SIG-Indie2 ゲームデザインとメイキング レポ
7/11 に行われた研究会のメモ兼レポ。
実際のゲーム開発手法に関する話が多く、幅広いレベルの層が楽しめるイベントだった印象。
自作エディタ・自作ミドルウェアの話もけっこう出て、初心者にとっては良いイベントだったんじゃないかな。
経験が浅い人は、そもそも自作エディタの存在まで考えが及んでない人が多いだろうし。
はじめに
- 自由で活発に議論しましょう
- 各発表者の発言の責任は発言者にある
- 発言内容は発表者の意見であり、この会の公式見解でもなんでもない
- IGDA日本は学術団体でも、特に公的な権威がある団体でもない
- どう解釈するかは、参加者1人1人にゆだねる
- 今後のスケジュール
商業ゲームの保守化とインディーズゲームへの期待
小山(芝浦工業大学)氏の講演
- 近年の傾向
- リスクを避ける→チャレンジが難しくなる
- ヒット作の続編、版権ものが増加
- 合併の進展。リスク回避のための大規模化
- 流行らないジャンルはほとんど商業で出ない
- 制作が大規模 → 時間がかかる → 次世代が育たない
- 10年で何本経験できるか。下手したら3本?
- 一言でまとめると「閉塞感」
- 商業側も何も対策を採っていないわけではない
- ゲーム制作経験者は意外と多い
- 男性2〜30代だと2割強
- 現在継続的に制作しているのは2, 3%
- ゲーム制作の場合、プロが趣味的に作っているケースが多い
- SIG-Indieの趣旨
- なぜインディーズ?
- 少人数、小規模による素早い開発(前回の言葉を借りるとアジャイルな開発)
- 経験をたくさん積める
- 企画 → 仕様策定 → 開発 → 公開/発売 → 評価、のサイクルを短期間で回せる
- ペイラインが低いので、一般受けしなくてもOK
- 尖ったゲームが出せる。
- 大作でなくてもOK。一発芸的タイトルでもOK。かえって個性が光って見える
- 商業では出ない/出せないジャンルでも出る
- シューティングやアクション。もはや同人の定番ジャンル
- 演出で尖ったゲーム・ホラー
- さまざまな可能性が詰った「おもちゃ箱」
- 大規模な商業開発でも参考にできるところはある
- 商業から見て、インディーズは非常にフリーダムで、うらやましく見える
- ノウハウの蓄積、苦労や問題点もあると思うので、その話を聞きたい
画面作りから見るゲームメイキング
muracha(Easy Game Station) 氏の講演
- ゲーム制作初期
- サークルメンバーと打ち合わせ
- 制作物と共にいる時間は長い。長い間そのことばかり考えてもいいと思えるものを作る
- 具体的じゃなくて良い。作りたいものは?
- これらを元に、漠然としたイメージでとりあえずゲーム画面を作る
- 画面を作っている過程で考えもまとまってくるし、アイデアも出る
- 疑似ゲーム画面の作成
- 例としてシャンテリーゼのフォトショップで作った画像を表示
- キャラ絵・体力ゲージ・マップ・敵など・実際の画面っぽいものを
- 続いてルセッティア
- 店の雰囲気、カメラ位置、説明や覚え書き、ダンジョンパートの様子、キャラサイズ、可愛いドット絵など
- ありあわせの素材でも作ってしまう
- 初期画面案の重要性
- ゲームの設計図であり地図(仕様書ではない)
- 制作中に迷走している時に見て初心を思い出す
- 画面からゲームの面白さを感じるもの
- わかりやすいものを
- 使用ツール紹介
- PhotoShop
- 定番
- テクスチャ・ドット絵・メニュー用素材・その他2Dに関するもの全部
- 3DStudioMAX
- ポリゴンマップ・ポリゴンキャラ・その他3Dに関するもの全部
- AdobePremire 等
- デモムービー作成
- イベントやHPでの宣伝ムービー作成用
- 主にゲームのプレイ画面を見せる動画
- サークル自作のオリジナルツール
- 3Dポリゴンビュ−アー
- Xfileを読み込むことができる
- ゲーム画面に近い設定で確認
- アニメーションのモーションがきちんと出力されているか確認
- エフェクトツール
- パターンの組み合わせでエフェクトを作成
- パーティクルの設定に近い
- イベントツール
- プログラマは1人なので、チェックと修正がスムーズに行える環境作りのためにツールを作る
質問
- 初めてゲームを作る人が、どんなエディタを作ればいいのかも平行して学べるようなジャンルはあるか?
- 2Dのゲームから作ってみるといいと思う
- 外部のツールを使わず、自分でツールを作るための理由は?
- 自分達のゲームに特化したものが作れるから
- 1作ごとの制作期間と人数は?
- だいたい1年。人数は3人
- 自作ツールは、誰が提案して作る
- 企画・グラフィッカの私から提案することは多いが、プログラマから提案されることも多い
- まず絵を用意するとのことだが、内容的に夢が広がりすぎて、1人でプログラムを書くには無謀ということは起こらないのか?
