作家。官能小説家。嵯峨島昭(さがしまあきら)のペンネームで推理小説も執筆した。 1934年(昭和9年)7月25日生まれ。北海道札幌市出身。本名は鵜野廣澄。東京大学文学部卒業。 1961年、博士課程在学中に『文學界』に発表した小説「鯨神」が第46回芥川賞を受賞。 その後、女性主人公の一人称による告白文体の官能小説で一時代を築いた。
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夜になってウトウトとしていましたら、雪が降っておりました。 野暮用から帰ってきたときには、路面は乾いていたのですが、それから数時間 で道路は真っ白になっていました。せっかく数日前にどろんこになった車を洗っ たのに、これでまたどろどろになるのか。 積雪は少ないのでありますが、夜のうちに除雪してしまわなくてはと、身支度 をして外にでることにです。積もったのは2センチくらいとのことで、30分ほど作 業をしましたら、終えることができました。 その時間には雪はやんでいて、空には月が見えました。月夜の散歩ならぬ、 月夜の除雪であることで。 これで明日は、早朝に除雪はしなくてもよろしでしょう。 夜のうちに除…
この歳になってようやく人に言えることがいくつかあります。人と会う機会が極端に少ない生活を送っているので面と向かって話すのではありませんが、こうやってネット上で記事にようやく書けるようになったことがあるのです。 とはいえ、やっぱり恥ずかしいので間接的にお話ししますね。 〇 始業式兼対面式の翌日、中嶋慶太は早めに学校に着いた。 校内は、しーんとしている。朝の練習のために登校したらしい、運動部かブラスバンドに属していると思われる生徒たちの姿がときどき目につくくらいだ。 勝手が分からない一年生に見られないように平静を装い、慶太は足早に校舎内を歩き回った。建物の各階を手際よくチェックしなければならない。…
宇能鴻一郎が好きすぎる件について語りたいのですが、宇能鴻一郎って最近再ブームになってますか?なんとなく読みたくなって検索してみたらkindleで購入できる本がめちゃくちゃ増えていました。本日購入したのは「姫君を喰う話 -宇能鴻一郎傑作短編集-」。芥川賞受賞の「鯨神」が掲載されているらしく、常々「鯨神」を読んでみたいと思っていたので、購入してしまいました。昨日の記事でお金がないって言ってたのに本を買ってしまう…自分で自分が止められない。 最初に掲載されているのが「姫君を喰う話」なのですが、これがまた文章がすごすぎて一気に2回読みました。私が目指すのはこの文章なの!と喉から手が出る勢いで読みました…
陰暦十月廿七日。気温摂氏6.5/18.5度。晴。晩に雨(4.5mm)。 宇能鴻一郎『甘美な牢獄』(烏林書林)私立図書館から借りて読む。 この記事を読んで久ヶ原T君と宇能鴻一郎の凄さをあらためて驚いた。官能小説の大家、宇能先生の本が図書館にあるのは、これがシリーズ「日本語の醍醐味」⑩だからで安吾、士郎、光晴や吉行、太宰に続き最終巻が宇能鴻一郎だから。「谷崎文学の正当な後継」(七北数人)。昭和37年に「鯨神」で芥川賞受賞した宇能先生の昭和41年から46年まで小説雑誌に発表された短編8本を収録。この本のタイトルにもなつた「甘美な監獄」は筒井康隆が昭和44年に編集したアンソロジー『異形の白昼』にも収録…
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『文藝春秋』恒例の芥川賞受賞作品掲載号。併せて創刊百年とのことで、特集読物が数篇並ぶなかに、宇能鴻一郎『芥川賞・ポルノ・死』がある。 作家志望のお若いかたに「講義」と称してお喋りしていた時代に、こんなふうに申したことがある。 ――諸君は宇能鴻一郎をお読みでしょうか。そう、スポーツ紙や夕刊紙の隅に、毎日連載されてるポルノです。「課長ったら、いけないんです」「あっ、こんなところで、そんなこと……」「だのに、あたしったらなんだか、ジュン、としちゃって……」 ――あんな文章なら、俺にだって書ける、なんぞと思ってはいませんか? 一週間代筆であれば、なるほど諸君にも書けるかもしれませんね。しかし彼はあのス…
人を喰わなかった話 ある理由から大岡昇平の「野火」(こちらも後日感想を書く予定で現在読書中)を読もうと思い、吉祥寺に行った。最初はBOOK OFFで買おうと思っていたのだが、そもそも100円コーナーにあったら買おうと思って本棚を見たがなかった。レギュラー棚(?)の方にはあったが、かなり古い本で活字が小さく読みづらいのが気になったので、ブックスルーエに行って新品を買うことにした。 新潮文庫のコーナーのあいうえお順に並んでいる著者の「お」の辺りを探して見ると、ちゃんと「野火」は売っていた。数年前に映画化もされているので増刷があったのかも知れない。棚から引っ張り出してレジにもって行こうとしてふと平積…
