生産財営業のプロセスと心技体−青草新吾の惺々著考 このページをアンテナに追加

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2007-08-25 104.電子材料ニッポンそしてエコプロダクツでパワーデバイスと部材

電子材料の産業規模に関し、日本メーカーの上位30社だけで売上高合計が7兆179億円ということですから、政府機械統計で8.3兆円の自動車部品工業に匹敵する規模であることが判ります。

電子材料のマクロ統計に関し、半導体産業新聞2007年7月4日付が業種横断集計した画期的な統計を発表してくれました。デジタル素材という業種横断コンセプトで編集された半導体産業新聞/泉谷渉氏の取材*1を17で前述しましたが、同じ脈絡の統計です。産業統計大分類製造業は、内訳で中分類の化学・非鉄・窯業・ガスなどの業種で構成されること、43[産業別付加価値額]で前述通りですが、今回の半導体産業新聞社の集計は、業種横断的であることが画期的です。

同紙発表では、2006年度の電子材料売上高のトップは化学業界信越化学で5,123億円、2位が88[薄型テレビ向け精密機能硝子]で前述した窯業旭硝子で4,766億円、3位が日立ハイテクノロジーズの3,587億円です。以下業種別のトップ企業は、化学のフィルム業界日東電工の3,086億円、化学のガス業界では太陽日酸の3,054億円、非鉄業界では三井金属の2,493億円・・・などです。

電子材料(デジタル素材)分野における日本企業強さは、既存の収益基盤を持つ伝統企業がニッチな隙間市場であるにもかかわらず業種横断的幅広い知見を統合しながら、しかも手弁当で参加する方々も含めて、辛抱強く長期に亘って未来のための努力を持続することにあります。

経営学者/高橋伸夫氏が著書*2で「欧米文化はそれほど未来重視しないから、未来とは現在価値に割り引いて考えるべきものだが、日本文化未来傾斜型でとても未来重視する」と比較文化の視点で述べておられましたが筆者の経験からも同感です。

また小笠原泰氏は2003年上梓の「日本的改革の探求」*3で、日米欧での生活体験に基づく知見として「日本欧米思考方法根本的違い」を発表されましたが、「日本の強みは内向きな役割の精緻化にある。」とし、またこのことから「全体最適を考えない弱点にもなる」として1997年の京都会議(地球温暖化防止会議)で手段である共同宣言採択に固執した日本政府の姿勢が「議長国ならば共同宣言を採択しない選択肢もある」と考える米国人からすれば明らかな本末転倒に映ったかもしれない・・・は、全く同感です。このような脈絡で考えると、短期利益志向米国や多くのアジア企業にとっては、未来傾斜型結晶ともいえる「継続的改善型電子材料」は、資金調達の目処が立ちにくく、参入しづらい分野といえるのかもしれません。

 省エネデバイスの効率の多くを担うパワー半導体の効率改善では、マテリアル系の素材とデバイス構造の両面作戦で進められています。

パワーモジュール向け絶縁基板の供給では、トクヤマDOWAが協業を進めています、両社が2007年2月に合弁で設立したTDパワーマテリアルに関し日刊産業新聞2007年3月16日付が「窒化アルミ基板は、ハイブリッド太陽光発電システムのパワーモジュール向けで需要が年率7-10%需要拡大が見込まれる。窒化アルミ粉末で世界最大手のトクヤマがTDマテリアルに窒化アルミ粉末を供給し、TDマテリアルが粉末をシート状にした後で焼成の白板を製造し、窒化基板で世界トップのDOWAがこの白板にアルミや銅を接合し基板を作る。2010年までに世界シェア50%を、白板換算で売上高30億円を目指す。」と報道していました。

