アン・サリー・ライブ!

本日、岡崎さんとアン・サリーのライブに行く。楽しい時間を過ごす。
その後、二人で2時間ほどカラオケ。久しぶりに歌いまくった。
ただ今、帰りのバスの中から携帯で書いているので、このくらいで。
明日補足します。
【以下、補足】
ついにこの日が来たという感じ。今夜はアン・サリー・ライブだ。
しかし、その前に気の重い出張がある。いつもと同じ時間に家を出て駅に向かう。普段電車通勤をしていないので東京へ向かう通勤列車に乗るのはかなりプレッシャーがある。途中の駅で下車し、ホームに並んで始発を待つことに。うまく座ることに成功する。予習のつもりでipodアン・サリーのアルバムを聴きながら本日の携帯本である伊達得夫「詩人たち ユリイカ抄」を読む。
半分ほど読んだところで目的地に着く。9時から4時まで出張場所の部屋に籠り、根気のいる仕事をする。自分のミスが多く予定通り仕事が進まない。自己嫌悪。それくらいならもっと前の段階からしっかりと準備をしていればいいものをと思うが、後の祭り。いつもこんなことの繰り返しだ。
4時過ぎ、やっと解放される。外へ出ると少し気持ちが軽くなった。今夜のライブまで3時間ほどあるので神保町で暇つぶしをすることにして、まずは書肆アクセスへ向かう。アクセスで2冊購入。

種村本は“東京者”フェアの1冊。先日迷って買わなかないで後悔していたもの。晴れて購入。「映画論叢」は濱田研吾さんの「宮口精二と『俳優館』」を掲載している。その他、濱田さんのフリーペーパー『脇役しんぶん 弐 特集三國一朗」と『未来』12月号を貰う。
仕事の疲れを取るために喫茶ぶらじるで休憩。『未来』掲載の向井透史「開店まで 早稲田古書店街外史」と堀切直人さんと鈴木地蔵さんの対談「神保町−虫の目・鳥の目」を読む。向井さんの連載はこれが最終回。渥美書房を取り上げる。渥美書房の店主さんは若い頃神保町の山陽堂で修業をしており、その当時は今のような岩波本専門ではなく雑多な本を置く店であったという。僕が知った時にはすでに岩波本の店であったが、改装前の九段下側の入り口から入った右の棚は岩波ではない雑多な本が並んでいてなかなか魅力的な棚であった。大学生の頃はこの棚を覗かないと神保町に来た気がしなかったものだ。向井さんの連載はこれで一区切りだが、この続きは書き下ろしで単行本に入るとのことなので楽しみ。渥美書房篇の末尾の文をもじれば《いま少し、街を歩き続ける》といったところか。
『脇役しんぶん」はB5版の両面印刷で表は対談形式を利用した三國一朗解説、裏が書誌と年譜になっている。好きでなきゃただで作れないですよこれだけのもの。これを読んで「肩書きのない名刺」を読みたくなった。ちなみに、僕が持っている三國本は「徳川夢声の世界」(青蛙房)と「戦中用語集」(岩波新書)。後者は、戦時下を舞台とした坂口安吾「青鬼の褌を洗う女」を卒論とした時の参考文献として読んだ。
岩波ブックセンターで1冊。

