文藝春秋の新刊 2000・11 「干柿」 ©大高郁子
ひゃあー、柿だ、柿だ…。くすみかけてる青空に串柿が何段も何列も縦横に編隊で揺れたり躍ったり。いい具合に干されて水気はとんで植物らしさを失いゆらゆら。
柿はねえ、食べられないんですよ、子供のころから。大人になってわりといろんな物を平気で食べられるようにはなったけれど、椎茸と柿は子供のころからいっしょで食べられない。生でも干しても両者とも受け付けないです。
柿の種は好きですよ。現在日本全国でふつうに流通している亀田製菓の柿の種パック、まあ美味いんじゃないですか。ピーナッツとのバランスもいいし、個包装の按配も微妙に日本人好みじゃないですかね。子供のころから食べていた浪花屋の柿の種、ちょっと味が薄くてきついんですよね。昔ながらに飽いたのか、それとも亀田的なヌーボーに教化されたのか、多分後者だ。
この月は、宮嶋茂樹の「不肖・宮嶋の一見必撮!」、大沢在昌「心では重すぎる」、室井滋「チビのお見合い」と3冊も買ってる。アハハ、12月もそうだったっけ、まだ裕福だったのかもしれない。宮嶋茂樹、最近ご無沙汰ですがどんな活動しているんでしょうか。
http://www.fushou-miyajima.com/
自衛隊レディース2が1月下旬発売だそうで、まずはめでたい。書店で覗いてみようか。「躍る大取材線」の出版が99年、それまでほとんど名を知らぬひとだったが一読感嘆、おもしろ真面目な語り口に驚き厚い本だったけど一晩で読み終えファンになっちゃいました。でも、この月の「一見必殺!」のころにはもう、ちょっと鼻についちゃうんですよね、勧善懲悪みたいな文章が「フライデー」とか、そちら方面(Emmaかな)のキャンプション然としているようですこし嫌な気になった。
文春文庫 2008年1月チラシの紹介
文春文庫 2008年1月 奥田英朗 空中ブランコ ©山本雷太 | |
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奥田英朗 | 空中ブランコ |
北森鴻 | 瑠璃の契り 旗師・冬狐堂 |
太田忠司 | 月読 つくよみ |
北重人 | 夏の椿 |
夢枕獏 画・村上豊 | 陰陽師 瘤取り清明 |
井上ひさし | 青葉繁れる <新装版> |
桐野夏生 | 白蛇教異端審問 |
梅原猛 | 戦争と仏教 |
久世光彦 | 有栖川の朝 |
岸本葉子 | 四十でがんになってから |
竹内久美子 | 遺伝子が解く! アタマはスローなほうがいい!? |
石原慎太郎 瀬戸内寂聴 | 人生への恋文 往復随筆 |
宇江佐真理 | 君を乗せる船 髪結い伊三次捕物余話 |
猪瀬直樹 | こころの王国 菊池寛と文藝春秋の誕生 |
佐藤正昭 | ホンダ神話 1(ローマ数字)本田宗一郎と藤沢武夫 |
山崎朋子 | サンダカン八番娼館 <新装版> |
岡田光世 | ニューヨークの魔法は続く |
ロビン・ホワイト 鎌田三平=訳 | 永久凍土の400万カラット |
文春文庫PLUS | |
石原壮一郎 | 大人力検定DX |
日本の論点 2008 宮部みゆき「誰か」 アドリブ・ナイト |
文春文庫チラシ07年12月は《こちら》にあります
文藝春秋 佐藤優著 私のマルクス
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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“鬼才・佐藤優の根幹を形成した若き日の回想”とカバー裏に記してありました。鬼才ねえ、パゾリーニとか神代辰巳とか、巨匠とはいわれぬひねくれ映画監督をそう呼ぶのかと思っていたんだけれど、怪訝でした。わたしより5歳年下の鬼才。わたしが大学1年のとき「大地の牙」三菱重工爆破事件。あと内ゲバは盛んでしたっけ。
まあ、なんだかお勉強して学生運動でお酒を飲んで、そうかそういう青春もあるのねとちょっと鬼才より地味でふがいない、痛快なところのひとつもないような語ることなき大学時代を送ったわたし的には、このほんのあちらでもこちらでも憮然とため息つくしかないです。
「実は、君に忠告しておきたいことがあるんだ」
「何だ」
「君のカリスマ性は危険だと思う。だから神学部はもとより少なくとも近未来は大学教師にはならないほうがいいと思うんだ」
それに続けて、斎藤君はわたしの心臓を突き刺すような話をした。
「私のマルクス」より13「襲撃」最後の数行
土左衛門─武左衛門こと当時の同志社学友会中央常任委員長兼商学部自治会委員長の斎藤啓一郎と酒席での会話みたいな場所でのやりとりを鬼才は2つの章に切り分けきわだたせる手法で提示する。まあ何だ、この自伝の白眉ってわけね。青春期の鬼才が自己の“真の才能”を知るシーン(続き)をどうぞ。
斎藤君は「実はこのことについては君に言わないでおこうと思ったのだけれど」と前置きをして紘続けた。
「君のカリスマ性は危険だと思う。神学部の周囲を見てみろ。みんな君の崇拝者ばかりじゃないだろうか」
「そんなことはないよ」
「それじゃ、いつもアザーワールドにたむろしている連中で君と違う意見をもっているやつがいるか」
私は、神学部自治会常任委員の名前を何人かあげgた。
「じゃあ聞くけれど、その連中は最近、読書会に参加しているかな。それから君といっしょに飲み歩いているかな。そういった連中といっしょにメシを食ったり、コーヒーを飲むことがあるかな」
「…」
たしかに思い返してみると、私が名前を挙げた神学部の学生運動活動家とは、喧嘩や対立をしているわけではないが、疎遠になっている。私は「特に神学部の連中を囲い込んでいるつもりはない」と答えた。斎藤君は続ける。
「君が囲い込んでいるわけじゃないんだ。周囲から君に引き寄せられてくるんだ。僕自身がその一人だからよく分かる。
…後略。14「なぜわたしはいきているか」冒頭の1ページ。
というわけで、そういう方が政治家なんぞにはならずインテリジェンス方面で地道な公務員として活動していたことは、それなり慶賀すべきことだったんでしょうが、まあそれはともかく彼のカリスマ性が結果的には警察沙汰を招いたのかな。Wikiのリンクを貼っておきましょうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E8%97%A4%E5%84%AA_(%E5%A4%96%E4%BA%A4%E5%AE%98)
とまれ、早すぎる自叙伝は今後実人生において多くの面倒や齟齬を生ずることにならぬかと、自伝を書くネタもない初老は勝手に心痛めております。「国家の罠」を読んでないわたしだけれど敵には回せぬタマのようでした。「テロリストのパラソル」はまあ例として不適かもしれないが、学生運動の過去が現在を投影するミステリーは今後、そこそこ出没する気がするのだけれど、そんな時の参考書としてこの本けっこう利用できそう。