其の626:スコセッシ執念の企画「沈黙ーサイレンスー」

 あっという間に1月も下旬・・・。日本映画の成績が好調だった、なんてニュースのさなか、病気療養中だった松方弘樹さんの訃報・・・(哀)!日本映画界のスターがまた一人亡くなってしまわれた。心よりご冥福をお祈り申し上げます・・・。

 
 2017年、最初に劇場に行くなら「これ!」と決めていたマーティン・スコセッシ監督最新作「沈黙ーサイレンスー」を観てきました(上映時間161分)。遠藤周作の原作小説を読んだ巨匠スコセッシが映画化を熱望してから、実に28年!!これは観ない訳いかないでしょ!!勿論、ネタバレしないように書きますわ♪

 
 江戸時代初期ー。日本でキリスト教の布教を行っていたフェレイラ神父(→「96時間」シリーズのリーアム・ニーソン)がキリシタン弾圧により棄教(=信仰を捨てる事)したという噂さがポルトガルに届いた。イエズス会の若き宣教師、ロドリゴ神父(→「アメイジングスパイダーマン」シリーズのアンドリュー・ガーフィールド)とガルペ神父(→カイロ・レンことアダム・ドライヴァー)は尊敬する師の噂さを信じられず、日本行きを決意。中国・マカオで紹介された日本人漁師にしてキリシタンのキチジロー(→窪塚洋介)の手引きで、長崎のトモギ村へ潜入する。そこは<隠れキリシタン>の村で2人は信者たちと交流、布教活動を行う事に。キチジローはかつて弾圧を受け「踏み絵」に応じたものの、家族はそれが出来ずに皆殺しにされた過去があった。罪の意識に苦しむキチジローは自分が住んでいた五島列島に2人を招くが・・・。


 原作は遠藤周作の代表作にして、超メジャー小説なんで読んでる人も大勢いると思いますし(昔、篠田正浩監督も映画化してる)、宗教についてはこのブログの主旨ではないので、ここには書きませんが・・・<神と人間>という重厚なテーマが静謐な映像で描かれる。スコセッシといえば、バリバリのカトリック信者(で、ありながらこれまでも「最後の誘惑」や「クンドゥン」という宗教に関する映画を監督)。そんなスコセッシが作るからこそ筆者も余計に観る価値があると思った次第。

 日本が舞台なので、大勢の日本人俳優が出演している今作。先の窪塚洋介の他、浅野忠信(←本来は渡辺謙が予定されていた)、イッセー尾形、映画監督でもある塚本晋也小松菜奈加瀬亮が出演しているのは筆者も知っていたけど・・・よ〜く観てると、他にもメジャーな人がいっぱい(驚)!筆者が分かった中でも片桐はいり菅田俊、SABU(←映画監督でもある)、プロレスラーの高山善廣に優香と結婚した青木崇高、更にはAKIRA(EXILE)の姿も!!ちょい役とはいえ中村嘉葎雄黒沢あすかは筆者も分かったけど・・・調べてみたらPANTAや伊佐山ひろ子洞口依子、渡辺哲らもいたそうで。これまでのハリウッド映画だと、日本人も中国人もごちゃ混ぜに選ばれる事が多かったけど、さすがスコセッシ、日本人としては嬉しいキャスティングになってた^^(但し、予算の関係で撮影は全て台湾)。

 未だ観てから半日も経っていないので、あまり思考がまとまっていない&ネタばれ防止につき詳細は書けないけれども・・・隠れキリシタンへの激しい拷問の数々(中でも塚本晋也たちが受けた磔と加瀬亮の●●シーンは凄かった)、弾圧を指揮するイッセー尾形の演技、苦悩するアンドリュー・ガーフィールド窪塚洋介の姿・・・。印象的なシーンや演技が沢山あって「あんな状況下に自分がもし巻き込まれたら?」他、あれこれ考えさせられた。21世紀の現在でも世界では宗教による対立が無くなっていないし・・・。

 長尺ながら飽きさせずに見せるスコセッシの演出力は流石の一言だが、この映画は「面白い」ではなく・・・「凄い!」としか言いよう(書きよう)がない。重厚かつ壮大なテーマの作品だと、それらしい音楽で盛り上げるのがセオリーだけど、今作は音楽自体ほとんどついていない(あってもごく低音)。そのあたりの創り方も印象に残った。

 史実を題材としたシリアスな映画ながら、「沈黙ーサイレンスー」は間違いなく近未来、スコセッシの代表作のひとつに数えられる事になるであろう一作(アカデミー獲った「ディパーテッド」より遥かに今作が上!)。劇場で観て良かった❤こうなると怖いのは・・・積年の想いを果たして気が抜けたスコセッシが今作を遺作としてコロッと逝っちゃう事!念願の作品を完成させた後に、どんな映画を創るのか・・・次も絶対に観たいっ!!


 さて、アメリカはトランプ大統領が就任!世界は・・・どう変わるのか!?我々は今後も映画を観続ける日常を続けられるのだろうか・・・?