12、赤い開花宣言 あと数日で年度がわりという慌ただしい日々が続いていた。社長へのプレゼン当日は街中が桜のピンク色に染まり、あとは開花宣言を待つだけだった。 小会議室でプレゼンの準備を整えた小関をはじめとする大木と元川は社長を招き入れた。社長はいつものようにクールビズ、と言うよりは薄手の黒い長袖のトップスに黒のスラックス。頭には自社製品の「りすとあきゃっぷ」を被っていた。コレは被るだけで髪が健康になるという優れもので、社長の大のお気に入りだった。 いつも通り淡々とした振る舞いの社長は、見る人がみれば無表情、またある人が見ればやや厳しいともとれる表情をしていた。約十人ちょっとが入れる小会議室の正…