- 今のところそういうことは起こっていない。プログラマに感謝
最後に「デモムービーは、講演者がどんな人か理解してもらうためにIDGA 側から頼んで流して頂いているものです」という注釈が入って終わり。
あかんゲームとええゲーム
isao(神奈川電子技術研究所) 氏の講演
- サークル紹介
- 2002年発足
- メンバー数4人
- 親しいサークル:橙汁、葦葉製作所、はちみつくまさん、など
- 作品紹介
- 年に2,3本くらい作ってる
- アクション90%, シューティング10%
- QUALIA2 のパッケージはアーティストに頼んで作ってもらった
- ゲーム製作の流れ
- 1,2週:企画人員決定
- 3週:ゲームの骨格完成
- 4〜8週:製作中盤(ゆっくり)
- 9,10週:製作終盤(ラッシュ)
- 没にならないゲーム製作の特徴とコツ
- インスパイア(パクリ)
- 実物をパクる
- 銃を撃つと反動があるということを知り、銃を撃った反動がちゃんとある2Dゲームを作った(がん★すた)
- 理論や学問をパクる
- QUQLIA シリーズで使用している理論
- まとめ
- 納期にゲームを合わせる
- アイデアは「思いつく」のではなく「自分の経験から思い出す」
- パクりすぎに注意!!
質問
- 納期にこだわらず作り込みたいというのもフリーの魅力だと思うのだが、その辺に疑問を感じたことはないか?
- そういう気持ちはあるのだが、それは次回作でやると思いながら作る
- 納期を設定することで、最後にメンバー間の歩調を合わせるということが大事
メンバーの個性を生かすゲーム作り
小川幸作(チームグリグリ) 氏の講演
- コープスパーティーブラッドカバーを作る前にあったチームグリグリの問題点
- 家庭内別居のような状態だった(別に仲が悪かったわけじゃない)
- 制限の中で生まれる発想力
- ミドルウェアを使うことにより、発想が制限されるのではと危惧されることがある
- 制限があるからこそ、その中でどうするかという自由な発想がある
- ミドルウェアを使うことにより、バグ発生率が減少したり、完成度が向上する
- 「ブラッドカバーを作る」ことは目標ではない
- 共同作業をやりやすくするため、ミドルウェアを作ることも目標の一つだった
- ここまで大きくなるとは思ってなかった。周りの人に助けられた
質問
- 商業のようにミドルウェアを作ることは本当に必要か?
- 作業もしやすくなるし、作りたいものが明確になるから作ることをお勧めする
- ミドルウェアの作り方は、汎用型と特化型のどちらが良いか?
- 汎用的に作るより特化させたものを作ったほうが、ステップ数も少なくなり作業時間も縮まる
- 別作品を作るときは、1から作り直すのではなく、現在のものを立て増す形で行う
ゲームルールをデザインするね
OMEGA 氏の講演。ペースが早くてメモりきれず一部抜けてます
- コンセプトを決める
- 早い段階でテストプレイを行い、作っては壊しを繰り返す
- この繰り返しに飽きてきた頃が完成
- テストプレイヤーとの相談で、コンセプトが伝わっているかどうかを確認
- がしがし改修
- 綺麗な設計はできない
- プレーンなテストプレイ
- 説明しないでコントローラーを手渡す
- とにかくテストを見ているだけ
ボクの考えるゲーム
- ゲームプレイ
- もてなし
- うまくできたら褒める
- 誘導
- 「やってほしいこと」をやってもらう誘導
- もてなし
- バリエーションとリズム
- 「ざるの会」ゲームデザイン入門
- 「面白い」は刺激だ
- 同じ事を何度もやっていると飽きるので、リズムよく刺激を配置する
- リズムといえば音楽だが、ゲームにもそれが言える
- 例えばシューティングなら、リズムよく敵が出てきて、最後にボスが出てくる
- 初心者のフォロー
- 「クリアできない人」を想定すること
- テストプレイで見る
- 対策
- ミスを挽回できるようにする
- ライフを増やしたり
- ミスすると有利になる
- ミスしない/できない
- 上級者へのさらなる目的提供
- おまけ、スコアなど。初心者が意識しないでいい部分で調整
ゲームルールをデザインするね
- インターフェイス、ルール、レベルの3つの要素
- ルールをデザインする
- 目的
- やってほしいことを決める
- 褒める!演出をつける!!
- システム
- 目的
- リズムをデザインする
- レベル(ステージ、マップ)
- 個別の周波数を割り当てる
- 例えば、ザコ敵編隊、中型機登場
- 3ルール
- 3秒、30秒...
