最初にお断りしますと、だんなは小笠原流に知悉している訳ではありません。「室町時代に足利義満の臣小笠原長秀が創始した、武家故実から出た礼法」とて道聴塗説、典籍から得た知識です。 海軍軍人で清水次郎長とも親交を結んでいた、子爵小笠原長生の話を文字に起こした「砲煙裡の食事」。子母沢寛の「味覚極楽」に載録されています。 小笠原家の何代目かの人間が京都へ使いに行き、宮中で出された御膳を食べるのですが、小笠原流の一家の者がどんな風にして飯を食うだろうと公卿さんたちは興味津津。唐紙障子のかげにかくれて覗き見をします。小笠原はこれを察して、汁も煮しめも漬物も飯の上へ打っ掛けて食べ始めます。その様を見て、公卿た…