実は数日前から地元の本屋でも見かけていたのだが、職場が近く、この題名でこの装幀の本を買っているのを見られると変な誤解を受けそうなので、買うのを我慢していたのだ。
5時半を過ぎて神保町を後にして渋谷へ出る。相変わらずの人の波を避けながら公園通りを進むと右手に渋谷AXが見えてきた。しかし、何故か右翼のデモ行進が行われてなかなか道路が渡れない。「みなさま、ご苦労様でした」と妙に丁寧な言葉を掛け合ってデモ隊が解散し、無事会場に辿りつく。場内に入ったもののまだ開演まで40分近くある。プログラムを買ってから指定された席に着いて「詩人たち ユリイカ抄」を読んで待つ。ふと目を上げると座席を探している岡崎さんの姿が見えた。「いよいよやねぇ」と岡崎さんも胸の高鳴りが隠せないといった印象。こちらも会場に入ってからうわずりっぱなしだ。岡崎さんから、村上春樹・文/安西水丸・画「象工場のハッピーエンド」(CBSソニー出版)と『ちくま』12月号をいただく。「象工場」は文庫は持っているが、単行本は持っていなかった。水丸画伯のカラーイラストがふんだんに入っていて絵本のような造りだ。『ちくま』には岡崎さんの“ちくま文庫創刊20周年”記念の文章とイラストが載っている。他には角田光代さんや近代ナリコさんも寄稿している読み応え見応えのある1冊。うれしい。
暗く照明が落ちたステージに白い天使を思わせるような薄衣を纏った(ように見えた)アン嬢らしき人影が中央へと進み。ギターを持った男性がそれに倣う。2人が照明に浮かび上がり、曲が始まった。ギターの伴奏だけで歌う彼女の声はやはり生で聴いても素晴らしい。「ブラン・ニューオリンズ」以前のアルバムに入っている曲を第1部でやるのだなと思っていると、これまでレコーディングしていない日本の歌がいろいろ出てくる。「東京ブギウギ」なども飛び出す。それにしても彼女の歌う日本語のなんと美しく優しいことだろう。その声と言葉のまろやかさにうっとりしているうちに第1部の最後の曲になる。彼女が歌い出したのは「蘇州夜曲」だった。ああ、生でこの曲が聴けるなんて。いったこともない戦前の蘇州の湖に小舟が浮かぶ情景が目の前に浮かんでくる。ルーツを朝鮮半島に持ち、日本に生まれ、もうひとつの母語として外国語である日本語を習得し、長じてアメリカのニューオリンズで生活をしていた彼女が、日本軍が中国大陸に進攻していた時代の歌を歌う。彼女の家族にもその時代の何らかの傷跡があるであろうに。それら諸々を彼女の声はいとも簡単に包んでしまう。
第2部ではまず、アン嬢は退き、ニューオリンズのジャズミュージシャンたちの演奏が始まる。ニューヨーク辺りの東海岸のジャズクラブに出ているジャズメンと比べるとあか抜けない土臭い香りのするところがさもニューオリンズという感じだ。ピアノトリオのリズムセクションにトランペットとトロンボーントロンボーン奏者がなかなか芸達者でいろいろとやってくれる。それにしてもトロンボーンの音ってこんなにも大きかったのかというくらいの音量で吹き捲くる。それに対して若いながらも知性的で落ち着いた印象を与えるトランぺッターはなかなかやるなあと思わせるテクニックの持ち主。端正で抜けのいい音を出している。ミュートのプレイもうまかった。
そのうちに衣装替えをしたアン嬢が再登場。「ブラン・ニューオリンズ」収録曲を披露する。CDとは違い各ミュージシャンのアドリブもたっぷり聴かせる。ジャズっていいな、やっぱりと思う。CD同様にピアノの伴奏だけで「胸の振子」を歌ってくれる。やっぱり、彼女の日本語はいい。いつか全部日本語の歌を集めたアルバムを出して欲しいと切に願う。アルバムにない「SIDE BY SIDE」を日本語と英語の両方で歌ったのもよかったな。〆はサッチモの「この素晴らしき世界」。これで終わって欲しくないと僕も岡崎さんも他の人たちもアンコールの拍手をこれでもかと送る。そしてアンコールは今月末にiTunes Music Storeから2曲売り出されるというニューオリンズ復興チャリティとしての曲のひとつ。かの地の葬送行進曲として歌われる静かに始まり祝祭的に賑やかに終わる曲。これで彼女のライブも幕を閉じた。
会場を後にしたところで岡崎さんが「少し、余韻にひったって帰ろか」。そこでなぜだか渋谷のカラオケボックスへ。荷物を置いて注文を済ませ、トイレに行って帰ってくると岡崎さんが「タイガー&ドラゴン」を熱唱していた。横須賀には横浜でとサザンの「シャララ」でこちらが返す。それから2時間交互に歌いまくる。岡崎さんは吉田拓郎、サザン、陽水、山崎まさよしなどを。僕は小林旭クレージーキャッツかまやつひろし海援隊さだまさし玉置浩二という余りにとりとめのない選曲で。その他岡崎さんがアンさまのナンバーから「胸の振子」を、僕は「星影の小径」、「アフリカの月」を歌う。
11時半にカラオケボックスを後にする。空高く月が冴え冴えと冷たく光っていた。月から視線を戻した岡崎さんがぼそりと「せっかくアン・サリーの余韻に浸るつもりが……」。
岡崎さん、ありがとうございました。ストレスが溜まっていたため自己中な歌い方をしてしまい申し訳ありません。しかし、アンさまと岡崎さんのお陰でいいストレス解消ができました。
さあ、明日も仕事だ。