yyzz2;虫撮記【虫画像・他】

昨年までは虫撮りの記録および虫の話題です。

苫小牧から転勤して,現在は遠軽町で活動……していません。

HPはhttp://yyzz2.sakura.ne.jp/。Twitterは更新連絡と愚痴。https://twitter.com/yyzz22

当面は,火曜日には必ず更新するということで頑張りたく思っています。

16-09-29(木)

[][]フユシャク亜科 Inurois の解釈私案。 フユシャク亜科 Inurois の解釈私案。を含むブックマーク フユシャク亜科 Inurois の解釈私案。のブックマークコメント

 シャクガも残るはフユシャク・ナミシャク・ヒメシャクである。まずフユシャクから始めようと思っている。フユシャク亜科は日本には2属しかいない。Alsophila と Inurois。後者の方が種数が多い。とりあえず調べ始めて,Inurois でつまずいた。

 

 最も頼りにしている Jeager本や Emmet本には出てきていない。困ったなあというところ。

 それで日頃はあまり参照していない,平嶋義宏(2007),『生物学学名辞典』を見ると,Inurois は3箇所で取り上げられていて,

(p. 364)… Inurois fumosa ウスモンフユシャク

(…)属名:(ラ)inuro 焼印をおす;害悪をひきおこす + -is. または,(ラ)in- 否定 + (ギ)oura 尾 + -is . (…)

 

(p. 524)… Inurois tenus ホソウスバエダシャク

(…)属名:(ラ)in- に向かって,または,否定 + (ギ)oura 尾 + -is. 蛾の尾端の状態から.(…)

 

(p. 661)… Inurois membranaria クロテンフユシャク

(…)属名:(ギ)in- 否定 + (ギ)oura 尾 + -is. (…)

 互いにソゴがあったり,「または」が錯綜していたりして,結局よく分からない。

 また,「蛾の尾端の…」というのは♀個体のコーリング用の尾毛を指すのだろうが,ところが原記載(Butler, 1879, Ann. Mag. Nat. Hist. (5) 4 : 445)には,Cheimotobi brumata(現在は,エダシャク亜科の Operophtera brumata)との「翅脈の相違(多くの翅脈で異なる枝分かれをしていたり,なくなったりしている。つまりは全然違うということ)」についてのみ(その他の点ではほとんど同じと)述べられており,♀個体についてはノーコメントである。♀標本も所持している記載があるから,要するに関心をひかなかったということだろう。そこを根拠に命名するものだろうか。そもそも Inurois の♀の尾にも(ネット上の諸画像を見る限り)毛の房は存在している。

 

 というわけで,平嶋解釈を採らない。代案を出す。とはいえ決定版1つには決まらない。難しい。

 まず“in-”はラテン語の否定の接頭辞で決まり。ギリシア語なら普通は“a-”で否定しそうなものである。“innnu...”でnが重複するので1字省略されている。

 後節が勝負になるが,いずれにしても接尾辞“-is”の据わりが良くないので,この学名はかなり恣意的な造語であるといえる。この具合の悪さは平嶋説でも同じ。

  1. ラテン語の“nurus”(義理の娘)を否定したもの。「義理の娘ではないもの」。義理の娘ならともかく,「ではない」のなら原記載の Cheimotobi brumata とはどうも上手く繋がらないように思われる。
  2. バトラーが翅脈にこだわっていることから,ギリシア語の“neuron”(神経,脈)を否定したもの。「脈のないもの」。バトラーは英語圏の人間であるから,発音から“e”を略してしまう可能性がある。

 わたしの立場では,とにかく「原記載文」を最大のヒントにして学名を読み解いていきたいと思っている。2番目が押し。

 

 フユシャクは日本には2属しか分布していないのだけど,調べ出すと面倒である。多くの蛾屋さんは寒いフィールドで一生懸命♀探ししたりしているのだろうけど,ネットサーフィンや文献読みもそれなりには大変なのである。こちらが傍流なだけで。

 

 他のシャクガ亜科拾い。

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16-09-18(日)

[]Maxates属,Mujiaoshakua属,Neohipparchus属,Pachista属,Pingasa属,Thetidia属更新。 Maxates属,Mujiaoshakua属,Neohipparchus属,Pachista属,Pingasa属,Thetidia属更新。を含むブックマーク Maxates属,Mujiaoshakua属,Neohipparchus属,Pachista属,Pingasa属,Thetidia属更新。のブックマークコメント

 これでHPのアオシャク亜科の修正が一段落。

 

  • Maxates属
    • 画像3枚追加。Graeser の論文は相変わらず見つからない。ザイツ頼み。
  • Mujiaoshakua属
    • これも原記載が見つからない。日本の文献は公開されなさすぎである。
  • Neohipparchus属
    • 『標準図鑑』で語尾が女性形に変更された蛾の1つ。属が変更になるたびに語尾が変わるのは厄介なので「やり方」の1つである。でもそれじゃあ「学名は学問上の普遍語であるラテン語を使っている」意味がないのだけどなあ。
  • Pachista属
  • Pingasa属
    • これもザイツから。
  • Thetidia属
    • 原記載を確認して,画像はザイツ。

