「個々の家族に対する」「訪問による」「本人も含めた家族全体への支援」

事例検討会でいただいたクッキー

 2月の厳しい寒さに比べれば大したことないですが、それでも寒いです・・・。

 朝9時だというのに、ハイエースにこんなにたくさんの雪が・・・。昨晩も雪が降ったそうです。
「3.11の夜はそれはそれは寒かった」
とみなさん言われます。

・・・寒かったでしょうね・・・。
そもそも電気がつかなかったのですし・・・。



 さて、支援第一目。
 まずは大谷さんと一緒になごみクラブに行く方たちのお迎えです。すでに大谷さんと同乗してこられた仮設住宅の方とともに、他に利用している方たちのお宅へ車で向かいます。
 1月28日の記事にも書いたYさん宅に伺ったところ、Yさんのご家族が庭に出てきて「何で来たんだ!! 帰れ〜!! Yを勝手に連れてきやがって」と怒鳴り散らしています。運転していた大谷さんが運転席の窓を開けて(寒い中でのこの行為は誠意の印だと思います!)平謝りしても「バ〜カ」「何謝ってるんだ」と悪口をたたきます。
 でも一方でその言葉と裏腹に、自分の手でドアミラーを内側に倒してしまったら直してくれます。そのご家族がワーワー言っている間にYさんが素早く車に乗り込んでも、Yさんを止めたり車の進行を妨害しようとはしません。

 その怒りぐあいとか言葉と行動のちぐはぐさが印象的でした。後で伺ったところ、精神科病院への入院歴もあるようです。少し前になごみの蟻塚先生にかかっていらしたのですが、何故か別の精神科病院にご自分で転院、結局お金がないらしく現在は医療中断中のようです。

 ぴあクリニックの訪問スタッフのみんなだったら、この方のところに喜んで行きそうだなあ・・・などと想像してしまいました。

 とともに、私は先週水曜日に京都に行って(我ながらよく新幹線に乗っていますね・・・)メリデン版家族支援プログラムフォーラムに参加してきました。このようなご家族をみると、「個々の家族に対する」「訪問による」「本人も含めた家族全体への支援」の必要性を改めて感じます。

中澤正夫先生と

 なごみクラブから夕方の事例検討会まで、代々木病院にお勤めの中澤正夫先生とご一緒させていただきました。中澤先生は1937年生まれ。ということは今年古稀を迎えられ、実際のところそのようなお年の風貌なのですが、実は昨年ヒマラヤトレッキングに行ってこられたというくらいの体力の持ち主なのだそうです。被災間もなくから福島に足繁く通われており、現在は月に1度月曜日・火曜日と泊まりでなごみさんの活動を支援されているのだそうです。診療をお手伝いすることもあるけれども、地域の事業所のみなさんの事例検討会に毎月スーパーバイザーとして出席されるというとても大きな働きもされています。
 ヒマラヤに比べればかなり近いけれども、それにしても毎月一泊されてまでどうして福島へ・・・というと、「これはいろんなところで書いているんだけれども」とおっしゃっていたからここに書いても良いかと思うのですが、

僕は、広島・長崎の原爆被害の人のことはよ〜く知っていたんですよ・・・。それなのに、反原発の行動をとらなかった。そのことに対して福島に罪ほろぼしをしなければいけないんですよ。
だから、なごみに押しかけているの。

 確かに、中澤先生は
ヒバクシャの心の傷を追って
というご著書を出されていらっしゃいます。でも、そこから「罪ほろぼし」として実際にまさにAssertiveに行動されそれを継続されていらっしゃるのですね・・・。

生活臨床とアスピレーション

 事例検討会の前になごみさんの勉強会で使うスライド作成のために、
ストレングスモデル[第3版]―リカバリー志向の精神保健福祉サービス

ビレッジから学ぶリカバリーへの道―精神の病から立ち直ることを支援する

リカバリー―希望をもたらすエンパワーメントモデル
の3冊並べて苦しんでいたら、「勉強してますねえ」と冷やかされました。そして、

ストレングスモデルとリカバリーとアスピレーション。
この3点セットで考えてくれるといいなあ〜。

とも。

 こういうところで、日頃の勉強不足がわかりますね(笑)。まさに「勉強してませんねえ」です・・・。

 アスピレーションという英単語すら知りませんでした。ましてや、それが精神保健福祉の領域でどんな意味があるか皆目検討がつきません。インスピレーションと似ているから、内面的なことなのかなあくらい(汗)。
 生活臨床という考え方があり、その生活臨床を考える上で中核となるもののようです・・・。ううう・・・ネットで調べると、けっこうというかかなり有名な考え方なのですね。「ぴあクリニックのPSWはこんなことも知らないのか」と思われちゃいますが、ぴあのみなさん(特に新居先生)ごめんなさい・・・。
 
 生活療法と生活臨床と生活支援。
 それぞれ、背景がある言葉なのですよね・・・。このあたりはおそらく
造反有理 精神医療現代史へという本とかに詳しいんじゃないかなあ。・・・持ってないけど・・・。

 それと、中澤先生に直接、「生活臨床について知りたいとしたらどの本がおススメですか?」と尋ねたところ、伊勢田先生の
生活臨床の基本
かなあとおっしゃっていました。せっかく中澤先生という方にお会いできたので、読めるといいなあ・・・・・・・。

