〜ひしひしと足音をさせて何かが寄って来る‥ 惟光が早く来てくれればよいとばかり源氏は思った。 彼は泊まり歩く家を幾軒も持った男であったから、 使いはあちらこちらと尋ねまわっているうちに 夜がぼつぼつ明けてきた。 【第5帖 夕顔】 灯はほのかに瞬《またた》いて、 中央の室との仕切りの所に立てた屏風の上とか、 室の中の隅々《すみずみ》とか、 暗いところの見えるここへ、 後ろからひしひしと足音をさせて 何かが寄って来る気がしてならない、 惟光が早く来てくれればよいとばかり源氏は思った。 彼は泊まり歩く家を幾軒も持った男であったから、 使いはあちらこちらと尋ねまわっているうちに 夜がぼつぼつ明けてきた…