 

 次はどうしようかと思って,ツイッターでアンケートをかけた。9票入った。

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16-09-15(木)

[][]『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(5) 蝶蛾の名称について。 『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(5) 蝶蛾の名称について。 を含むブックマーク 『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(5) 蝶蛾の名称について。 のブックマークコメント

 さて,これで,ようやくモフェットに入ることができる。

 正式な本のタイトルは

『昆虫すなわち,より少さな動物の劇場。かつて,エドワード=ウォットン,コンラード=ゲスナー,トマス=ペニーから始められ,最終的にロンドンのトマス=モフェットの尽力によって,最大限にまとめ上げられ,付け加えられ,完成させられた。生きているかのような表現の図版500以上』

(…)

1634年。

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 Wotton,Gesner,Penny についてはいつかどこかで。彼らについて述べ出すと例によって際限がなくなる。

 底本は http://www.biodiversitylibrary.org/bibliography/60501#/summary を用いる。

  • なお,英訳がただちに出版されている。Topsel, 1658, Four-footed Beads SERPENTS の付録として,tr. Jhon Roland, The Theater of Insects; or, Lesser living Creatures; As Bees, Flies, Caterpillars, Spiders, Worms, &c. A most Elaborate Work: By T. Mouffet, Dr. of Physick.(http://www.biodiversitylibrary.org/bibliography/79388#/summary)。この翻訳は,訳者に昆虫学的専門性はなさそうだが,訳としてはまあまあのものだという評価が一般である。(Topsel についても切りがなくなるのでいつか。いろいろと当時の状況について下準備をやりすぎて収拾がつかなくなっているのである)
  • もう1つ。簡単な解説と,個々の蝶蛾の部分のフランス語訳がネットにあがっている。 Jean-yves Cordier, 2016, Les papillons decrits dans le Theatrum insectorum de Thomas Moffet (1634)

 この2つは随時参照していくつもりである。

 

 

 さて,やっと本文。でも今回は前置きの前置き的な部分。

 第13章

 蝶蛾について

 「蝶蛾」は“Papilio”。Rolandの英訳では“Butterflies”であるが,ラテン語では「蝶」と「蛾」とを区別しないので,以下「蝶蛾」と訳していく。

ギリシア語では,psychê,paphos,psalyges と言われる。

sêtodokides,pemphides,pomphaloges,skênes も同じ。

しかし,一般的な名前は psychê である。

ラテン語では,papilio。アルドイヌス(1)は.campilo と名付けている。

イシドールス(2)は,Auicula。

イタリア語では,Farfalla。

ガリア語では,Papillon,Papilion。

ヒスパニア語では,Mariposa。

ポロニア語では,Motil。

ハンガリー語では,Lovoldek。

イリュリア語では,Pupiela,meteyl,motyl。

ドイツ語では,Pifnet,Mulk,Pfyfholter,Summervuegel,Zweifalter。

フランドル語では,Vleghebronfus,Botershyte。

ブラバント語では,Capelleken,Vlindere,pellerin,Boter vlieghe。

英語では,Butterflies。

※幾つかの単語で「小文字」から始まっているが,原文ママ。英訳ではすべて語頭は大文字である。

  1. アルドイヌス:Santes de Ardoynis(Santes Ardoini) +2世紀イタリアの医師,著述家。主著『De Venenis』。(参照:http://data.bnf.fr/12537372/sante_ardoini/#author.other_forms)
  2. イシドールス:Isidorus Hispalensis。6世紀セビリアの神学者。中世最初の百科事典に位置づけられる『語源 Etymologiae』の著者。(参照:イシドールス - Wikipedia

 

 冒頭は各国語での名称の一覧から始まる。

 本質的な知識とは思えないが,「名義を正す」とか「ペダントリー」ということではなく,「あらゆる知識を網羅していく」のが当時の博物学的な知のあり方であるのだろう。

 (この項続く)

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16-09-10(土)

[]Xandrames属・Xerodes属・Zanclidia属更新。 Xandrames属・Xerodes属・Zanclidia属更新。を含むブックマーク Xandrames属・Xerodes属・Zanclidia属更新。のブックマークコメント

 本当はテストの採点をやらなければならないのだが,虫優先。

 HPのエダシャク亜科を一応埋めてしまうことにする。

 

  • Xandrames属
    • 属名はムーアだということであまり追求しない。分からない確率が高すぎ。
    • ヒロオビオオエダシャクの“dhol”はこんな楽器。命名の由来はもちろん分からない。
  • Xerodes属
    • 「Xero」は普通なら“dry”の意味なのだが,原記載文がくどくどと言い訳っぽいことから,あえて異なる解釈を採用した。
    • アカエダシャクの原記載文がドイツ語。わたしの不得手な言語で完全には読み切っていない。解釈は見切り。ドイツ語系の人からの情報は歓迎します。
    • 書いたように「-odes」は規約上は男性。モンシロ・ミスジツマキリエダシャクの2種は『大図鑑』では種小名が正しく対応して「-arius」になっているが,『標準図鑑』では女性形にされているのでそちらに対応させてある。
  • Zanclidia属
    • “-idia”が文法的には「idius」だと希羅ハイブリッドになるので,ギリシアの“idion”から持っていきたいのだがあまり上手くいかない。

