日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

子供とカニチラシ

おうちで5時に目を覚ます。リュックひとつで出かけられる身軽さよ。体が軽い。横浜から京急直通特急羽田空港に出て、ANAのターミナルでご同行の皆様と待ち合わせる。二日間のスーパーカミオカンデツアーの始まり。空港は三連休の初日とあって、人でごった返していた。小学生はもう夏休みに突入してしまったんだろうか。手荷物検査も大変な行列で、配給を待つモスクワ市民のように黙々と行列の人となる。中に入った途端、フエタロさんがいきなり「ANAユニフォームコレクション」を大人買いしていた。うーむ、鞄が大きいと思ったらそのためか…?。
7時10分の富山行きに乗り込み、残念ながら窓側の席が取れなかったので機内誌など読み耽っていたのだが、窓側に座っている子供が窓の外にほとんど興味を示さず、泰然として漫画雑誌など読んでいる。他の席の大人は大抵、窓に顔をくっつけて窓の外を凝視しているというのに。いかんぞ、子供がそんなことでは。日本の科学技術の将来が心配だ。つうか、お前らな、150円やるからその席空(r。
想定範囲内の遅れとワタクシ的想定範囲外の急ブレーキで(ちょっち怖かった)で富山空港に着陸し、空港で朝飯を物色。フエタロさんが買ったカニチラシがあんまり美味そうなので私も購入。つうか、凄いよこれ。カニのほぐし身が山盛り、足も2本、さらにカニ味噌、ついでにイクラもかなりの量。これで525円(税込)とは恐れ入る。その後、バスで一路富山駅へと向かう。

富山の街並みはどうか

バスが駅に近づくと、情緒ある富山城址やアヤシイ建物、豪快な解体現場など、魅力的なものが目に飛び込んできて、バスを降りるなり時間に余裕もあると散策してみる。
目の前が駐車場だからやりたい放題なのだろうか、開けっぴろげに展開される解体現場と

今にもどっかがパックリ割れてロボットが飛び出してきそう、というかビル自体がロボットに変形しそうな富山市役所

富山市庁舎は周辺街区に高さを合わせ、西館・東館を新旧都市軸に沿った南に開いた配置になっている。この2棟の間をアトリウムとし、その中心に塔を配している。アトリウムは三角形の大屋根を持つ8層吹抜の大空間で、オープンオフィスが面し、外部環境を和らげつつ、市民の集まる場所にふさわしい解放感を作り出している。
http://www.nihonsekkei.co.jp/works/data/toyamacityhall.html

ええぇぇ、それは本気で言っているのか?外部環境を和らげているのか、そうか。
さらに富山城。概観は草生した石垣に囲まれた良い雰囲気なのだが、中に入るとこれまたうーん。デザインコンセプトの皆目不明な庭園とお城、そしてライオン像

ライオン像は、予想通りと言うかがっかりと言うかアニハカランや会員を「ライオンと呼び合う」という、かの団体であった。相変わらず空気を読まんのう。
それから、街のいたるところに空気を読まない銅像とオブジェの数々があり、深く考えずにどんどん増殖させていったのだろうなあ、というのが伺える。富山市の中心部は、典型的な「空襲後」の街並みだ。隣の県の金沢は空襲にあわなかったが、富山市内は空襲で壊滅的な被害を受けた。そこから復興し、いまでは豊かさ日本一といわれる県の首府である。いろいろと矜持もあるだろう。だけどなあ、ちょっと、なんか、全体的にどうよ、と言いたくなるのである。お堀端など、非常に雰囲気の良い資源も沢山あるのに。

