富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月朔日(土)晴。先日不在中に小包だか届き郵便局で受取り。列に並んで見ていると窓口に日本人主婦。まだ梱包も終わっておらぬ小包、局員にテープで封いだ上に紐で縛るよう英語で言われる。局員はこの主婦が英語理解せぬと察し紐を縛るジェスチャーまでして、郵送料はHK$710と英語で言った上に計算機の710なる数字見せる気配り。主婦は応じて千ドル札出すが局員がお釣り渡そうとすると主婦すでにカウンタから離れ梱包に懸命でお釣りのHK$290をカウンタに置いておいてくれ、と言わんばかり。局員も次の客の対応にお釣りを放置できずに困惑。すると主婦、梱包の手を休めず幼稚園生の娘にお釣りを受け取るよう言い、娘お釣り受け取ったものの乳母車に乗った弟の面倒見もあり子どもだからお金床に落しても気がつかず。主婦の荷造りテープでの梱包は見るからに不器用。女の子が床に札を落す状況に列に並んだ客も「これって大丈夫なのだろうか?」と困惑の表情隠せず娘の落したお札広い乳母車の幌を直し、と見かねて手助け。主婦はといえば案の定、紐で縛らずカウンタに戻り再度、紐で縛るジェスチャーされ見かねた先頭近い客が紐を更に「ここ」と指さし主婦ようやく紐で縛り始めるがテーピング以上に技術要す紐での縛りは劣悪。「日本人は英語は下手だが紐を結ぶのが得意だったはずだが」と思ったのは余ばかりであるまひ。で須臾並んで受け取った郵便物は何かと思えば衆議院選挙の在外用投票用紙。先日郷里の選管に電話で問い合せたところ「いま担当者が不在のため戻ったら電話させます」と言いつつ「か、海外ですか」と言葉失ったくせに投票用紙はご丁寧にEMSで送るとは。開封してみると投票用紙はあるが命の次に大切な在外選挙登録証が同封されておらず。それがないと次回の投票できぬのだが。本当に不便な手続き。ちなみに次回からは香港も総領事館での直接投票可能だそうな。で、投票であるが、もはや旧社会党は壊滅状態、共産党が政策的には理想論としていちばん納得できるが結局どことも妥協もせぬ党派性が気になり、消去法でいけばいくつも疑問点多いが少なくとも自民党の覇権崩すには民主党、となるのだろうか。昨日受領したEuroの小切手銀行に持参し巴里より電話で聞いていた通りEuroの普通預金口座開設。窓口の行員、口座開設の用紙記入しつつ名前などは電脳のデータを見て記入しておきながら婚姻状況を余に尋ねる。申し訳ないが口座開設と婚姻状況がいったい何の関係あるのか?と質すと記入項目があるから、と。基本的に口座開設と関係なき事項である上に口座の新規開設ではなくすでに所有する総合口座内の外貨口座を開くだけのこと。なぜそういった個人情報が必要なのか理解できず、解答拒否。更に職業、職種まで尋ねられ「だからすべてアナタが見てるコンピュータに出ているでしょう、なぜそれを」と質すが「項目があるから」と。そこで余は「だいたい総合口座内の外貨口座開設など電話でも出来ること。電話での場合、面と向かっておらず香港IDの確認もできぬから本人確認で暗証番号の入力、住所、生年月日とか聞かれるが婚姻状況、職業など一切聞かれず、電話でそれなのに窓口ではそれを尋ねるとは矛盾するのでは?」と指摘すると何も答えられず。寧ろ「確かにね」といふ表情される。曾てはかなり自由であった銀行業務も日本に優るとも劣らぬ意味のない慎重さだの必要以上のプライバシー関与。ちなみにEuro61は額面の0.25%の手数料とHK$16.1の通信費の計Euro2.15引かれるだけでEuro58.85が手許に入るのだから香港の銀行手数料の安さ有難い限り。日本なら半額くらいになってしまうのだろうか。郵便局と銀行で小一時間。九龍某所で高座あり。夕方ジムで10kmトレッドミルで走る。帰宅して冷奴と韓国惣菜で菊正宗。昆布出汁のうどん。五穀米で栗ご飯も少し。NHKスペシャルで「教育を乗り越えろ」なる番組、画期的な指導で学力著しく伸す京都市御所南小学校取上げる。