【ジャンジャン横丁】 「昭和初めには「両側から湧き起る三味線の喧騒、途方もない高い声を張り上げて、やけに喚き立てるサノサ節や、串本節や、道頓堀行進曲。さういふものが一緒になって、道行く人の心を沸き立たせる。ずっと、博覧会の売店を見るやうなバラック建てに、軒先には、みな同じやうな暖簾をくぐって中に入ると、大抵は鍵形りにとった長い食卓が設けられ、その上には、関東煮の鍋がぐらぐらと煮え立っている。・・・薦の被った酒樽が並び、その前の椅子に腰をかけた女が、がちゃがちゃと三味線を弾いている。関東煮の鍋の向こうには、首筋を真っ白に塗った女が、ずらりと並んで、客に酒をついで、唄ひ、呑み、呑み且つ唄ふ。」(北…