集合するまで

相変わらず話が脱線気味でスーパーカミオカンデに近づく気配が無い。と言うわけで暫時進行することにしましょう。富山駅に出て、昼飯用のお弁当を購入。列車までの時間を喫茶店で潰し、ワタクシ的にはいろいろごにょごにょがあって、出発時刻が迫っていることに気がついて急いで10時27分の猪谷行き高山本線に駆け込む。一両しかないディーゼルカーであった。
のどかな田園風景を列車は進み、そろそろ山が迫ってきたところで猪谷駅に到着。ここからは神岡鉄道の11時26分の便で奥飛騨温泉口に向かい、そこから12時30分スタートのスーパーカミオカンデツアーに……と思っていたら、なんと今日は「GSA2005」開催に伴い、すべて特別時刻で運行していると言う。ええぇ、一週間前にHP見たときは、そんな情報無かったにょ…。これでは集合時間までにたどり着けぬ。
駅にいた係りの人に相談し、9分遅れで着いても参加できるように便宜を図ってもらうか、途中の駅でツアーに拾ってもらうか、あるいは最悪タクシーで出るか…などと考えていたら、車で送っていただけることになった。有難し。他にも時刻の変更を知らずに困惑していった2人連れも同乗して、ワゴン車が爆走。途中、神岡鉱山亜鉛工場に歓声を上げるも止まって写真撮らせろと言うわけにもいかず、そのままさらに走って、別の二人を街の中心部に下ろして、我々4人は奥飛騨温泉口の駅まで乗せていただいた。そのおじさんの話だと、神岡鉄道もここ2年くらいのうちに廃線になるので、このイベントもあと一回くらいで終了と言う話。後で調べたら、2006年の12月廃線とのことだった。

神岡鉄道廃線の決定の背景の一つとして、同社の鉄道収入の7〜8割を占めていた貨物輸送の廃止があります。
同社の出資者の一つである三井金属鉱業株式会社の子会社である神岡鉱業濃硫酸輸送を、鉄道からトラックに切り替えたことが止めを刺した格好になりますね。
http://blogs.yahoo.co.jp/sakura_gabu/5942845.html

貨物輸送を止めてしまったんですね。たしかにそれでは続かないか。まあともかく、列車代の代わりで一人580円也をおじさんに払って下車。

奥飛騨温泉口はかわいい駅で、駅舎も比較的新しい。これで廃線とは寂しいが、道の駅に転用できそうな作りではある。はじめからそのつもりで作ったのか知らん。
受付を済ませ、ヘルメットを受け取って、富山駅で購入した弁当を食い、12時30分の集合時間までゆるゆるとすごし、12時45分発の神岡鉄道で50人の集団がいざ出発、と相成る。

地下空間へ

ツアーコンダクター、ボランティアの人らしいのだが、この人の説明と注意と懐中電灯の売り込みを聞きながら、窓の外を見やれば神岡鉱業亜鉛精錬工場が見え、必死に写真をパチリ


漆山という駅で降りて、二手に分かれてバスに乗り換える。バスは坑道の中用のバスらしい、こんなマークが…

細い山道を進んで坑道の入り口に近づくと、坑道から真っ白い煙、ではなく、水蒸気が凄い勢いで噴出していてえらいことになっている。坑内は気温が13〜15度で保たれているため、夏は外に向って、冬は中に向って風が吹くのだという。バスに乗ったまま坑道に入り、真っ暗な中に所々ランプの点る道をひたすらに進む。5分近くも走ったろうか、暗い坑道の中でおろされた。入り口付近では地下水が至るところ溢れていたが、内部では安定岩盤のため、水がほとんど出ていない。このあたりは山の上から1000mの地下空間だ。
ここから真っ暗な坑道を歩いて進む。懐中電灯を持って来いといわれたから暗いのだろうなあ、でも大げさだなあ、と思っていたが、本当に懐中電灯が無いと何も見えない所を歩かされるとは思わなんだ。一人で歩くと相当怖そう。まさに洞窟探検の気分。所々に横穴があったり、無造作に道具が積まれていたり、ワクワクする。写真は到底撮れないので諦め気味。

でっかい重機が!

