道徳の授業(1)自問 ある中堅教諭の模索 - 西日本新聞(2017年4月4日)

https://www.nishinippon.co.jp/feature/education_now/article/319366
http://archive.is/2017.04.13-050032/https://www.nishinippon.co.jp/feature/education_now/article/319366

道徳教育が始まって60年の節目となる2018年度、これまで教科外の扱いだった道徳が、小学校で正式な教科となり、19年度からは中学校でも教科化される。実施に先立ち先月、小学校の授業で使う教科書の検定結果も公表された。先生たちは、どんなことを考え、子どもたちに道徳を教えているのか。福岡県春日市の市立日の出小学校で、道徳教育の実践・授業研究に取り組む石田稔裕(としひろ)教諭(34)の歩みをたどってみる。

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石田教諭は新任の2006年、福岡県糸島市の小学校で3年生を担任した。毎週1回ある道徳の授業。「まどガラスと魚」という教材での実践が、今も心に残っているという。
〈友達とキャッチボールをしていた千一郎。投げたボールが民家のガラスを割り、謝らなきゃと思いながら、つい逃げてしまう。「まどガラスをわったのはだれだ?」。窓の張り紙を見る度、心を痛める。やがて千一郎は母に打ち明け、謝罪に向かう。家のおじさんは「正直な子どもの来るのを楽しみに待っていた」と、ボールを返す〉
「(主人公の千一郎に)なりきってごらん」。石田教諭は、子どもたちにそんな問い掛けを繰り返し、先輩教諭から教わった授業手法「役割演技」(登場人物の役割を児童が演じ、心情を追体験する)も取り入れた。「子どもたちもノリノリで、ハッと気付く瞬間も生まれた」。指導の手応えをつかんだ授業だったという。
ところが教諭となって3年目。6年生の担任になり、同様の手法で道徳の授業を進めたが、うまくいかなかった。「そんなこと、教えてもらわんでも、分かっとるよ」。思春期に入った高学年児童の表情からは、そんなモヤモヤ感が読み取れ、新たな模索が始まった。

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30代に入り、転機となる教材に出合った。高学年向けの「車いすの少女」。親切や思いやりについて、より多様な視点から考える教材だ。
〈児童が登校中、病院前で出会う車いすの少女。母親がいつも寄り添っていた。ある日、少女が自分でこぐ練習をしていたとき、道路のくぼみに車輪がはまり、動けなくなった。友達と一緒に駆け寄り、持ち上げようとすると母親が言う。「手伝わないで」〉
一つの授業改革を試みた。一般的な道徳授業では、教材文を通読し、主人公の視点を中心に心情理解を深め、学習していく。石田教諭は、車いすの少女が動けなくなった状況説明までを教材として提示し、「あなただったらどうしますか?」と問い掛けた。
「教材文を途中で切るって、道徳の授業ではタブーなんですよ。結末が当たった、当たらないで、クイズ形式に陥ったりするから。でも、私たち教師は、道徳とはこうあるべきだとか、これはしてはいけません、といった発想に縛られすぎていないか。もっといろんな試みがあっていいんじゃないかと」

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道徳の教科化を提言した国の中央教育審議会文科相の諮問機関)も答申の中で、読み物教材の登場人物の心情理解のみに偏った授業の改善を求めた。学習指導要領解説書は読み物を使う場合、主題となる価値項目を、子どもが自分との関わりの中で考えるような指導を求めている。石田教諭の取り組みは、こうした教育改革の流れにも沿った試みだった。
「やがて使うことになる道徳の教科書にも、いい話がいっぱい載っているでしょう。でも、教師のレールに沿った指導や、形だけをなぞったりする授業では『いい話やったけど、何やったっちゃろう』になってしまう。子どもたちが腑(ふ)に落ち、心に残り、育まれていく。そんな授業を目指し、私たち教師も勉強している」(石田教諭)
教諭たちの自問が続いていた。

◆道徳の教科化 これまでは副教材「心のノート」「私たちの道徳」や各地の独自教材を使い、教科外の「領域」として道徳授業は実施されていたが、国の検定教科書を使って授業は進められ、通知表で記述評価される。年間授業数は、小中学校とも今と同じ35こま(毎週1回)。いじめ問題の深刻化が背景にあり、「公平、公正、社会正義」を小学1年から学ぶ。新学習指導要領では、旧来型の「教材を読む道徳」から、児童生徒の話し合いや討論を重視する「考える道徳」への転換を求めている。