経済同友会代表幹事、文部省官僚、鳥取県知事ら「識者」口を揃えて校長のリーダーシップ、教員の協調を指摘。管理職のリーダーシップと協調性も確かにあろうが、誰の口からも教員の個性とか自主性でなくというのが出てこないのは偶然だろうか。この校長のリーダーシップと教員の協調まではまだ理解できるが、それが識者の口から出たところで「そして、それに加え」と(って先に取材されてるのだから余りに予定調和すぎるよ、NHKらしいが)紹介されたのが、教育委員会の専門主事の存在。管理職経験者の指導官が学校をまわり校長に助言指導、と。これぢゃ店長がリーダーシップ発揮し店員は協調性が大切、で本社派遣のスーパーバイザーが地域の店舗まわって指導のマクドナルド、吉野家と何ら変らず。で次に初回されたのが「教育立国フィンランドでは」と日本得意の「でわの守」、言葉はできず国際交流も疏かながら「外国では」と紹介だけは盛んなのが日本だが、フィンランドの学校風景。どう考えても長時間の職員会議もなさそうだし卒業式でフィンランド国旗国歌の扱いなど議論しているとも思えず。生徒は授業中に帽子かぶったまま、教員は長髪にヒッピー髭はやして殆どピンクフロイド。まず日本ならこれだけで教師としての資質だの授業中は帽子とれだので大騒ぎ。いったい何が違うのかは一目瞭然。が一番重要なことは学校の組織管理だとか思想的異端教師の扱いだとか日の丸を揚げるか君が代歌うかなどといった「どうでもいいこと」に時間浪費せず子どもの教育に徹すること、それ以外大切なことは他にないでは。
▼毎週土曜日『週刊読書人』届く。二面に有名なロングインタビューあり数十回、つまり1年でたった二人くらいのインタビューの連載で前回は蓮実重彦で今が大西巨人。編集などせず一言一句そのまま掲載するからかなりの量になるわけで、確かに大西巨人の言葉を書き残すことは歴史的にもかなり意義ある仕事。だが正直言って聞きて(今回は蒲田哲哉)のかなり饒舌な現代文学論が続き大西先生が一言「それはないと思うな」でまた聞き手の文学論が続き、では正直言って飽きる。飽きるといえば「執筆と編集のためのパソコン技法」なる連載(未来社編集人の西谷能英による)があり、これも43回になるのだが、延々と「たかだか」Winでの秀丸MacでのJedit4といった「サルでも使える」エディタの操作方法について文章で説明。しかも初期設定なんて「見てやってみればわかる」こと。なぜこんなのが必要なのか。習うより慣れろ。これをいちいち読んでエディタ使っている編集者がいたら最初からそんなの編集者として失格。じつは週刊読書人の編集者が熱心な読者なのかも。
▼中国初の宇宙飛行士来港で大騒ぎ。宇宙飛行士なるもの、運行上どれほどの責務なり専門技量があるのだろうか。例えば旅客機のパイロットは離陸のG点?だかを決めるなり異常気象時などの力量要求されるだろうが、果して宇宙飛行士は旅客機のパイロットほどの専門職なのかどうか。お猿の電車のお猿とは一緒にせぬが、搭っているだけ、に近くないのかどうか。この楊某なる宇宙飛行士、口を開けば「我ら中華民族が……」ばかり。民族の思いやり、暖かさ、努力すれば何でもできる、と。香港スタジアムでの歓迎会ではジャッキーチェンとカラオケ合唱まで。
▼ある邦字誌のダイン&バー紹介でかなり評価高く紹介された店、日本バーテンダー協会にも加わるバーテンダーおり、と。それほどの店で紹介されたお値段が「シーバスHK$68〜」と。どれだけ個性的にお酒揃えているか、が気になるのだけどシーバスじゃねぇ。しかもカウンターの写真にはChivas Regalのボトルと並んでシュウェップストニックウォーター。シーバスのウィスキートニック?がお勧めなのだろうか。私なら気を衒ひもせず「とにかくこのハーバーを眺めながらまずロックでドライマティーニをお飲みください。ウヰスキーブレンドならバランタインの17年からをお勧めします。日本のお店ですのでニッカのウヰスキーも蔵出しのモルトを揃えております」だろうか。
