家を出て、川沿いの桜並木を眺めながらのんびりと歩いてみた。 そこにいたるわずか10分ほどの間にも、途中にタバコ休憩をはさむ。それでいい。なにも急ぐことはない。それに、わたしにとって気負いなく出かけられるのは、いまはまだこの辺りくらいなものだ。雑踏にまぎれるのは気が進まない。 この二年間、わたしたちはいつも伏し目がちになり、たがいをけん制しあって、それを気取(けど)られぬためでもなかろうが、大きなマスクをつけて顔の半分を隠してすごしてきた。 疑心暗鬼、沈黙、楽観、噂話…。 わたしが恐れるのは、ウイルスばかりではない。ヒトこそが、わたしの恐れるものかもしれない。 満開の桜の下で すぐそばの児童公園…