<朝鮮学校>3県が補助金不交付 16年度、文科省通知で - 毎日新聞(2017年4月13日)

https://mainichi.jp/articles/20170413/k00/00m/040/144000c
http://archive.is/2017.04.13-045825/https://mainichi.jp/articles/20170413/k00/00m/040/144000c

朝鮮学校への補助金を巡り、文部科学省が昨年3月に「透明性」などを求める通知を出したのを受け、茨城、三重、和歌山の3県が昨年度の予算に計上した補助金を交付しなかったことが分かった。今年度は3県と群馬県が初めて予算計上を見送った。自治体に権限がある補助金に関する異例の通知について、文科省は「停止、減額を促す意図はない」と説明していたが、自治体の判断に影響を与えた。【水戸健一、金秀蓮、鈴木敦子】
日本の幼稚園と小中高に当たる朝鮮学校は、28都道府県に休校中も含め66校(昨年5月時点、文科省調べ)ある。学校教育法で「各種学校」と位置付けられ、自治体はインターナショナルスクールなどと同様に「外国人学校」の一つとして運営費や交流事業費の名目で補助金を出す制度を設けている。
毎日新聞が各都道府県に取材したところ、昨年度は18道府県が予算に補助金を計上し、13道府県が交付を決めた。交付を見送った5県のうち、茨城は橋本昌知事が2月、文科省の通知に加え、北朝鮮弾道ミサイルの発射など日本の安全を脅かす行為が続いていることを理由に約160万円を交付しないと表明した。三重、和歌山は「通知を重く受け止めた」などとして、300万円と235万円の交付をやめた。栃木、新潟は通知とは関係なく、交付の前提となる財務の健全性などを確認できないことが理由だった。
通知を受け、以前より慎重に交付を検討した県もある。岐阜は関係者へのヒアリングなど朝鮮学校の検査を強化し、3月末になって交付を決めた。滋賀も小学校にあたる初級学校の検査に朝鮮語の分かる担当者を同行させ、肖像画を掲げていないことなど、北朝鮮の現体制を礼賛する教育が行われていないことを確認して交付した。
今年度は14道府県が予算計上した。群馬は予算編成時に昨年度分の交付を巡る調査が続いていたため見送り、学校側に教科書に拉致問題を記載するなどの交付条件を課した。

◇専門家「公平性欠く」
補助金が打ち切られた朝鮮学校の関係者からは、再開を求める声が上がっている。
今年度の予算計上を見送った群馬県にある群馬朝鮮初中級学校の児童の母親(43)は「自分のルーツを知ってほしいと思って通わせている。北朝鮮の現体制を支持しているわけではない」と強調する。
別の母親(42)も「指導者を礼賛する歌を音楽の授業で扱うこともない。親子ともに日本で生まれ、私はこの国に貢献したいと思って働いているのに、朝鮮学校北朝鮮のスパイを養成しているかのように言われて悔しい」と話す。
茨城朝鮮初中高級学校の尹太吉(ユン・テギル)校長は「政治や外交の問題など、教育とは関係のない理由で補助金が打ち切られた。国の意向に沿って県が判断をしたことが残念」と語った。
名古屋大学の中嶋哲彦教授(教育行政学)は「学校教育における政治的中立の確保が通知の目的なら、補助金を受けているすべての学校を対象にすべきだ。朝鮮学校を攻撃する意図が透けて見え、行政として公平性を欠いている。国の一方的な通知に対して、補助金支給の権限がある地方自治体は必ずしも従う必要はない」と指摘している。

【ことば】朝鮮学校への補助金交付に関する通知
馳浩文部科学相(当時)名で昨年3月29日、朝鮮学校の設置を認可する28都道府県に出された。北朝鮮と密接な関係がある朝鮮総連が、朝鮮学校の教育内容や人事、財政に影響を及ぼしているとして▽補助金の公益性や教育振興上の効果の検討▽補助金の趣旨や目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保−−を求めた。
朝鮮学校への補助金を巡り、文部科学省が昨年3月に「透明性」などを求める通知を出したのを受け、茨城、三重、和歌山の3県が昨年度の予算に計上した補助金を交付しなかったことが分かった。今年度は3県と群馬県が初めて予算計上を見送った。自治体に権限がある補助金に関する異例の通知について、文科省は「停止、減額を促す意図はない」と説明していたが、自治体の判断に影響を与えた。【水戸健一、金秀蓮、鈴木敦子】

