明けまして、おめでとうございます。

2006年も、これまでと変わらず実話怪談本を中心に読み漁りたいと思います。
……去年は中々新しい本を読んでもUPが出来ない状態でした。
感想文を書くのに、最低2回以上読み直してから細かい部分をチェックし直し
て書いています。それが原因で遅くなってしまうのです。
言い訳ですね(苦笑)。
どういった本でも、ちゃんと読まずに書くことは出来ない、と思っているから
なんですが……。
今年は出来るだけ古い本も新しい本も、読んだら早く書く、と目標にしたい
と思います。


遅れましたが、個人的・去年の実話怪談本ベスト5です。
もし読まれていない方がいらっしゃるなら、是非触れてみてください。
※敬称略

新耳袋 第十夜 木原浩勝/中山市朗
 実話怪談の代表であり、有終の美を飾った。

新耳袋―現代百物語〈第10夜〉

新耳袋―現代百物語〈第10夜〉

「超」怖い話Ε/Ζ 平山夢明/加藤一
 実話怪談の代表として、高いレベルを保っている。

「超」怖い話Ζ(ゼータ) (竹書房文庫)

「超」怖い話Ζ(ゼータ) (竹書房文庫)

・真夜中の手紙 怪奇探偵の超常レポート  小池壮彦
 他とは一味違った切り口の実話怪談を提供してくれる。

真夜中の手紙

真夜中の手紙

・妖弄記 加藤一
 実話怪談の方法論と、不可思議な世界の融合。

妖弄記―書き下ろし実話妖怪談集 (ルナティック・ウォーカーシリーズ)

妖弄記―書き下ろし実話妖怪談集 (ルナティック・ウォーカーシリーズ)

「弩」怖い話2 HOME SWEET HOME 加藤一
 2005年で最高に怖くどす黒い実話怪談。後日談の存在が更に拍車をかける。

「弩」怖い話〈2〉Home Sweet Home (竹書房文庫)

「弩」怖い話〈2〉Home Sweet Home (竹書房文庫)

選んだ理由は「(自分が)面白いか、面白くないか」。


有名どころばかりになってしまいましたね…。
これも実話怪談の書き手の層の問題でしょうか?
2006年は中堅どころと新人さんに期待したいところです。

ということで、今年も宜しくお願い致します。

北の幽霊、南の怨霊

今は亡き、同朋舎発行の「怪談叢書」シリーズ。
合田一道氏と友成純一氏の共著書である。…といっても、新耳袋「超」怖い話のように
「共同執筆」をしているわけではなく「北の幽霊・南の怨霊という、二つに分かれたそれ
ぞれのパートをそれぞれが単独で執筆担当している」本だ。
少し特殊な装丁が行われており、どちらからでも読み始める事ができる表裏がない表紙に
なっている。丁度本の真ん中で本文の上下が入れ替わっている造り…といえばお分かりに
なるだろうか?


さて、それぞれのパートについて簡単に書こう。
合田一道氏は元々ノンフィクション作家。著書の内容や、今回の「北の幽霊」を読むと、
北海道を中心に活躍されているようだ。
この北の幽霊は、多分そういった取材や仕事の合間に聞き集めた北海道の「伝承」「怪談」
を氏がリライトしたもの、といえる。
アイヌに絡んだ話が多い「黎明期」から、本土からの侵攻ともいえる「開拓期」、近代の怪談
をまとめた「現代」、と三つに分けられているのが面白い。
一部は実話怪談といえるが、他は伝承・奇談といった「民話」っぽい話が並ぶので、従来の
実話怪談と同じように読むと肩透かしを食うだろうが、北海道の「奇談の資料」と考えれば、
面白い。資料と言っても、そこまで分量があるわけではないが。
中でも「地獄穴の怪女」「大蛇」などの怪物系(妖怪?)の話は興味深い。
(一部、松谷みよ子氏が「現代民話」として発表されたネタもあるのが面白い)