▼昨日綴った新聞の優遇販売について李嘉誠答えて曰く、この廉価販売について自社は一切利潤なし、あくまで居住者への優遇、、またこれは独占でなく販売に加わりたき新聞販売店あれば参入可、と。自社のもつ不動産物件でこういった優遇することぢたいが李氏の系列の住宅地の評価につながるわけで間接的ながらじゅうぶん利潤あり。また参入可といったところで一部の新聞からHK$0.3の販売益じゃ誰が参入するだろうか。李嘉誠富豪になりすぎてもはや現実感覚欠如甚だし。
西安の西北大学での日本人教師と留学生の下劣な寸劇に地元学生反発し日本人学生数名殴られ軽傷負い反日デモにまで進展。胸に赤いブラジャー、下腹部に紙コップを付けて踊り、ブラジャーから紙くずを出し観客席にまいた……という日本の馬鹿な学生なら当たり前か、しかもお下劣に加え中国人冒涜する内容という部分が今ひとつ具体的にどういったものなのかわからずだが、背中に「日本」とか「中国」と書かれていたとのこと。これが日本なら留学生が裸踊りして背中に「日本」と書かれていても日本を侮辱とは思わず、裸踊りなどやんやの喝采で笑って踊るのだろうが、そういった価値観こそ、場所により異なるわけで、背中に「中国」と書かれていると中国が侮蔑されていると思うわけ。しかも西北大学は事情通のS君の話では中国でも真面目さでは定評あり上海や北京に比べ内陸のかなり硬い学生が真摯に勉学に励む風潮あり、とてもこのお下劣は理解できず、と。いずれにせよノーテンキな日本人学生と些細といえば些細なことから胸に「中国」と書いて国威発揚の抗議デモにまで至ってしまう西安の大学生は余りに対照的。直接寸劇に係らずの日本人留学生も市内の日系ホテルに安全のため非難とか。天安門事件の時も大使館の指導で北京で王府井のホテルに待機して寧ろ逃げられぬ危険に陥った反省など活かせておらず。反日感情高揚のなか日本人で固まることで寧ろ関係ないものまでこの寸劇学生と同じ範疇に自ら入るようなもの。誰も庇護などしてくれぬことを覚悟して個人に徹すべき。
▼「あれ」31日の定例会見で日本の韓国併合は当時の韓国の「政治家たちが合議して決めた」「国際機関でだれも日本を誹謗する者はなかった」などと述べ発言の正当性を強調。さらに仏蘭、米国がそれぞれアジアの植民地で残虐な行為をしたとし「これに比べれば日本の植民地主義はまだ人道的、人間的だったと思う」と。ちなみにここで「あれ」が例として挙げたのが自分が福田赳夫に連れられ韓国訪問した折に韓国の閣僚が自らの教育体験を挙げて日本統治で義務教育が徹底され貧しかった自分の家でも親は子どもを学校に行かせぬと罰則あり自分が学校に行けて日本人教師の薦めで師範学校に入れて更にいい日本人教師に恵まれ満州の軍校、更に日本の士官学校にまで進み首席で卒業できた、といった話を持ち出し、そういったのが日本、と。だから日本の占領はよかった、と。どんな悲劇にも小さな美談などいくらでもあり。その美談を取り上げ総論を片付けるのは詭弁以外の何ものでもなし。このような事例持ち出し記者に対してキミたちも国の歴史を学びたまえ、だって(嗤)。だいたいしかも日本の首相が客としてソウル訪れれば韓国政府の官僚だって客の待しでそういった過去の美談持ち出して場を和ませるだろうに(だからといって侵略の過去を清算したわけではないのだが)そういった韓国人の配慮の心すらわからず、それで直木賞受賞の作家だというのだから本当に嗤ってしまふねぇ。具体的に毎日新聞名指しして「どっかの新聞が例によってマッチポンプでたきつけた。残念ながらあまり騒ぎにならなかったが」と述べているが、騒ぎになっている。この知事も愚劣だが記者会見聞けば相変わらず記者がこのコメントは都知事としてなのか個人としてなのか?などと「あれ」に但し「あれ」がそういった質問ぢたいが馬鹿馬鹿しいことで、その質問が作為的なのだろうけど、そういったことに国民は嗤ってるよ、と。これは確かにその通り。