障害者差別解消法1年 「差別受けた」3割超 本紙アンケート - 東京新聞(2017年4月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017041302000123.html
http://megalodon.jp/2017-0413-0956-41/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017041302000123.html

障害者差別解消法の施行から四月で一年になるのを機に、本紙は、東京都内に居住したり都内で活動したりする障害者にアンケートを行った。身体、知的、精神に障害がある百二十三人が回答。この一年間に差別的な扱いを受けた人は三割超に上り、社会が良くなったと感じるのは五人に一人にとどまった。 (石井紀代美、森川清志)
障害者差別解消法は、障害のある人もない人も共に生きる社会の実現をうたっている。しかし、その趣旨が行き渡っておらず、障害者が暮らす上での「壁」が依然として多い実態が浮かび上がった。
この一年間で社会がどう変わったかを尋ねた設問では、「良くなった」が二十七人(21・9%)だったのに対し、「悪くなった」が六人(4・8%)、「変わらない」は八十六人(69・9%)だった。
この一年間で差別的な扱いを受けたかどうかについては、「ある」が四十三人(34・9%)、「ない」が七十九人(64・2%)だった。
差別的な扱いを受けた場所を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのが「民間施設」(飲食店や商店、映画館、ホテルなど)で、二十一人が回答した。以下は(2)「交通機関」(駅や電車、バス、タクシーなど)と「その他」が各十五人(4)「公共施設」(役所や体育館、文化施設など)が十人(5)「医療機関」が七人(6)「職場や学校」が五人−と続いた。
 同法は国や自治体に対し、負担が重すぎない範囲で障害者に対応する「合理的配慮」を義務付けているが、役所など公共施設であった差別的扱いの実例が複数寄せられた。厚生労働省が昨年十一月、障害福祉政策に関する審議会を都内で開催。しかし、階段を通らなければ入れない会場だったため、車いすの男性委員(61)が参加できなかった。同省の担当者は取材に「会場の下見を怠っていた。不適切だった」と話した。

▽調査方法 障害者団体の東京支部や都障害者スポーツ協会の登録団体、都自立生活センター協議会などを通じ、3〜4月に調査用紙を配布した。また都障害者総合スポーツセンター(北区)、都障害者福祉会館(港区)の来場者にも実施。回答した123人の障害区分は身体95人、知的15人、精神12人、無記入1人だった。

(筆洗)ペギー葉山さんが亡くなった - 東京新聞(2017年4月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017041302000131.html
http://megalodon.jp/2017-0413-0956-16/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017041302000131.html

ニューヨークのブロードウェーで一本のミュージカルを見たある歌手は感激し、ホテルに戻るやいなや劇中の一曲を日本語にして持ち帰ろうと考えた。
ミュージカルは映画にもなった「サウンド・オブ・ミュージック」。曲は「Do−Re−Mi」である。それを訳詞した、「ドレミの歌」や「学生時代」「南国土佐を後にして」などのヒット曲で知られる歌手ペギー葉山さんが亡くなった。八十三歳。
「ドレミの歌」の訳詞は簡単ではなかった。劇中では子どもたちに音階を教える場面で使われていたので、子どもの好きな食べ物を織り込もうとした。ドはドーナツのド。レはレモンのレ。ミはミカンでどうか。
ところがファで悩む。そんな食べ物は見つからない。ファの付く清涼飲料水の商品名も浮かんだが、結局、曲全体の明るく前向きな印象から、幸せのシが浮かび、みんなのミ、ファイトのファと自然に口に出た。
戦中や終戦直後はファイトのファの毎日だったか。戦争中は広島にいた祖父を原爆で亡くした。夫で俳優の故根上淳さんは学徒出陣し、戦友のほとんどを失うなど辛(つら)い経験をしている。
「戦争は絶対だめ。核兵器は絶対に反対」。二年前の本紙のインタビューでそう語っていたのが印象に残る。どんな時にも、みんな楽しく<しあわせの歌 さあ歌いましょう>。その伸びのある、強い歌声とのお別れである。

共謀罪審議入り 作家、漫画家ら反対訴え集会 - 毎日新聞(2017年4月13日)

https://mainichi.jp/articles/20170413/k00/00e/040/179000c
http://archive.is/2017.04.13-005454/https://mainichi.jp/articles/20170413/k00/00e/040/179000c

