『シャツの店』(1986)の主人公はあくまで時代遅れでコミカルで、たしかに『男たちの旅路』シリーズのように作者の意図を越えてヒーロー化してしまう懸念はなさそうではある。しかしそれでも鶴田浩二の目つきやたたずまいにはかっこよさを感じさせるものがあった。
【『男たちの旅路/車輪の一歩』(2)】 中村「山田さんとつき合いのあった若者たちが稽古場へも来てくれて、車椅子から降りたらどうするかとか。少女(斉藤とも子)のアパートが階段になってるので、どうするか。匍匐前進みたいにするのを、稽古場で自らやってくれましたね。随分知らない世界を知りながらつくったドラマ。
脚本家・山田太一の代表作としてよく挙がるのが『岸辺のアルバム』(1977)と『男たちの旅路』(1976〜1982)。
(以下は山田先生のトーク)
日本を代表する脚本家・山田太一先生はもう評価などされ尽くしているような気がしていたけれども、実は山田作品の研究書というのは少なく、ファンはやや淋しい思いをしていたものであった。だが長谷正人『敗者たちの想像力 脚本家 山田太一』(岩波書店)が刊行。山田作品を “敗者” というキーワードから読み解く作家論で、大変読みでのある著作であった。