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倒錯委員長の活動日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2016-07-17

【映画評】トリプル9 裏切りのコード

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すいません。当ブログが最大の罪とする「いい映画の記事を公開終了間際までほったらかす」をまたやってしまいました(そこまでのことか?)。本作「トリプル9」、実は6月に予告を見てから気になって、いざ見てみてもやはり疑いようないいい映画だったのです。

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舞台は全米有数の犯罪都市、ジョージア州アトランタ。メキシカンマフィア、ロシアンマフィア、腐敗した警察が、金と欲望の周りでおっかない三つ巴を形成している。そんな中でも「あいつらだけはマジやべえ」と恐れられているのがロシアンマフィアなのはお約束ですが。

主役を演じるのは(といっても群像劇的な風味もありますが)、ケイシー・アフレック。「ペントハウス」のへっぽこホテルマンとは打って変わって、武骨な警官を演じています。そのほかにも、マーベル映画で羽ばたきっぱなしのアンソニー・マッキー、「それでも夜は明ける」のキウェテル・イジョフォー、「パシリム」に出ていたクリフトン・コリンズJr.、そして、われらがウディ・ハレルソン兄貴に、ケイト・ウインスレットも思わぬ配役で登場と、豪華です。

ロシアンマフィアに弱みを握られ、ある男たちが「コード999」を利用した強盗を画策する。「コード999」――それは警官が撃たされた際に発信され、ひとたび発信されれば、全署員が現場にかけつけるという秘密のコードです。これを悪用する、つまり、仲間の警官を撃つというのです。

監督のジョン・ヒルコート(彼自身、出演していてもおかしくない強面ですが)は、「欲望のバージニア」でハードな作品での手腕は証明済みです。本作にも、怖くて、不器用で、日陰でしか生きていけない悲しい男たちの物語です。ただ、「欲望のバージニア」以上に、本作は脚本が緻密なように思える。案の定、「コード999」の計画は二転三転し、事態は思わぬ方向に行きます。

そして、ラストカット。渋い!渋すぎます!女が惚れる。男も惚れる。悲しい男たちの映画です。

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2016-07-13

【映画評】ブレイク・ビーターズ

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久々に、熱いやつらをみて熱くさせられた気になりました。本作「ブレイク・ビーターズ」は、フィクションではありますが、1985年ごろの東ドイツにおいて突如として若者の間で流行ったブレイクダンスブームを描いた映画です。

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目的なく生きていた主人公、フランク・ザツケは、たまたま鑑賞したアメリカ映画「ブレイク・ストリート」(これは本当にある映画)で、ちょっと古い言い回しを使うと、完全にブレイク・ダンスにヤラれてしまいます。フランクは完全にブレイクダンスに恋してしまい、仲間とチームを作り活動を始めます。

表現は、政治とか言語とか、思想なんか関係なく、伝わる人にはどこでだって伝わるのですね。まさに恋といっしょですね。本作はそのことを描いています。自由といえない社会主義政権下で、ちょっと場違いな服装でストリートダンスを始めるフランクたちの姿は、どこか映画「サイタマノラッパー」シリーズの主人公たちに似たところがあります。ダサいけど、ストリートに懸ける思いはカッコイイ。

けれど、そんなフランクたちを当局が黙って見ているわけがありません。当然彼らは捕まってしまいます。けれど、当局は何を思ったか、彼らにダンスをやめさせるのでなく、管理下に置くという方策で、ここに摩訶不思議な「社会主義統制下のブレイクダンスチーム」が出来上がってしまうのです。

ストリートという草の根から始まったブレークダンスと、トップダウン式の社会主義という、まあこれほど水と油というものもありません。そこが面白い。

途中、サークラ問題が意外とドロドロしてきてちょっと話が脇には逸れた気がしますが、それも最後には本流に戻ります。話のまとめ方がちょっと予定調和感もありますが、それにしてもラストのダンスシーンは超かっこいい。人に笑われようが、反対されようが、好きなことを貫く熱いヤツらが見たい人にはぜひぜひ、お勧めです。

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2016-07-11

【映画評】疑惑のチャンピオン

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スポーツ選手の薬物汚染は、他の犯罪や違反行為とちがう独特の後味の悪さがあります。なぜならそれらは「競技の後」に発覚するからです。ぼくら観衆は一度は彼らのプレー、記録を「すげぇ!」と興奮させらるのですが、そこから時をおいて、すべては薬物というズルをしてのものだということがわかる。「あの興奮はなんだったんだ」と思いたくなるものです。薬の種類は少し違いますが、清原和博に対して同じような感情を抱くファンは多いことでしょう。

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本作の主人公、ランス・アームストロングも、無数のファンをそうした落胆を陥れたひとりでしょう。アームストロングは、自転車レースの世界最高峰、ツール・ド・フランスにおいて前人未到の7連覇を成し遂げました。ところが、ご存知の方もいるように、彼もまたそれらの栄光の季節の間中、ずっと薬物を使っていたことがわかり、記録を剥奪されています。本作はアームストロングの嘘に満ちた栄光と、その崩壊を描いています。

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脚本の元となっているのが作中にも登場するジャーナリスト、デヴィッド・ウォルシュの著書「Seven Deadly Sins: My Pursuit of Lance Armstrong」であり、彼の視点から描いているということもあるのでしょうが、わりとアームストロングに対して容赦ない作りになっています。映画は冒頭からまもなく、アームストロングが怪しげな医師(ちなみにこの医師の操るイタリアなまりの英語が癖になる)に接触しています。

アームストロングが、薬物使用の疑惑を持たれながらも、なぜ7連覇を成し得たのか。その一つには、自転車レースの運営組織であるUCI、そして、マスメディアとの過剰なまでの癒着があったのでしょう。そしてそれを成し得た背景には、アームストロング特有のギミックがあったようです。それはずばり、ガンを克服したというギミックです。

ガンを克服し、おまけにツール・ド・フランスに勝ち、そして同じようながん患者を応援する。そんなヒーローに矛を向けたならば、彼の応援者を敵に回すことになります。それがどれだけ困難なことか。本作のとくに後半部分は、ウォルシュの視点をとおし、ジャーナリストとしての矜持を描いているところもあります。

本作は、アームストロングはガンを克服したことによって国民的ヒーローになり得たことを描くと同時に、彼の栄光の崩壊の序曲となる証言もまた、ガンで入院したときのある取り留めもない発言だったという皮肉も浮き彫りにします。

アームストロングを演じているのは、ベン・フォスターという俳優です。失礼ながらこの映画まで知らなかったのですが、彼の雰囲気がまたいい味を出している。実際のアームストロングとそんなに似てはいないのですが、どこか平気で嘘をつきそうなリアリティがある。実際にスクリーンで、フォスター演じるアームストロンが真っ赤なウソをつくのですが、真相を知る鑑賞者は、彼の平然とする様にイラつけます。

誰に反対されようが真実をつまびらかにすることがいかに尊いことなのか。そして、ウソは必ずバレること。アームストロングの騒動はそれを教えてくれているのかもしれません。

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