震災と薬

 虹の家のみなさんから今回は宿題をいただきました。
 3.11のときに薬がなくて困ったという話はきいているけれども、具体的にどのくらい薬がなかったのか。それに対してどんなふうに自分たちは対処すれば良いのか
ということです。
 夕方の事例検討会の最後に、このことを南相馬の事業所のみなさんに伺いました。そうしたら、前回の事例検討会に出席されていた群さんらみなさんがいろいろとお話してくださいました。中澤先生もいろいろアドバイスしてくださいました。それらを総合してまとめると、こんな感じです。

当事者のみなさんへ

せめて2日分は肌身離さず薬を持っている

 当然ながら地震は突然起こります。地震が起こったときに自分がどこにいるか、予測できません。何を持っているときなのか、誰といるときなのか、何をしているときなのか。
 津波の避難も原発の避難も、「すぐに戻ってこられる」とみんな思って着のみ着のままで逃げたのだそうです。そうしたら、それから家には戻って来られない人もたくさんいた。家は流され、放射能で汚染され・・・。
 「そのとき」に薬がどのくらいで届くかは人それぞれです。すぐに薬が届いた避難所にいた人もいれば、やっと薬が支給されるところに行ったら「ここは違う町の人を対象にしています」と断られたり。
 1週間分の薬をいつも持っているというのは無理だし、それでは日常の生活が不便になってしまいますよね。ですから、せめて2日分は、お財布と一緒に持っている。そうするといざというときに、最低限の備えはできます。

やはり、お薬手帳

 お薬手帳の有効性は阪神淡路大震災のときから言われています。

 お薬手帳はできるだけ持っていて、いざというときに、お薬手帳にもとづいて薬を処方してもらえるのがベストですね。画像は、静岡県が誇る防災型お薬手帳です。この手帳にいろいろ必要な情報を書いておくと、いざというときにとても便利です。

 三重県のサイトですがこんなものも見つけました。
http://www.pref.mie.lg.jp/movie/detail.asp?con=3933

 お薬手帳とさきほど書いた2日分の薬とセットで小さな袋に入れておくと安心かもしれませんね。

携帯電話を使う

 でも、お薬手帳はちょっとだけサイズが大きい・・・という人は、携帯電話にときどき処方せんとかそれこそお薬手帳のコピーの写真を撮っておくという方法もあります。
 また、スマートフォンを持っている人は、お薬手帳のアプリを使うという方法もあります。
http://medical.yahoo.co.jp/apps/handbook/
ただ、携帯電話の場合には電源を確保できるかという心配もありますね。 

支援者の皆さんへ

処方箋は事業所などの単位で1冊にまとめる

 3.11の翌日、郡さんの携帯電話に郡さんの施設を利用している方のお母さんから電話があったそうです。家が津波で流されてしまって家に戻ろうと思っても戻れない。まさかのことでお薬に関する情報が何もない。確かその施設に処方箋のコピーを提出したので、そのコピーを見て子どもの処方内容を教えてほしいと。

 うちの施設もあと500メートルというところまで津波が来たんですよ。それに、余震もすごくたくさんあってグラグラしてて・・。私も怖くてたまりませんでした。でも、そうだよな〜と思って、本当におそろしかったけれども、施設に行ってそのコピーを探しました。

 その体験から、お一人お一人の情報として集約していた処方箋のコピーは、加えて、いざというときに持ち出せるようにとすぐ出せるところに施設でまとめて1冊にしたそうです。

 例えばぴあクリニックだとしたら、外来患者さんの処方箋をどうするのか。非常に大量ですし、電子カルテだけに課題は大きいですね。

 ただ、少なくともACT利用の方に関しては、毎回更新は無理だけれども、半年に一度のリカバリープランとストレングスアセスメントの更新時には必ずその方のファイルに処方箋情報を入れて、ACTチーム全員の防災情報ファイルを作成してそこの個々の情報も一緒に更新するという方式をとるのが良いのかもしれません。

固定電話は役に立たないこともある

 防災用情報の集約の上での経験談です。
 確実だしみだりに個人情報を収集すべきではないという観点から、お宅の固定電話だけを把握している場合もあります。しかし、いざというときにはそのお宅に人はいません。そもそもお宅に戻れないかもしれません。
 また、多くはキーパーソンとなる方の電話番号だけを控えていることが多いでしょう。しかし、その方の安否自体もどうなるかわかりません。
 そのため、利用している方はもちろんですがその方のご家族のできれば全員の携帯電話やメールアドレスを把握していると、「いざ」というときには役立ちます。

 このような感覚は、「東海地震が起こる起こる」と言われ続けて40年という静岡県で生活している私たちにとってはあまり違和感がありません。しかし、ご本人とご家族全員の携帯電話番号などの把握というのは、「いざ」というときのためのものであり、ご本人とご家族のプライバシーの保護という点からは問題があるのは事実です。
 このあたりは、各機関やチームで十分検討する必要がありますね。

買い物支援

 なごみクラブからの送りのついでに、一人暮らしをされている方の買い物支援に同行させていただきました。坂が多いところにお住まいの方です。浜松以上にバスの便が悪く、一人暮らしにとってはつらい状況です。なごみクラブのついでに・・・ということで、気楽でもありますね。
 こういう支援は(田舎であれば?)どこのチームも同じだなあと思いました。
 立ち寄ったスーパーで見つけたあまりに大きなベーコン!!
 せっかくなので、みなさんにもお見せしますね。