「君たちもよく知っている様に、台湾の製糖業界、製脳(樟脳)業界で、鈴木商店の存在は非常に大きいものがある。鈴木商店の番頭である金子直吉氏のずば抜けた商才により、鈴木商店の台湾での地位は確固たるものになった。 この金子直吉氏にとっても、後藤新平民政長官との出会いが台湾での飛躍につながったと言えるだろう。」と賀田金三郎は賀田組若手従業員達の前で今日も、台湾統治初期時代の話を始めた。若手従業員の中で最年少の森は「鈴木商店って、賀田組にとっては競争相手ですよね。」と言うと賀田は「一見、その様に見られるが、実は決して競争相手ではなく、逆に、台湾近代化のためには鈴木商店の協力が必要だったと言えるだろう。 …