- 3分ゲームも、この枠
- 実例「ふたご塔」
- ゲームコンセプト
- 自由にブロックを積み上げて塔を作るゲーム
- 王冠ブロックを両方に載せると、ゲームクリア
- 王冠を片方の更に複数載せることができてしまう
- ルール上の抜け
- しかしコンセプトには合っていたので採用
- 実例「えぐぜりにゃ〜NyaxX」
- コンセプト
- 投げて敵をなぎ払うゲーム
- 敵を投げても少ししか倒せない
- 連鎖するようにした
- 連鎖が無限に続いてしまう
- 連鎖中は敵の沸き出しをとめた
- すると、リズム(周期性)ができた
実例「対戦STG(仮)」
- コンセプト
- 対戦シューティング
- 格闘ゲームから逆算した要素「遅延」
- テストプレーヤーからも「わかりにくい」との声
- まとめ
- 「コンセプト」は重要
- 迷ったらコンセプトと相談しつつ臨機応変に
質問
- 上級者へのフォローは初心者よりプライオリティが低いという話をしていたが「リズム」は上級者と初心者で異なるので、上級者もあまりないがしろにできないのではないか。その辺のテクニックなどあれば
- 作り手は初心者の気持ちが一番分からないので。上級者向けの要素に関しては自分が思ったものをそのまま実装すればだいたいOK
- どのようにしてテストプレイヤーを確保すれば良いか?
- 自分も、大学を出てからテストプレイヤーにテストして貰える機会が減ってしまった。むしろ教えて欲しい
HSP プログラムコンテストの紹介と取り組みについて
おにたま(オニオンソフトウェア) 氏の講演
- コンテスト応募規定
- 非常にゆるいことが特徴
- 発表済みの作品であってもOK
- 1人が複数作品を応募可能
- 著作権は作者に帰属
- WEBから応募可能
- 自分達の尺度で測らず、どんな作品でも受け入れる
- HSPTV
- HSPTVブラウザというソフトで、投稿されたソフトを実行することができる
- 画像ファイルを一切使わないでゲームを作る部門
- 2009年度コンテスト
- ネット審査員
- HSPTV連携
- 物理エンジンOBAQを提供
- 将来の展望
- イベントの開催
- 作者間のコラボレーション
- 他の言語でも応募できるように
- 他のイベントと協力
ディスカッション
講演者5名に加え、たまって(StraβeNeun) 氏が参加。
少人数でも作れることの周知
- 今のゲームを遊んでいる人たちは、そもそもゲームが一人or少人数で作れるという事実を知らない/見たことがないのでは?
- 作ることが出来るということを知らないので、そもそも作りたいという状況に到達しないのでは?
- ゲームを作ろうと思ったきっかけは何か
- DXLib のような簡単な環境はあるのだが、そもそも存在自体を知っている人が少ない
- 自分から調べられる人しか知ることができない、周知できていない現状が問題
創作の始まり方
- 自分の作風が確率するまでの道のりはスムーズかどうか
- オリジナリティは自然に現れるものか、「オリジナルを作るぞ」と意識し始めるのか
- オリジナリティを出している気はないが、ウチのゲームにそれを感じるとしたら自然と出てしまっているのだろう。
- スクリプタがすごく尖ってるので、ミドルウェアなどを提供して自分が押さえ込んでいる
- 色々な元ネタがあり、完成物はそれらのキメラとなるので、オリジナリティはないと思う
- 元ネタがあって作っているが、どう料理してやろうかと試行錯誤する過程で結果としてオリジナルになってしまうのかもしれない。
- 参加者意見「過去にあったゲームの欠点を改善する、などの方法で作っているものはオリジナルかもしれない。○○のゲームを××のキャラで、などはオリジナルとは言えない」
- 参加者意見「オリジナルで作ったところで、似てるよね?インスパイアされたの? という話は必ず出る。あまり気にしないのが一番なのではないか」
- 参加者意見「大好きなキャラクターがいて、それを使った二次創作ゲームを作りたいような熱意がある場合、完成物にオリジナリティが生まれることもあるのではないか」
不満からの開発
- 「文句があるなら(無いなら)自分で作れ」という考えは、まだ原動力としてアリか?もうナンセンスな考えか?
- 今は、不満があって作るという人は少なくなっていて、文句を言うだけ言って気が済んで次の消費へ向かってしまっているのではないか
- ノベル系のある人が「白いモチベーションと黒いモチベーション」と言っていた。黒いモチベーションは、今言っている不満からの開発。白いモチベーションは、ユーザーを楽しませたいというもの
参加者からの質問の一部
- 「ゲーム作りを本業にしたいと思っている人は?」
- 4 名挙手
- 「インディゲーム市場が今より大きくなったら?」
- ゲーム作りは好きなので、それを仕事に出来れば嬉しい。現在障害となっているのは、収入的なリスク。
- 同様。障害は商業と比べた市場の小ささ。
- サラリーマンじゃない身としての意見だが、実は仕事より同人のほうが安定しているのでは?自分が諦めない限り企画がたち消えることは無いし。
- 自分はサラリーマンなので、同人ゲーム一本では収入が途絶える危険を常に感じるだろう