ここ何日か最低気温が20度を上回っていまして、このようなことは初めてで あります。涼しさが売り物の当地でありますが、今年は軽井沢よりも暑くなっ ていそうです。 とはいってもオリンピックの競技が行われている近くのまちよりは5度以上は 気温が低いようです。盛夏の東京でマラソン競技とは何を考えているのかという ことで、すずしい北海道のまちで開催することにしたというのに、なんという 皮肉でありますか、いつもの東京よりも暑いくらいでして、選手は大丈夫である のか。そうこういっていても、あと何日かで前半の大会はおしまいで、このあと もう一つの大会が待っていますが、どうなりますでしょうね。 宇能鴻一郎さんの…
今月の文庫本新刊で一番の話題となるであろうものは、新潮文庫「姫君を 喰う話」でありますね。著者は宇能鴻一郎さんであります。 坪内祐三さんの「文庫本を狙え!」が続いておりましたら、間違いなく取り 上げられましたでしょう。 宇能鴻一郎さんは、その昔は大ベストセラー作家でありましたが、若い頃に に芥川賞を受けられて、相当に期待されたはずですが、その後の歩みはそうし た期待を裏切るようなものであったようです。 当時でありますから、ほとんど転向作家(といっても戦前左翼だった人が 右翼に転じるというのではなく)のような形で、学究肌の純文学作家がエロ小 説作家に成り下がってしまったという受け止められていまし…
芥川賞を受賞したという「鯨神」を含む宇能鴻一郎の短編集を読んでみたところ、「エロいよ」という一般的イメージのさらに上を行くといいますか、頭のいい人がエロとは何かを考え抜いている感じがするといいますか、一部登場人物がエロい変態というよりはもはや怪人の域にまでイっている感じがいたしましてかんたんしました。 昭和30年代からこんな話を書いていたなんて、当時の読者はさぞ衝撃を受けたことでありましょう。 www.shinchosha.co.jp 煙と客が充満するモツ焼き屋で、隣席の男が語り出した話とは……戦慄の表題作。巨鯨と人間の命のやりとりを神話にまで高めた芥川賞受賞作「鯨神」、すらりとした小麦色の脚…
2015年12月号掲載 毎日新聞夕刊編集部編集委員(当時)/藤原章生 先日、作家の加賀乙彦さんにインタビューした。事前に長編作品「宣告」やエッセイ集、自伝を読み、感銘を受けたが、昭和4年(1929年)4月生まれという経歴に興味を抱いた。私の父と同じだからだ。これまで、昭和4年生まれの人たちに何人か会ってきた。その都度、幼少期から戦後にかけての社会の風景や当時の気持ちをたずねてきたのは、仕事もあるが、やはり2004年11月に死んだ父のことを理解したいという思いもあった。ご同輩として、どう思われますかと。 3時間のインタビューの最後の最後に昭和4年生まれについて加賀さんに「非常に複雑な世代ですよね…
生月大橋
放蕩の果て ――自叙伝的批評集 福田和也 著 「言葉はどこからもやって来ず、私は言葉を探し、追いかけている」食って飲んで酔っ払い、月に三百枚もの原稿を書いた批評家・福田和也氏は、現在62歳。病に蝕まれ、食べられなくなり、ついに言葉も遠ざかってしまったと打ち明けます。「遊びほうけていた高校生の時から今日にいたる、自分の来し方を思い返した。今、自分を支えているものは何かと考えた」(あとがき)と、これまで耽溺してきた文学、演劇、映画、美術、音楽、酒、料理、旅の記憶を回想しながら、友人や師、両親との交流を自叙伝的に描いたのが本書です。「日本史探訪」、『仁義なき戦い』、三島由紀夫『わが友ヒットラー』、つ…
宇能鴻一郎の著作を2冊読んだ 宇能鴻一郎といえばいわゆる「官能小説家」という認識をしていたし、官能小説に興味が無いオレにとってはこの先読むことの無い作家だろうと思っていた。正直に言えば、今からすれば大変失礼だけれども、「単なるエロ小説家」程度に見ていた。しかし以前、どこかのウェブサイトでたまたま彼のインタビューを読み、その思いもよらぬ人間的魅力に感嘆してしまったのだ。オレは思った、「このおっさん、面白過ぎる……」と。 どう面白いのか、それはエピソード満載のインタビューを読んでもらうことにして、なにしろオレの「宇能鴻一郎=官能小説家」という固定観念が全て覆されてしまったのだ。いや、確かに優れた官…
先日学生さんと話をしてて「烏有書林全点フェアをしてくれた奇特な書店員さんがいる」という話になった。で家に帰ってから当時(2019年8月)の資料を発掘して読んだところ、そのとき書いた文章がけっこうイケてるんじゃないか(自画自賛)、烏有書林の本づくりに対する考えというか態度についてとても分かりやすいものになってるんじゃないかと思えたので、転載してみます。まずはその奇特な書店員・花本武さん(フェア当時は吉祥寺のブックス・ルーエ、現在は西荻窪の今野書店勤務)のフェア告知文。 「烏有書林、上田宙が厳選! ~私が作った本、私を作った本~」出版社、烏有書林がつくる本に陶然とする文学愛好の士は多いはずです。文…