10分も歩いただろうか、行き止まりにプロジェクターが用意されていて、これも多分ボランティアの人なのだろうか、係りの人が江戸時代からの神岡鉱山の歴史を説明してくれた。途中、掘削の実演シーンありでちょっと生暖かい笑いが…いやまあ、一生懸命寸劇をやっていたわけですが。
昭和以降の鉱山開発の映像資料、いや、これが重機大活躍やら発破やらでなかなかの素敵映像であり、神岡鉱山は重機を縦横無尽に走らせた画期的な鉱山であることがわかる映像だったのだが、途中で「何かがこちらに向ってきてるようです!」との一言、我々の後ろにロープが張られている。真っ先に最前列を取るわたらせさんとフエタロさん。さすがに動きが速い。轟音、それも物凄い轟音と共に、鉱山用に特別に開発された全長10mのローダが爆走してきた。狭い坑道空間を走ってくると、まさに「爆走」という印象、バケットから積載物を出すためのハネ*1をバタバタやりながら我々に迫ってくる大サービス。怖えー!。
そして、隣に待機していた油圧ジャンボ、これは発破のための穴3mを1分とかからずに空けることのできる全長12mの重機なのだが、これで穴あけの実演をしてくれた。サービスいいなあ。
重機に近づいて、運転席に乗ったり写真を撮ったり撫で回したり。
穴を掘る油圧ジャンボ

運転席にのることも出来る

間近から激写!

神岡鉱山については、三井金属のサイトにいろいろと情報がある。
http://www.mitsui-kinzoku.co.jp/more/kouzan02.html

*1:坑道の天井が低いので、積載物を出すためにバケットを持ち上げることが出来ない。だもんで、バケットにハネがついていて、それを動かして積載物を押し出すのだ

そして、スーパーカミオカンデ

重機を堪能して、さらに奥に進む。懐中電灯を消して「真っ暗」を体験してみたり。横穴にトロッコの線路が見えて、以前のこのイベントの時にはトロッコにも乗れたらしいのだが、横転したりして危ないからと止めたらしい。
坑道が明るく綺麗になって、いよいよスーパーカミオカンデである。靴を脱いで上がり、研究施設の扉をくぐると、まずはなぜか紙芝居でニュートリノについての説明。読み聞かせ会の奥様が美大の先生が作った妙にアヴァンギャルドな紙芝居で説明してくれた。紙芝居からわかったこと。
ニュートリノは何でも知っている
スーパーカミオカンデニュートリノの声を聞くことが出来る
いや、なかなか良く出来てるとは思うのだが、子供が変な宗教かなにかと勘違いしなければいいのだが。

研究施設の中には、さまざまな記念の色紙や、サインをした扉などが飾られてあった。


文部科学大臣政務官の人のサイン、小柴さんの下で目立ちすぎ。もう少し分を弁えた方がよかないか。つか空気嫁
そして、いよいよ、直径40m、高さ40mの巨大な水槽の…上に出る。次のイラストの、上のドーム部分だ。
http://www12.plala.or.jp/hisho/b-8.html
残念ながら、現在は観測中で、中を覗くことはできないようだ。前回、中を見たのは、去年の夏に訪れた天皇皇后両陛下であるとのこと。東大の研究員の人から説明をしてもらい、その後、写真撮影は自由にさせてもらえた。

ここが、水槽の円筒の上にあるドーム空間である。そして、研究施設を支えるメカの数々。


浜松ホトニクス製、光電子増倍管

もともとは12000本あったのだが、平成13年の事故で相当数が壊れてしまった。現在は半分の6000本で研究が進められており、管は1日2〜3本しか作ることができず、今年の秋から本格的な復旧作業を進める予定だという。

