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倒錯委員長の活動日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2017-03-18

【映画評】アシュラ


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韓国の架空の都市アンナムを舞台に、悪徳市長とその巨悪を暴こうとする検察当局の戦いを描くノワール映画です。

主要キャストが全員地上げ屋(あと一人スタイルのいい香川真司がまぎれています)にしか見えません。画面は終始男、背広、男で埋められ、ヒリヒリするような世界観です。金と暴力、そして義兄弟などの定番は当然盛り込まれています。

主人公は市長の犬として裏で動く悪徳警官ですが、ある不始末によって検察側に尻尾をつかまれ、今度は市長の悪事の証拠を探す片棒を担がされることになる。市長は裏切れない。かといって従わないと検察に全部バラされてしまう。主人公はその葛藤の中で揺れ動くことになる。

ただ、そこには例えば「インファナルアフェア」みたいな潜入捜査のドキドキみたいな醍醐味はあんまりない。それよりも「人間力」ならぬ「悪人力」を味わう趣があります。「悪い」と書きましたけど、この映画に出てくる悪人はみんな艶っぽくてそれがいい。とくに目を見張るのが「新しき世界」での怪演が記憶に新しいファン・ジョンミンの市長。彼なんか、もうスクリーンに現れて数秒で心がもっていかれそうになりますよね。それぐらい怪しいフェロモンが出ている。

主人公は主人公で、悪に手を染めるのにはそれなりの理由があるんですよね。そのあたりのベッタベタな人情芝居も泣かせどころです。実は彼、ストーリーの最初こそ市長の犬として美味しい思いをしていたはずなんですが、映画が始まってからは市長と検察のどちらからもボコボコにされて一番損です。彼がとうとうブチギれ、全部ぶちまけてバトロワ展開にしてしまうクライマックスは圧巻。「アジョシ」みたいなスマートで鮮やかなナイフの戦闘とはまたちがう、バタバタした野蛮な戦闘は、観ていてゾクッとします。

なんやかんやあって最後に字幕である人の言葉として「しょうがねえよな」って出るんです。それがおそらく今までで一番かっこいい、泣ける「しょうがねえよな」だったと思います。ぜひともそこまで行ってみてください。


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2017-03-15

【映画評】お嬢さん

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映画公式サイトより


日本統治下の韓国を舞台に、日本生まれ韓国育ちの美しい令嬢と、詐欺師の男女が騙し合いを繰り広げる、エロい、怖い、痛いの三拍子が揃ったサスペンスです。

韓国映画、特に強烈なそれであるほど、毎回「なんなのそれ…」と心にさざ波が起きます。洋画にはない、ましてや邦画にはありえない「ギョっ」とする、ともすれば不快にもなりかねない成分。そのくせ、観終わったあとには癖になってる、というタチの悪い劇薬です。この映画も「なんなのそれ…」と困惑しっぱなしなんですけど、それは決して批判ではなく、「なんでそんなこと思いつくの…?」という一種の畏怖がないまぜになった感情です。

ぼくの中でこれまで最も「なんなのそれ…」となった韓国映画は「オールド・ボーイ」なのです。何を隠そう「オールド・ボーイ」を撮ったパク・チャヌクこそ、この映画「お嬢さん」の監督だったわけですね。そりゃそうなるわけだ!

「お嬢さん」と侍女の淫靡さしかない関係もたまりません。面長清楚系美女(ポスター下部)を「お嬢さん」、イモ系女子(ポスター左下)を侍女にすえたキャスティングも心得ている。このふたりがそこらのアダルティーな動画も顔負けな組んず解れつの絡みを見せるものですから、もしかしたら劇場鑑賞中に体に異変をきたし始めてしまう男女もいるかもしれない。

本作では、「日本併統治下の韓国」という時代背景も、「なんなのそれ…」を感じる上で重要なスパイスになっている。舞台美術、言語、そしてもちろん肉体という様々な位相で日本と韓国が混じり合い、独特に雰囲気を作り出しているのです。ぼくは、聴覚的に日本語を、視覚的に韓国語を、とここまで忙しなくインプットのチャンネルを変えた映画を他に知りません。

ミステリー的にも、人間関係が二転三転し、「偽りの愛」が実は「真実の愛」だったと解き明かすストーリーは飽きません。変態映画にありがちな、官能性は突き詰めているけどストーリーはクソ、ということもないわけです。ここ最近、喉ごしのよい洋邦画ばかり観ていたぼくには、かなり濃い目の一発でした。おすすめです。


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2017-03-08

「クソガキ」を叩く前に「クソガキ」を生み出した制度設計は大丈夫なの?

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昨夜行われた侍ジャパンWBC初戦となるキューバ戦で、ヤクルト山田哲人の大飛球を外野席から手を伸ばして捕ってしまった少年が、ネット上で叩かれています。

この場面はリプレイ判定となり、結果、山田の打席は二塁打という判定に落ち着きました。インプレーの打球(スタンドに入る前の打球)を観客が触ってしまうと、野球規約で審判の判断に委ねられてしまうのです。

もしも少年が触っていなかったら日本にもう1点が入り、さらにキューバを突き放していたかもしれない。

そういう状況から、一時は少年を指しての「クソガキ」がTwitterのトレンドにランキング入りするぐらい、激しく叩かれていたようです。さらに本人、あるいは友人が不用意にTwitter上に捕球直後とみられる画像を掲載したものだから、彼の(デマ、誤情報を含め)個人情報までも拡散してしまいました。

この少年、「ホームランキャッチ」でたぶん生涯イジられ続けることでしょう。かわいそうに。


そんな彼が「悪くない」とはいいません。プレーの結果を替えてしまったのだから、れっきとした「水差し野郎」であることに変わりない。

ただ、こういうときにぼくは「自分だったらどうしていたか」を考えてしまいます。自分が彼と同様にグラブを持ってレフトスタンドの最前列で応援している。そしてそんな自分のもとに、あの山田の入るか入らないかの打球が飛んできたら……。

とっさの判断です。ぼくは絶対に手を伸ばさない、とは言い切れないんですよね。もしかしたら少年と同じことをやっていたかもしれない。ぼくが「クソガキ」になっていたかもしれないんです。

一応、試合が行われた東京ドームシティの掲載している「野球観戦時のお願い」を確認しましたが、今回の少年の行いを明確に禁止している項目はないんです。唯一、関わってきそうなのは

フェンス、手摺りからグラウンドへボールや色紙等をぶら下げて、選手へサインを求める行為

東京ドームシティ|野球情報|野球観戦時のお願い

ですが、これも今回の行為について触れている、とは言いづらい。

「誰であろうとしでかしていたかもしれない失敗」の責任を、制度の方を点検せずに本人にぜんぶ押し付けるのって、なんだかフェアネスに欠いています。飲酒運転だって誰にでも起き得る過失です。それを防ごうとして、いままで厳罰化してきたわけじゃないですか。それと一緒です。

たとえば、インプレー中はフェンスに触るのを禁止するとか、いくらでもあると思うのですよね。そのあたりも含め、「クソガキ」を叩く前に、「クソガキ」が生まれてもおかしくない環境設計でないか、今一度点検するときなのではないでしょうか。


まあね。試合は勝ちましたし、そして何よりこの方の一言でもう全て吹っ飛んでしまいそうです。

「これも野球。仕方ない。もうちょっと筋トレをして打球を飛ばしたい」

侍山田、幻弾も前向き「筋トレして打球飛ばしたい」 - WBC : 日刊スポーツ

あんたカッコよすぎるよ‼


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