 

 これでエダシャク埋め終わり。アオシャクの残りと合わせて修正と図版探しをこれから始めることになる(Abaciscus に画像を入れた)。

 Moffet も「OmegaT」とか使って少ーしずつだけど,やっているからね。

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16-09-09(金)

[]アオシャク修正いろいろ。 アオシャク修正いろいろ。を含むブックマーク アオシャク修正いろいろ。のブックマークコメント

 (いるとすれば)読み手にはつまらないのだろうけど,HP「yyzz2; 虫画像虫よもやま」の更新情報。

 リンクを無理に増やしているのだけれども,コンテンツがどう考えても需要の乏しい,ロングテールな価値を狙ったものなので,記事を何とかグーグルランク上に残しておきたいと思っているのである。

 だって,学名について調べたい人がある日突然出てこないとは限らない。知識がネット上の参照できる箇所にあった方がいいに決まっている。

 

  • Comostola属
    • 亜種名の記述を説明文中に格下げしただけ。
  • Dindica属
    • Butler のところの画像は,種小名に反して全然「緑色」ではない。ありがちなことではある。
  • Geometra属
    • カギシロスジアオシャクの種小名の“Dieckmann”が結局分からなかった。当時有名な政治家がいるのだが,どうやらそちらではないらしい。ハンブルグ在住のW. Dieckmann jr. という人物名がいて,命名者のグレーザーと一緒にアムール調査に当たっている「らしい」。政治家の息子かもしれないが,結局わからない。現在のところ,わたしの検索には引っかかってこない。
    • シロオビアオシャクの画像追加。現記載者の画像のものは,なんだかやたらに白い。標本を元に絵を描くので,アオシャクはとにかく白っぽくなる。
    • f:id:yyzz2:20160909163049j:image
  • Hemistola属
    • 今回,属名の意図が解明できた。原記載様々。とはいえ,標本のスレだろうなあ。画像は困ったときの Seitz。
  • Hemithea属
    • 画像追加。ヒュブナーの画像の鮮やかさ。標本をもとに描いたに決まっていて,こんなに濃い緑のままのはずがないから,これは相当「盛って」いる。
    • f:id:yyzz2:20160909163050j:image
  • Idiochlora属
    • 「ヒメアオシャク Idiochlora takahashii (Inoue, 1982)」。こういうのはまず画像は見つからないので空欄。
    • 「ナミスジコアオシャク Idiochlora ussuriaria (Bremer, 1864)」だとSeitz を使える。
  • Jodis属
    • 画像に空きが多くて懸案だったもの。
    • コガタヒメアオシャクとヒメウスアオシャクの現記載者はリンネ。「自然の体系」を読み返すのは久しぶりだった。文章はは単純で難しくない。リンネ本に画像なんてないので,そちらはまた Seitz 頼み。どちらも,そもそもがあせた感じ翅色なので Seitz ではほとんどクリーム色の蛾になってしまっている。
    • f:id:yyzz2:20160909163051j:image
    • マルモンヒメアオシャクの原記載(Butler)確認。解釈はおそらく正しいと思う。画像は原記載論文から。今回もそうだが,画像付きの原記載論文は少なくない。わたしの下手な写真よりも原記載の方が価値があるような気がしてきている。

 

 タイトルなんかも,ちまちまといじっている(自分では有益なサイトだと思っているので,消えて欲しくないのである。グーグルとは見解が異なるらしい)。

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16-08-20(土)

[]Aracima属・Chlorissa属修正。 Aracima属・Chlorissa属修正。を含むブックマーク Aracima属・Chlorissa属修正。のブックマークコメント

 エダシャクの残りとアオシャクの修正とMoffetとを並行して進めている。今回はアオシャクのHP修正。

  • Aracima属
    • HPにあげたように,原記載論文が見つかっておそらく解決。
    • ちなみに,関係ありとされたThalassodes coelataria (現 Maxates coelataria)の画像。以前やったムーアの『セイロンの鱗翅目』から。

f:id:yyzz2:20160820223247j:image

 Moore, 1884, Lep. Ceyl.. t. III. p. 436, pl. 196, fig. 2, 2a。

    • もう1種。こちらの方がアナグラムの元ネタ。Macaria vagata (現 Paramaxates vagata)の方は使える画像が見つからないので,サイト「iNaturalist.org」の「Paramaxates vagata」。
    • いやあ,アオシャクだなあ。どうしてこれが「オエダシャク」の Macaria だったのだろう。
  • Chlorissa属
    • 画像を2つ付けただけ。
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