さらに洞窟探検は続いて

スーパーカミオカンデの後は、東北大学の研究施設、カムランドへ。旧カミオカンデの施設が転用されて、原子炉から出るニュートリノの研究などをしているようだ。スーパーカミオカンデは主に太陽から出るニュートリノを観測、研究している。そして、カムランドは研究で、論文引用数世界一となるような論文を生み出しているという。こちらのほうが立派な資料をくれて、大学院の学生の説明も熱心で、微妙にスーパーカミオカンデに対する対抗意識のようなものも感じられた。この扉の奥には、水ではなく油が詰まったタンクがある

これで学術方面の見学は終わり、移動してテルミンマトリョミンのミニコンサート。みんなヘルメットをかぶりながら演奏するのが楽しい。マトリョミンキーワード化されているので、そちら参照。マトリョミンは、演奏する様子といい、音といい、自然に笑いが漏れる電子楽器だ。

地底空間には地元の人がお店を出していて、食べ物やらヘルメットやら切手やら地底の水やら桐下駄やら、種々雑多なものを販売していた。商売熱心である。朴葉すしとホットミルクを食べ、甘物好きの魚蹴さんは「シュートリノ」というのを食べていた。普通のシュークリームだったのだろうか。んで、ここで、案内してくれたツアーコンダクターの方が、所謂「同好の士」であることが判明。名刺までいただいてしまって恐縮。あとでメールします、今回はどうもありがとうございました。

再びバスに乗りこみ、真っ暗な坑道を進み、漆山の駅に戻る。本来ならここから奥飛騨温泉口の駅まで戻って解散なのだが、途中の飛騨神岡の駅から高山行きのバスに乗ることになっていたので、理由を話して途中で下ろしてもらった。いやあ、実に堪能いたしました。素晴らしい地底空間体験でした。

高山へ向う

本来であれば神岡鉄道高山線を乗り継いで高山に向いたかったのだが、台風の影響で高山線代行バスになっており、時間が合わないのでバスを利用することになった。神岡の駅から見える神岡の街の風景は、炭坑町らしい密度の高さ。


17時13分のバスに乗り込んで、疲れてうつらうつらするうちに、飛騨古川の駅に着く。

静かで落ち着いていて雰囲気のある街だったが、駅前の「スペランツァホテル」の流す音楽が雰囲気をぶち壊していた。18時13分の列車に乗り込み、高山駅に着。

朴葉味噌!刺身!日本酒!

夕飯を食う場所を探して、「国分寺」という繁華街に向う。途中に寄った国分寺というお寺には、重文が沢山。繁華街を歩くと旨そうな店が沢山あり、なかで「膳」という店が良さそうだが、混んでいるので他も見てみよう、とそぞろ歩く。ガイドブックにも乗っていた「時代屋」改め「いずみ屋」という店が安くて旨そうだったので覗いてみるが、「一杯なんですよー、姉妹店がありますのでそちらはどうですか?」とのこと。案内された先は、さっき良さそうだな、と思った「膳」という店であった。若者も多く、地元で人気の店のようだ。満員だったが、広い店内で回転が良さそうだったので、しばらく待ってみることに。
飛騨高山 飛騨牛 居酒屋 膳・いずみ家
店内は雰囲気の良い店だったが、店員さんが少なくてオペレーションが混乱気味の様子。それでも20分ほどで席に案内されて、まずはビール、うう、旨あい。瞬く間にビールを空けて、地酒セットを。純米の「久寿玉」「山車」と、あともう一つ。山車がちょっと特徴のある味で旨い。

食べ物のほうも、富山でとれた刺身、飛騨牛の朴葉味噌焼き、ホタルイカ、豚の角煮、茄子、その他。量はやや上品だけど、実にんまい。酒も進む。追加で頼んだ飛騨の地酒「天領純米吟醸の洗練された味わい、これまた旨いこと。お会計も安くは無いがそこそこだった。
大層幸せな気分になって、タクシーで本日のお宿、「国民宿舎やまいち」に向い、風呂に入って就寝。そういえば、寝る前にヴィレッジバンガードに行ったのだっけ…