2007年最新&懐かし8耐マシンコレクション

Blueforce2007-08-01

興奮醒めやらぬ歴代マシンコレクションの先制攻撃の後は、一気にタイムスリップして今回の出走マシンを見に行こう。すでに気温もうなぎ上り、人人人でごった返すピットレーンで見た2007年形最新8耐マシンの数々。

今回の、というか毎度の大本命、今も昔もHRCのエースナンバーである#11、清成龍一/ジェームズ・トスランド組のCBR1000RR。メインスポンサーもなく、市販車と同じカラーに塗られたマシンには、良くも悪くもワークスマシンのおどろおどろしさはまったくない。
レギュレーションで決められたわけではないようなのだが、エントラント間の取り決め?で、2006年よりワークスはスーパーバイクより改造範囲の狭いJSB1000での出場しか認められなくなり、さらに今年はワークス・プライベートにかかわらず、本来の世界耐久選手権参戦組でない8耐のみのスポット参戦チームはJSB1000ということになったそうで、天下のHRCのマシンが文字通り市販車ベースのマシンという事態になった。
かつてのTT-F1も、この日記で何度も述べているようにグランプリと違い市販車ベースの車両というレギュレーションのうえに成り立っている規格ではあったのだが、↓で走っている91RVFの頃には、これが市販車と同じバイクだなどという詭弁は誰も信じていなかった。4輪でもホモロゲーションの問題はいつも不透明で、歯切れの悪いオーガナイズ側の説明と、限りなくグレーゾーンのマシンを並べて涼しい顔をしているワークスチームという図式がいにしえの時代から繰り返されてきたのだが、ここに来てある程度フェアな、それなりのイコールコンディションのレベルに落ち着いてきたようだ。少なくとも、かつての溶接跡も生々しいどこから見てもワンオフのフレームなどと違い、ブラックで塗装されたフレームには無茶な補強なども見られず(JSB1000レギュレーションでは補強は可能だというが)、このままショップに並べられていたら市販車と見分けがつかないほどだ。しかし、そこはやはりワークス、当代スーパーバイクのトップライダーのライディングにより2分8秒344と予選トップタイム(第2ライダー ジェームズ・トスランドの2回目)を叩き出した。いくらスペックでは劣る「はずの」JSB1000といっても、そこは格が違うのである。
サスは前後SHOWA、ブレーキはNISSIN、タイヤは昨今では少数派になってしまった2輪レーシングタイヤの正統、ミシュラン。でも、本当に今のバイクはシートカウルが薄いね、こんなん市販車じゃ車載工具も入らないし使えないじゃん、と思いきや、市販車もあまり変わらないもんね・・・

HRCのもう1台は、岡田忠之/唯一のGPライダーであるカルロス・チェカ組の#33。当初エントリーリストには第1ライダーとしてジョナサン・レイが登録されていたのだが、レースウィークに入り急遽タディ岡田に変更された。もともとレイが第1ライダーで、そのままコンバートしたため、以前の解説で述べたように、現役MotoGPライダーのチェカが第2ライダーに回る変則的な組み合わせになっている。

哀れ面の皮を剥ぎ取られた状態で整備中の#33号車Tカー。ゼッケン33は岡田が木曜と土曜の2回にわたって転倒があり、土曜の転倒ではマシンは大破してしまったそうで、スペアの整備なども忙しかったものと想像される。

キター! 私が8耐ピットウオークで見る時の皆勤賞、今回ももちろん展示されていたフランススズキの世界耐久チーム、SUZUKI ENDURANCE RACING TEAMのヴァンサン・フィリップ/マチュー・ラグリーヴ/ジュリアン・ダコスタ組、栄光のゼッケン1。来たよ来たよ〜、ちょっとちょっとダンロップ姉ちゃん、マシンだけ撮りたいんでどいてくんねえかな・・・とは言いませんでしたが(爆)・・・

以前からGSX-Rの世界耐久バージョンはちょっと宇宙船チックな近未来デザインが多かったのだが、これはもうすでに、どこからか「ざ〜ん〜こ〜くなてんしのて〜ぜ〜」(オットこれ以上書くと川内康範さんじゃなかったJASRACに怒られる!)とどこからか高橋洋子さんの歌声が聞こえてきそうなデザイン・・・だが、スズキワークスカラーとも相まって、今の8耐マシンでは一番好みかな。ベースモデルのGSX-R1000よりも、どことなくハヤブサのフォルムを色濃く受け継いでいるような気もする。以前からエンジンのチューンはヨシムラが行っており(フランスからエンジンだけ送られてくるので、それをチューン・整備して送り返すのだと以前浅川さんに伺ったことがある)アンダーカウルにはステッカーも貼られているが、マフラーはヨーロッパの耐久チームに多いデビルを装備する。

これも一見しただけではよくわからない構造だな〜。いわゆるクイックリリースのようには見えないが・・・ショックは前後ともSHOWA、ブレーキはNISSINの6ポッド、ホイールはドサ回り組らしく黒の塗装が所々剥げてしまっているがマルケジーニらしい。タイヤはダンロップだが、雨が降ったわけでもないのになぜカットスリックを履いているのだろう?

