ナツさんは美味しい店を探しあてるのがうまい。リスボンを離れてカスカイスに来たときもそうだった。 「観光地化した町ではさ、だいたい街の中心部から外れたところに旨い店があるんだ。そういうところに地元の人たちが通うんだから。」 と、熱っぽく語った。太陽の光が彼の肌をじりじりと焦がしていた。額から汗がしたたり落ちている。 「休もうよその辺の店で。」 ポルトガルの強烈な日光は私やコナツにはきつい。休みたいし、昼食も食べたい。声をかけてみたものの、ナツさんは止まらなかった。古い時代には王族が夏を過ごしたというカスカイスの町を、どんどこどんどこ歩いていく。 「旅の間に食べられる量なんて限られているんだ。りっ…