上橋 菜穂子『鹿の王 水底の橋』(KADOKAWA, 2019) 2015年に本屋大賞を受賞した『鹿の王』の続編。だが、ヴァンとユナのその後の話ではない。ホッサルとミラルの話だ。また、オタワル医術と清心教医術の話ともいえる。清心教医術は現代の医療に喩えるとどんな医療だろうか。ちょっと当てはまるものがないように思える。強いて挙げれば、聖人が癒しを行なっていた時代の医療か。〈医術は人の生死を左右する。それゆえ、魂や心の在り様と深く関わらざるを得ない。〉ところが、オタワル医術を修めるミラルは清心教医術にも理解をしめす。〈清心教医術が神まで持ち出して、この世のすべてにこだわるのは、部分が組み合わさって…