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倒錯委員長の活動日誌 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2017-02-20

【書評】女性経営者が明かす ラブホテルのぶっちゃけ話 / 阪井すみお・まお


「普通のOL」だった女性が知人の誘いでラブホテルの経営に乗り出し、日々味わっている苦労を綴ったルポタージュです。実際に経営しているのが「まお」さんで、彼女の話を文章にまとめたのが友だちでライターの「阪井」さんのようです。

当初、著者はラブホ経営が楽して儲かると思っていたとか。ぼく個人的には、「いやいや、経営の素人がいきなりラブホテルを切り盛りするなんて無茶だろ」と思っちゃいますが、案の定、苦労が耐えないようです。それは経営上の苦労ともうひとつ、ぶっ飛んだ客、ぶっ飛んだ従業員に対しての気苦労もあるようです。この前読んだソープランドで働いていた人の本でも思いましたけど、「性の現場」っていい意味でも悪い意味でもどこか変わった人が集まってくるようです。

惜しいと思ったのは、著者の「毒舌」です。これはたぶん「まお」さんでなく「阪井」さんによるものなのですが、その「毒舌」の筆致が実に心地よくないんですよね……。有吉の毒舌が人を楽しませる一方、ちまたの自称「毒舌注意」女子の毒舌がただただ不快なのと同じ理屈です。読者へのサービス精神であえて口悪くしている印象もありますが、必ずしもそれが「サービス」になっていない。この本だけを読んでいると、著者は仕事中いつもイライライライラしているように思えちゃいますが、ラブホテルなんて普段は我慢してる何かを発散するところなんですから。多少は大目に見てあげなよ、と思ってしまいました。


そんな感じで前半はモヤモヤが募りますが、面白かったのは後半で展開される経営の話です。

どんなジャンルであろうと、こうやったら失敗したけどこう直したら上手くいった、という商売の試行錯誤の話ってやっぱり面白い。

自分とバイトのおっさんのふたりだけでホテルを2週間まわした(!!!)オープン当初の話やら、リネン、アメニティの仕入れの話。それから、各部屋の管理を自動化することによって従業員をフロント業務から解放し、配膳と掃除だけにすればいいようにした、なんて話もなるほどと思わされる。

ちなみに、収益率がいいのは軽食なんかより断然「大人のおもちゃ」なんですって!奥さん!!


読み終えてみると、ラブホの経営事情の話自体は面白いんです。それだけに、他のところで足を引っ張っている感は否めない。巻末の同性愛についての物言いなんて、今どきこれでよく出版したなって思うほど酷いです。面白いだけに「惜しい本」なのでした。


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2017-02-15

【映画評】シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

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本作「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」は、人間社会にまぎれてひっそりと暮らすヴァンパイア男たちのモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)。同じシェアハウスでも「テラスハウス」ほど華やかでない、間抜けで気のいい未婚おっさんヴァンパイアたちの悲喜こもごもを描きます。


観ていると、そもそもこれをモキュメンタリーの手法をとる必要性はあるのかと感じますが、こういうことかもしれません。映画は終始、出演する吸血鬼さんたちがカメラ=カメラマン=人間に向かって語りかえる体で進みます。それはどういうことかというと、自分とは異なる者=異種に対して自己を開示することになるんですね。

カメラに向かっての未婚おっさんヴァンパイアさんたちの語りは、ヴァンパイアたる自分を当然のものとしない。自分と相いれない、自分のことを理解できない人たちに対してのそれになるのです。この映画をモキュメンタリーにした監督の狙いは、たぶんそこなんじゃないかって、思うんです。


そう、だからこのコメディ映画には「他者との共生」という意外とまじめな裏テーマが隠されているんです。

そんな彼らだってヴァンパイアですから。カメラマン以外の人をさらって生き血を吸って殺してしまうことだってあります。映画が描くのは、ときには人を殺めてしまうけれど、それでも人間となんとか共生しようとするヴァンパイアたちの努力です(ところで、カメラマンらだけノーダメージなのは謎です。もしかしたら後で殺されるのかもしれませんし、撮らせてくれたら大量の生き血を吸わせてやるとかなんとか契約しているのかもしれません)。


面白いのは、他の種と暮らすのは大変だというベクトルとは反対に同種であろうと一緒に住むのは大変だ、ということも映画は描がいている。途中、とある新人ヴァンパイアシェアハウスに新しく”入居”する。でもそいつはヴァンパイアにまだ詳しくない上、底なしのバカであったため、既存の入居者に迷惑をかけ始めます。そして結果、彼は取り返しの付かない事故を起こしてしまう。

同種だからといって無条件に居心地がいいわけではない。ときにはヴァンパイアよりヴァンパイアに馴染める人間だっている。結局は種と種ではなく、個人と個人がどう付き合っていくかってことなんです。結局、自分以外のあらゆる存在との共生には幾分かの困難が付きまとうという話です。そこで大切なのはきっと、寛容であることや妥協できることなのでしょうね…。


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2017-02-13

上野千鶴子「平等に貧しくなろう」について


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中日新聞が掲載した、東大名誉教授・上野千鶴子さんのインタビューがいろいろ話題です。

以前、上野さんが貧する現代の若者たちに対して「賃金が上がらないといっても、外食せずに家で鍋をつついて、100円レンタルのDVDを見て、ユニクロを着ていれば、十分に生きて行けるし、幸せでしょう?」とアツい助言をしていることについて書いたことがありますが、今度は、日本人は気質的に移民を受け入れるのはムリだから、労働人口が減っていく中で「平等に貧しくなろう」と主張されています。

これまで、「平等に◯◯しよう」の◯◯にはいろいろな言葉が入ってきましたが、ここに「貧乏」を代入しているのを見るのは極めて稀です。ここまでひん曲がってしまったのには、(元々だろというツッコミは置いておいて)なにか原因があるのではないか、と思わざるを得ない。


短いインタビューなので真意はわかりませんが、「平等に」というのはどういうことでしょう。

大前提として、もうすでに日本は「不平等に貧しい」。そして「犠牲者」は出ています。「同じ幅だけ貧しくなろう」というなら、もう底をついてる人にはどうすんだという話です。一方「同じ所得まで貧しくなろう」というなら上野さん、あとはあなた方高齢者が降りてくるだけですよ!待ってますね!!

世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)

世代間格差: 人口減少社会を問いなおす (ちくま新書)

だいたいこういう「清貧の思想」を説くのは焼きが回った団塊の世代ですが、彼らは日本が最も豊かな時代を謳歌したはずです。豊かになることに、何か負い目でもあるのでしょうか?


移民受け入れの部分についてもいただけない。「(日本では)単一民族神話が信じられてきた。日本人は多文化共生に耐えられないでしょう」とおっしゃる。

「日本人は◯◯」とくくって論じること自体、フェミニズムで商売してきた上野さんからしたら大した思想的な変節ですが、それをしかたないで片付けるのはどうしようもない。

何が汚いって、「私は間違っているとわかっているが、あんたらが変わらない」とでも言うかのような口ぶりです。それは理知的なようでいて、悪しき現状追認でしかありません。

それをどうにかして変えようと、もうちょいごちゃごちゃガチャガチャ足掻けよと。いちおうお前も知恵を持った人類だろと。「水の低きに就く如し」だったら、誰も何も主張しなくていいんですよ。「しかたないから平等に貧しくなろう」なんて対案でもなんでもない。社会に発信なんかしなくていいし、どうぞ老後を満喫してくださいとしか思えません。