橋本健二の読書&音盤日記

2016-05-05

ホームページのリニューアル

メインのホームページをリニューアルしました。こちらのブログも、そろそろ更新を再開します。

橋本健二のホームページ リニューアル版

2012-10-03

classingkenji+books2012-10-03

ザルツブルク音楽祭2012 モーツァルト・マチネー7

音楽祭の最後は、モーツァルテウムでのモーツァルト・マチネーの最後のプログラム。指揮はマルク・ミンコフスキーで、曲はリンツ交響曲とムソルグスキーの「モーツァルトとサリエリ」。

まず「リンツ」の演奏が素晴らしかった。生気溢れる演奏で、オーケストラの技術も指揮に十分応えている。最終楽章で、バイオリンの細かいパッセージが一糸乱れずに繰り返されるところなど、目を見張る見事さだった。CDでも聴いたことがなかったが、こんな素晴らしいモーツァルト指揮者がいたのかと驚かされた。

「モーツァルトとサリエリ」は、サリエリによる毒殺を中心に置いたプーシキンの原作により、ムソルグスキーがモーツァルトをまねたスタイルで書いた曲。途中にはモーツァルトのピアノ協奏曲風のような部分や、レクイエムからの引用もある。ドラマティックに変化をつけながら、モーツァルトのオペラ風に見事に演奏していた。二人の歌手は声量も豊かで、オペラらしく表情も豊かに歌い上げた。こちらも名演。最後のマチネーも、素晴らしいコンサートだった。(2012.9.1)

2012-09-30

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ザルツブルク音楽祭2012 コンセルトヘボウ管弦楽団

八月三一日は、コンセルトヘボウ管弦楽団。今回の音楽祭では、もっとも期待していたコンサートである。いちばん値段の高いカテゴリーの席にしたところ、前から四列目のほぼ中央というポジションだった。指揮はもちろん、マリス・ヤンソンス。

一曲目は、バルトークのバイオリン協奏曲第二番で、ソロはレオニダス・カヴァコス。シベリウスのCDで聴いていたが、すごいバイオリニストに成長したものである。完璧なテクニックで、美しい音色。歌うというよりは、明瞭な言語で語りかけるスタイルといっていいだろう。ここではオーケストラは、あくまで伴奏に徹していたようだ。

次は、マーラーの交響曲第一番。冒頭の弦の弱音から、早くも言いしれぬ緊張感が漂い、名演を期待させる。主題が始まると、期待が徐々に現実のものとなり、さらに演奏は期待を遥かに上回っていく。何よりも弦が素晴らしい。弦楽器の各パート十数人の楽団員が、一糸乱れずにまるでソロ奏者のように雄弁なポルタメント、ルバートを展開していく。弱音の時も強奏の時も、それは変わらない。しかも、テンポの変化と強弱の変化、これによる表情の変化のすべてが自然で、必然性を感じさせる。これはすごいことである。管楽器もすべてが万全。細かいミスはあったが問題にはならない。印象に残ったのは第三楽章冒頭のコントラバスのソロで、これまで聴いたことがないくらい完璧だった。そして最終楽章は、現代オーケストラ音楽の頂点を示す超名演。

終わったあとはブラボーの嵐で、聴衆は総立ち。このオーケストラが、ウィーン、ベルリンを凌駕する世界最高のオーケストラであることを証明したコンサートだった。(2012.8.31)

2012-09-26

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ザルツブルク音楽祭2012 ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

八月三〇日は、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサート。指揮はリッカルド・シャイー。実物は初めて見たが、いかにも陽気なイタリア男といった雰囲気である。曲は、マーラーの交響曲第六番。

一楽章は冒頭の弦楽合奏からして、大音量で緊張感があり、期待が高まる。このオーケストラは謹厳実直な総合力が持ち味だが、管楽器のソロは決してうまくない。ここまでベルリン、ウィーン、クリーブランドと聞いてくると、明らかに見劣りがする。だから管楽器のソロの場面になると、残念ながら演奏の魅力が少々失せてしまう。しかしシャイーは躍動感あふれる指揮ぶりで、この謹厳実直オーケストラを、完全燃焼とまでは行かないにしてもかなりの程度に燃え上がらせた。

時々あることだが、中間楽章を入れ替えて演奏していて、一楽章の次が二楽章のアンダンテ。ここでは弦楽の厚みと表情が素晴らしかった。スケルツォはちょっと散漫だったが、最終楽章はパーカッションの好演もあって、素晴らしい盛り上がり。終わったあとの聴衆のブラボーは、ベルリン・フィルやウィーン・フィル以上だった。

2012-09-23

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ザルツブルク音楽祭2012 クリーブランド管弦楽団2

八月二九日は、クリーブランド管弦楽団のコンサート二日目。最初は「わが祖国」の終わりの二曲。昨晩は聴衆を落胆させたメストだが、今日の演奏ではテンポ設定も妥当で、音楽の流れにも問題はなく、金管も適度に鳴っていて、まずまずの演奏だった。

二曲目はクリスティアン・ツィマーマンのソロでルトスワフスキのピアノ協奏曲が演奏されるはずだったが、ツィマーマンは病気で演奏できなくなたとのことで、かわりに別の曲が演奏された。作曲はマティアス・ピンシャーという未知の作曲家で、二人のトランペットと管弦楽の協奏曲という珍しい演奏形態。トランペットは複数の弱音器と特殊奏法を駆使し、フリージャズのような雰囲気。ソリストはクリーブランドの主席とセカンドだが、完璧なテクニックと素晴らしい音色 金管のレベルの高さを見せつけた。突然のプログラム変更にもかかわらず完璧な演奏だったのは、つい数日前にルツェルン音楽祭で初演したばかりだからだったようだ。

そして最後は、ショスタコーヴィチの交響曲第六番。ともかく木管、とくにピッコロが素晴らしい。フルートのように柔らかく安定した音色、完璧なテクニック。他の木管も、クラリネットを除けば非常にレベルが高い。弦はやや細身で、もう少し力強さがほしいところだが、機動性は文句ない。最終楽章の最後は、テンポを上げて疾走するが、一糸乱れぬアンサンブルはそのまま。贅沢をいえば、ショスタコーヴィチらしい諧謔味がもう少し欲しいところだが、ほぼ理想的な演奏で、スメタナでの不名誉を完全に挽回したといっていい。