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ロン・ウッド(現在はロニー・ウッドのほうが正しい表記なのか?)が、80年代、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの関係が最悪だった時期に「会話を繋ぐトーチ」の役割を果たした話をしている。
「『電話でお互い話をしてみたら?』と言うと、『あいつは話したくないだろ』という感じで、『いや、話したいはずだよ。さっき聞いたからね。15分後に電話がかかってくることを期待しているよ』と言っていたんだ」
「そうやってミック・ジャガーにキース・リチャーズに電話させた。その逆もね。仲直りさせて、話をして、あとは自然に任せた。でも、ああしていなかったら、ますまず離れ離れになっていたと思う」
ローリング・ストーンズのロニー・ウッド、バンドの息の長さを保つ秘訣について語る | NME Japan
ああ、この話昔読んだことがあったな、というわけで、かつて読者だった rockin' on のバックナンバーを紹介する「ロック問はず語り」をやりたいと思う。
しかし! この話を生々しくロニーが語る初来日時のインタビューが、実家にある rockin' on のページを破って持ってきた原始的アーカイブに見つからなかった。あー、絶対持ってきてると思ったのにな。
というわけで、それとは別の1993年1月号(表紙はイジー・ストラドリン)におけるロン・ウッドのインタビューを引用させてもらう(インタビュアーは市川哲史)。
当時彼は5枚目のソロアルバム『スライド・オン・ディス』を発表したばかりで、新譜のプロモーションのインタビューでもストーンズの質問を嫌がらずに答えてくれる。人が良すぎるよ、アナタ。
当時、ローリング・ストーンズは解散の危機を乗り越えて『スティール・ホイールズ』ツアーを成功させた後だったが、ビル・ワイマンの脱退が取りざたされており、ミック&キースをはじめとして人間関係が殺伐としたバンドにいて疲れないか聞かれたロニーはこう答える。
「でもね、あれでも連中の仲は一時に比べると随分と良くなった方なんだぜ?『ダーティー・ワーク』作ってた頃のあの二人なんて、もういかなるコミュニケーションも不可能だったんだから。”険悪な雰囲気”なんて言葉じゃ形容出来ないよ。俺だけじゃなく周囲の人間さえも皆世間話一つ出来ずに怯えてたんだからさ。あの頃を思うと、今なんてもう天国みたいなもんでさ(笑)、贅沢は言えないよ」
殺伐や……続けて、そんなバンドをあなた一人が異常に気を遣って他の四人の関係を修復しようとしているように見えるが、実際そうなのか、と聞かれてロニーはくだんの逸話をする。
「元々俺はストーンズの大ファンだったしさ。昔からこのバンドのメンバーになるのが、俺の夢だったんだよ。だからそういう仲裁役というか、潤滑油の役を果たすのは自分の義務だと割り切ってるさ。事実、『ダーティー・ワーク』制作時にキースとミックの仲が最悪の状態になった時も、具体的な仲介役を買って出たのは俺だったんだしさ。あの直後ミックから電話があって、『どうやったらキースの機嫌を直せるんだろう? 最近は俺の電話には居留守使うんだよ』って泣きついてきた時も、『よし、じゃ俺が今からキースに電話しておまえの電話に出るよう説得するから、待っててくれ』って即行動に出たのは俺だったしね――あの時二人が仲直りしてなかったら、ストーンズは間違い無く解散してたろうし、そんな最悪の状態さえ避けられるのなら俺はクッション代わりだろうが何でも構わねえや、と思ったしね」
ロン・ウッド、人が良すぎる……しかし、この記事を読んだ当時、ワタシは高校生で、自分よりずっと大人なはずのストーンズの面々も高校生と変わんないな、と思った覚えがある。そして、当時の彼らよりもさらに歳を取って思うのは、人間関係、だいたいそんなレベルっすよ、ということだったりする。
しかし、ロニーの話には一つ注意すべきことがある。ストーンズのメンバーになるのが夢だったロニーだが、『ダーティー・ワーク』や『スティール・ホイールズ』の制作時、彼は実はストーンズの正式メンバーではなかったのだ。企業に置き換えるなら、彼は正社員ではなく、ずっと非正規雇用者だったのだ。それについてもこのインタビューで答えている。
●今自らを「第三者」と称してましたけど、あなたが実はつい最近まで15年もの間ストーンズの正式メンバーじゃなかった事は、来日の頃から公然の事実で――先日キースがウチの雑誌でも喋っちゃったんですけど、自分のポジションが不当に軽過ぎるとは思った事はないんですか。
「いや、俺は元々気が長い男だからさ。俺みたいな新入りが、そう簡単に天下のストーンズの正式メンバーになれるとは思ってもいなかったよ。だから、10年懸かろうが20年懸かろうが待つしかない、って感じだったんだけどね」
●だって15年も在籍して9枚もアルバム作って7本も大規模なツアーに参加して、普通の人間なら絶対そんなに待てませんって。嫌になった事無いんですか、一度も。
「無いな、一度も。マジでこのバンドが死ぬほど好きだったし、全然気にならなかったよ。むしろやっと憧れのストーンズに入れたんだから何があっても齧りついてってやるぞ! って意識の方が強くてさ。死ぬまでここに居てやる! って思ったね」
ロン・ウッド、人が良すぎる(二度目)。
続いては、1993年4月号(表紙はレニー・クラヴィッツとヴァネッサ・パラディ)に掲載された、彼がソロでの初来日公演時のインタビュー(インタビュアーはやはり市川哲史)における社員登用問題を語ったところを引用する。
R「実はチャーリーとビルが、この問題に終止符を打ってくれたんだ。『ウッディを正式に迎えないなら、俺達はもうストーンズ演らない』って脅かしてね」
逆に言えば、チャーリーとビルがそこまで言わないとロニーを正式メンバーにしなかったミックとキース、ブラック経営者じゃないかい?