こちらもスズキ世界耐久組。Team Suzuki Sweden、トビアス・アンダーソン/ミカエル・ニルッソン/ポール・ヤング組の#012、GSX-R1000。真っ白なカラーリングでまるでエヴァ量産機のよう(しつこい?) 前のエントリに8耐は第3ライダーまでの登録が必要と書いたが、現在は日本人エントラントに限っては逆に2人までに限られているそうで(ややこしいが「補欠」ライダー名義ならば登録可能―ただし任意)、逆に外国人だと3人までの登録が可能なんだそうである。よくわからん。
車体の横から飛び出しているのが、転倒時ボディやフレームへのダメージを最低限に抑える樹脂製のプロテクター(突起)で、かつては意地でもピットに帰って整備を行ってレース復帰がデフォルトの作戦である世界耐久組特有の装備であったが、昨今は日本人チームでも装備している例が見られる。

こちらは予選19位、F.C.C TSR EUROSPORT BENELUX、岩田悟/須貝義行/ハインツ・プラタシス組の#4、CBR1000RR。昨年優勝の#778、ZIP-FMのチームメイトとなるTSR2台目のマシン。先述のように、世界耐久選手権を転戦するチームのみスーパーバイク仕様での参戦が認められるが、TSRは本年も8耐必勝を期すべくスーパーバイク仕様でのエントリを可能とするため、なんと第2戦のアルバセテ6時間に参戦、世界耐久チームとしてのエントリが可能となった。いかに改造範囲の狭いJSBとはいえ、許されるレギュレーションの中で高価なパーツやギリギリのチューンをしてくるワークス相手に、プライベーターが手にできる大きなアドバンテージがスーパーバイク仕様である。レギュレーションの隙間を衝いた若干反則技とはいえ、連覇に賭けるTSRの意気込みが窺える話である。
昨年優勝のベテラン、伊藤真一と手島雄介が乗るエース格の778号車に対し、この4号車はヨーロッパの耐久チーム、ベネラックスとの提携チームとなっている。、グランプリ(MotoGP)と違って大きなスポンサーの獲得も難しい世界耐久チームにとって、極東で行われる8耐へのエントリーは資金も人員も負担が大きく、昔から世界耐久の1戦を名乗りながらも実際にエントリーするのは一握りのトップワークスに限られていた。この、アメリカ空軍のアソシエート航空団方式のような日本のチームとの提携エントリー方式は画期的で、これからは増えてくるものと思われる。私ももっと世界耐久チームのエントラントを見たい!
マシンを見ると、もちろん778号車と同じスーパーバイク仕様ながらも、ブラック処理された肉抜き穴のない一枚物のスイングアームに対して、この4号車はアルミ地肌の穴開きと異なるのが目立つ。フロントタイヤを外したことでよくわかる、真夏の耐久レースに必須の巨大(もうそんな形容を通り越しているような・・・)なラジエータに注目。ライトは世界耐久組だけに2灯を装備。

ヤマハのエースチーム、YAMAHA RACING 21の大崎誠之/中須賀克行組のYZF-R1。注目して頂きたいのはラジエータ表面のデザインで、エッチング?で作ったヤマハのマークと「R1」の文字が。こんな所、タイヤつけちゃえば見えないのに・・・レース雑誌でも取り上げてくれるかわからない、見えない所にこだわるオシャレ、当日記でしかと頂きました〜!

典型的なピットの整備風景。前にも書いたように、ヤマハ系チームは8耐では何となく愛想がない印象がある。今回も外にマシンを出しての展示はなかったようだ。そりゃそうだ、まだ一生懸命整備作業やってんだもの。

この期に及んでまだバラバラで整備中なのはYAMAHA RACING 81、8耐初参戦のノリックこと阿部典史/ジェイミー・スタファー組のYZF-R1。マフラーは昨今各ワークスで引っぱりだこのサソリのマーク、アクラポビッチである。こうして見ると一度1本にまとめたエキパイをY字形に分岐させている取り回しがわかるが、今はどうしても2本出しにしたいわけね。集合管全盛の時代に青春を過ごした私にはどうにも馴染めないのだが・・・サスは21号車と異なり前後オーリンズとのこと。

