなりません。この…