パワー半導体効率改善では、三菱電機のパワーデバイス製作所(福岡市)で応用技術統轄の由字四義珍氏がElectronic Journal 2007年6月号で「インバータなどの応用装置における高効率化は、パワー半導体の低損失化の歴史でもある。IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)も1980年代に実用化されたプレーナ型IGBTから20年あまりが経過して、パワー損失約1/3にまで低減されてきた。IGBTチップの電流密度は第一世代では100A/cm2以下であったが、現在第五世代では200A/cm2以上に向上している。・・・・・IGBTチップ自体の電流密度、パワー損失改善には限界が見えている。これ以上は、改善を推し進める手法として複合化集積化をキーワードに製品展開を図っている。集積化においては、各用途対応のIPM(Intelligent Power Module)でパワー密度向上に貢献している。性能チューニングによる応用拡大も進めている。特にスイッチング周波数は重要なパラメーターで従来品では数KHzから十数KHzを対象としていた。溶接機医療機器誘導過熱などでは、高周波大容量の電源装置では、20-60KHzの動作周波数が要求される。」またシリコン基板から炭化シリコン(SiC)基板へのシフトについては「技術的ブレークスルーとして期待されるSiCデバイスは、市販品としての実用化の時期を予測するのは難しいものの、(技術的には)2010年頃には10W/cc以上のインバータ装置が実現するであろう。」と述べておられました。

 パワーデバイスの基板材料では炭化シリコン(SiC)のウエハーへの期待が高まっています。

SiC単結晶基板を用いた製品開発に関し、米クリー社が日本インターに基板を供給し、日本インターがSiCを用いたSBD(ショットキー・バリア・ダイオード)の製造販売を開始するそうです。電波新聞2007年7月26日付で「日本インターは1957年設立。日本で初めてパワーシリコン整流器の製造に成功した。サイリスタ、IGBT/MOSFET、ハイブリッドICなどを供給する。(今回発表の)SiCを用いたSBDは、シリコンをベースとしたダイオードに比べ、装置全体のコスト比較では2割削減が可能。チップ当りの価格は従来のシリコンベースよりも高いが、システムトータルで20%程度低価格を実現できる。1Aから5A、300/600/1200V品を段階的に供給していく予定。環境問題解決の一つである省エネ設計白モノ家電エアコンインバータ自動車電装、といった多様な展開が期待され、対象とする用途市場は大きい。」と報道されていました。

SiC単結晶基板供給では、新日鐵が新規参入で動いています。日刊産業新聞2007年6月8日付は「新日本製鉄は(昨日の)7日、100ミリ(4インチ)口径の炭化ケイ素(SiC)の単結晶ウエハーで世界最高レベルの低欠陥化に成功したと発表した。ターゲットとなる数百から1千ボルトパワーデバイス世界市場は現在、年間2千億円規模。SiCシリコン炭素1対1組成比で構成された化合物半導体材料摂氏2400度以上の坩堝の中でSiC粉末原料から昇華させた蒸気を種結晶上に再結晶させることで結晶成長を行う。超高温結晶成長なのでプロセス制御が難しく100ミリ口径の高品質SiC単結晶ウエハーの開発が待たれていた。世界のSiC単結晶ウエハーメーカーは、米クリーダウ・コーニング欧ノーステルジクリスタル新日鐵ブリジストンHOYAなど約10社。高品質4インチ新日鐵クリー2社が開発に成功した段階。」と報道していました。

SiC単結晶基板加工流通調製加工では、昭和電工が技術提供する有限責任事業組合のエシキャット・ジャパンに関し日刊産業新聞2006年11月9日付で「エシキャット・ジャパン(茨城県つくば市、産業技術総合研究所、電力中央研究所、昭和電工の3者がLLP制度と産総研の技術移転ベンチャー認定制度を活用して2005年9月に設立)が、炭化シリコンエピタキシャルウエハーを今月から販売開始したと発表。ウエハー径は2インチ3インチ。カーボン面にエピ層を堆積したウエハーもサンプル出荷する。」と報道していました。

*1:「電子材料王国ニッポンの逆襲」泉谷渉 ISBN:4492761608

*2:「できる社員はやり過ごす」高橋伸夫ISBN:4532191351

*3:「日本的改革の探求」小笠原泰著 ISBN:4532310393