今回出場中一番の異色マシンはこのゼッケン999、ラ ベレッツアスピード&システムライナーの戸田隆/堀義光組、ドゥカティ999R。かつてのTZ750やモトボンバーなどは除くとして、RG500ガンマ、BMWK75、ゼファー750などその時々を彩る変わり種マシンがエントリーすることがある8耐だが、最近はその手のエントラントは減少傾向だという。しかしこのマシン、戦闘力はともかく(^^;)そのセクスィ〜なスタイル(右側の切れてる被写体のことじゃないっすよ)、セクスィ〜なドルドル音はかなり魅力的であった。チームオーナーは九州のドカショップの社長だそうだが、なんと自ら第2ライダーも務めるそうである。すごいな〜、まだ若いのにやり手だね!というわけで、マフラーは自社製だそうです。

ワークスの参戦がなくなってしまったカワサキは有力プライベーターのBEETと、鶴田竜二率いるトリックスター辺りが中位に食い込む以外は・・・正直きつい戦列。川重さん、鉄道車両の方はN700やらE233やらで商売繁盛なのに、モータ−スポーツ部門はどうしちゃったんでしょうか。写真はゼッケン8番の世界耐久組、BOLLIGER TEAM SWITZERLAND、ダビッド・モリヨン/パトリック・マフ/ホーストサイガー組のZX-10R。ブレーキはベルリンガーというあまり聞き慣れないメーカーの物を使用しているほか、タイヤはピレリ、マフラーはアクラポビッチ。しかし、このカウル・・・今度はエヴァというより、日野日出志の漫画に出てくる化け物みたい・・・じ〜っつと目を凝らして見つめていると、何かが浮き出てきますよ(怖!) 誰ですか!シートの方ばかり見ているのは!

いよいよピットを追い出されるところで、先程のリバイバルマシンの置かれているコントロールタワー下のピットを覗いたところ、なんとこれからコース一周に向かう今大会の名誉顧問、岩城滉一兄イが!
ピットから追い出された後は、写真撮影の定番ポイント、ダンロップコーナーに移動。昔と違い、観客もまばらなので特にどこかに陣取るというわけでもなく、決勝前に行われる0955からのセレモニー・歴代8耐マシンデモランに向けてカメラを構えて待つ。0900からのウオームアップ走行の後、スタンドでのライダー紹介の後にやってきたのは・・・

7月29日の日記で紹介した辻本聡&ヨシムラGS1000Rの後に走ってきたのが、2005年に現役を引退したが8耐史上1位、のべ5回の優勝記録を持つ「新ミスター8耐宇川徹ライディングによる81ホンダRS1000R。

いよいよ今回の8耐詣でのきっかけとなったTECH21の87YZF750。さすが真面目な平さんはクリアーシールドで表情もくっきり見える。ずっと手を振っての2周で本気走行は見られなかったが、懐かしい淡い紫色のマシンに平本人のライディング、まさに感涙・・・と、帰ってきてPhotoを拡大してみていたら!ツナギが、平のツナギがナンカイなんですけど!? 平さん、あんたもかよ! ちゃんとtakaiのツナギ着てくれよ!これだけで画竜点睛思いっきり欠け!

1周目は平の後ろを走っていたワイン・ガードナーが、平どころかさらにその先を走っていた宇川を従えてやってきた。しかもガーちゃん、すでに手を振ることも忘れて何やら本選の一シーンみたいになっているんですけど・・・

もちろん、全盛期ほどではないけれど、あんたエキシビションでこの寝かせ方はないだろう(笑) この姿・・・91年の決勝は最終コーナー寄りのスタンドで見ていて、予選ではあまり熱心に写真を撮らなかったので、91RVFの勇姿を写真に収められたのはこれが初めてとなる。16年ぶりに、しかもガードナー本人が私の目の前を往く・・・そして、何より感動したのは、このショットを撮った後、ダンロップを上って行く後ろ姿が残していった懐かしいV4サウンドだ。
MotoGPのRC211Vは知らぬが、昔ホンダのレーサーを象徴していたV4エンジンはどこを探してもなく、ワークスマシンもCBR10000RRベースに代わって久しい。「無敵艦隊」RCBの時代を知らず、そして長らくホンダの直4に乗ってきた私としてそれはそれで嬉しいのだが、やはり観客としての私には、鈴鹿にはあの間の抜けたモーターのような「ヴィリョヴィリョヴィリョ〜ン」というV4サウンドが似合うと思っている。そんな感傷も知らず、RVFはあっという間に7.8%勾配を上ってコーナーの向こう側に消えていった。
そして、いよいよ1130、第30回記念大会のスタート時刻が近づいてきた・・・