「……あれ?」 普段は気にも留めない、部下のキーボードを打つカチャカチャという音。外の道路を走る車のクラクションやエンジン音。すべてが、音を失った。新来は目を見開き、周囲を見回した。すると、彼以外のすべての人や物が、まるで時間が止まったかのように動かない。 「どういうことだ……?」 ……という場面から、物語は静かに動き始めます。 私、ついにやってしまいました。人生で初めて、本——電子書籍を出版しました。 タイトルは【喫茶 トキカサネ】、その中に収録した一篇が『この一杯だけ、時間が止まる』という短編です。 忙しさに追われる日々のなか、一杯の珈琲を飲むたびに——なぜか「5分間だけ時間が止まる」..…