乱用を懸念「法律が子や孫の代にどう使われるか分からない」
組織犯罪を計画段階で処罰できるようにする「共謀罪」の要件を改めた「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案が衆院で審議入りした。政府は一般人は対象にならないと強調するが、各方面から乱用を懸念する声が上がっている。作家の浅田次郎さんや漫画家のちばてつやさんら表現・出版にかかわる著名人らが東京都内で集会を開き、「内心の自由を侵害する」と訴えた。
7日、約300人を集めた集会は、言論人らでつくる「日本ペンクラブ」が主催して、表現に関わる人たちに参加を呼びかけた。
ペンクラブ会長を務める浅田さんは「私たちはいずれ死ぬが、作られた法律は残る。残った法律が子や孫の代にどう使われるか分からない」と法案が成立した場合、将来にわたって乱用の懸念が続くことを訴えた。
作家の中島京子さんは、「心の中を取り締まるというが、人は本当に思っていることを書いたり、言ったりするかどうか分からない。人の心の中は複雑なものだ」と計画段階で処罰対象になる問題点を語った。さらに処罰対象の罪が277あることについて「(捜査当局が)誰かを取り締まろうと思った時に、どの罪になるのか探すような法律なのではないか。表現の自由でごはんを食べている者として、関係のない法律だとは思えない」と語った。
日本の刑事法は、犯罪を実行したことを処罰することを原則としてきた。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)は「(法案は)刑法の基本原則を動かそうとするもので、市民生活にも関わり、危険性が高い」と述べた。【青島顕】

民法改正案 契約ルール大幅見直し 今国会成立へ - 毎日新聞(2017年4月13日)

https://mainichi.jp/articles/20170413/ddm/001/010/145000c
http://archive.is/2017.04.12-131148/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170412-00000087-mai-pol

お金の貸し借りや物の売買といった契約に関するルールを大幅に見直す民法改正案について、衆院法務委員会は12日、賛成多数で可決した。衆院本会議を経て参議院に送付され、今国会で成立する見通し。契約ルールの抜本的な見直しは1896(明治29)年の民法制定以来初めて。
民法の契約ルールは多数の判例や専門家による法解釈が積み重なって実務に定着している。時代の変化に合わせたルールの改正とともに、一般市民にも分かりやすく明文化する狙いがある。
改正案は、飲食店のツケは1年、弁護士費用は2年、病院の治療費は3年−−など業種ごとに複雑に設けられている未払い金の返還請求期間(消滅時効)を原則5年に統一。契約時に利率の取り決めがない場合に適用される法定利率は年5%から年3%に引き下げて変動制にする。
また、中小企業が融資を受ける際に、経営と無関係な第三者の個人を保証人とする場合は公証人による意思確認を必要とする。保険契約や電気・ガス、インターネット通販など多くの契約で条件として示される規約「約款」の定義や要件を定め、部屋の借り手が大家に支払う「敷金」の定義や返還の時期・範囲を定めるなど、身近な暮らしのトラブルの防止につながる改正内容も盛り込まれている。
改正案は2015年3月に国会提出され、昨年の秋の臨時国会で審議入りし、継続審議となっていた。【鈴木一生】

森友データ復元、野党が追及 財務省「日々更新される」 - 朝日新聞(2017年4月13日)

http://www.asahi.com/articles/ASK4D54MTK4DUTFK007.html
http://megalodon.jp/2017-0413-0500-21/www.asahi.com/articles/ASK4D54MTK4DUTFK007.html

学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却問題で、交渉記録データの復元を「システム上できない」と断言していた財務省の佐川宣寿(のぶひさ)理財局長が12日の衆院財務金融委員会で、「復元はできないと聞いている」と述べた。野党はデータは消失していないとみて、復元に向けた要求を強めている。
この日の財務金融委では、共産党宮本岳志氏が「データは残っていて、復元は可能だ」と問うた。佐川局長は「データ削除後、一定期間はシステム運用を行う事業者の常駐の専門家が作業すれば復元できる」と答弁。一方で「省全体として大量のデータを日々追加・更新しており、サーバーの容量の余裕がないなかでデータが置き換わっている。復元することはできないと聞いている」と答えた。
財務省情報管理室によると、同省の文書管理システムでは、職員がデータをコンピューター端末で消してもシステムにデータは残り、2週間たつと新たなデータに上書きされる対象になる。実際に上書きされたかどうかは専門業者が調べないとわからない。上書きされても物理的なデータはシステム上に残り、復元できる可能性を否定できないという。佐川局長の答弁は交渉記録データが上書きされた可能性を強調し、事実上は復元できないと主張したものだ。