友成純一氏といえば、有名なホラー作家。
そんな氏が書いた「南の怨霊」なので「すわ!ヴァイオレンス怪談か!?」と思わせたが、
じつは全く違う(笑)。
友成氏が九州に引っ越してからの「お出かけ譚」であった。
取材や遊びに行った先で訪れた「史跡」などにまつわる伝承について書いてある。
氏曰く「九州発見の驚き」の話である。
福岡をはじめとする九州一円(沖縄については残念ながら収録されていない)の伝承・奇談
が、そこに住むもの・訪ねたものならではの筆致で描かれている。
九州在住の方なら「ああ、あそこの話か」と頷く事必死だろう。
それぞれの話は面白いのだが、様々な伝承に混じって「イッシー(鹿児島)」の名前が出て
くるのが可笑しい。イッシーも伝承・民話となる日が近いのか?すでにそうなのか?


こうして「北の伝承」と「南の伝承」を並べてみると浮き立つのが、「土地の特性」だろうか?
北海道も九州も、中央からの攻撃に晒されたという共通点がある。
が、最終的にそれぞれが全く異なった行動を取るのが興味深い。
北が「幕府の政策に耐え忍んで」いたのに対して、南は「倒幕」を果たしている。
(北も南も中央からの侵略に抵抗したのは同じ)
幽霊譚でもそれが顕著に現れていて、北の幽霊になった女性は、男性という「暴力」に耐えて耐えて、
死んでから復讐…というパターンが多い。それもその復讐はじわじわとしたものである。
南と言うと、女性が「生きているうちから復讐をするが、それで返り討ちに遭い、死後祟る」といった
パターンで、生きているうちは長刀を振り回して、男を殺しに、それで殺せなければ死後祟る、
というのもストレートな行動(?)だ。まさに「怨霊」。
こうして、二つの異なった土地の奇談を並べる事によって、それぞれの特異性を浮き彫りにした点
で、この「北の幽霊、南の怨霊」は面白い資料集だろう。
是非、復刊していただきたいものである。

北の幽霊、南の怨霊

北の幽霊、南の怨霊

河童は猫に似ている?

■怪異・妖怪データベース

で、そういうことが語られていた。
要約すると「河童=カワウソ=猫」という見間違え&伝承の経緯によるもの、といったところか。
青森と山口の一部地域に伝わっている話らしい(しかし本州最北端と最西端なんだよな)が、これからちょっと考えた事。
もちろん、生物学にも民俗学にも疎い人間の書くことなので、妄想と取って頂きたい。思考遊び(笑)。


河童の正体について、見間違えとか、恐竜人(!)など色々ある。
まとめてみると以下の通り。

・現象の妖怪化(鳥の鳴き声などを河童の声としたり、溺れる事を河童の仕業にしたり)
・既存の生物を見間違えた(前述のカワウソであったり、大型のスッポン、猿、果ては人間など)
・水死体などが状態変化したものを見間違えた
・実は霊的な何か
・未確認生物
・キザクラの(以下略)

とまぁ、妄想の翼を広げると色々出てくる。
あ、今思いついたのは「川赤子の正体」。
「川赤子=サカリの付いた猫の声」……と書いて思ったのは、やはり「川の妖怪の関連性」。
河童は猫に似ている…と何かリンクしたような気もする。
(川赤子自身は、石燕の創作ネーム。山川にある藻屑の形が赤子の様な形をしている妖怪らしい。
どこからともなく聴こえてくる泣き声の正体としたのは水木しげる氏。ちなみに「糸ミミズ=川赤子」も。
藻屑という辺りに引っ掛かりますな)


正直、過去現在問わず、目撃報告の大半は「見間違え」だろう。
アメリカ大統領がカワウソが連なって泳いでいるの「怪物」と勘違いしたこともある。
ほら、多摩川のたまちゃんとか、予備知識なく目撃したら絶対「得体の知れない何か」だと思うはず。
これらは人間の想像力と認識力の産物といえよう。
だが、ほんの数パーセントだが「本物」が混じっているかもしれない。
目撃譚などを読むと、見間違えや勘違いとひとくくりに出来ない事例もあるのだから。
こういった目撃例が書かれている実話怪談書籍と言えば「新耳袋」「「超」怖い話」「妖弄記」「文藝百物語」
などなど。こういう話が読めるから、実話怪談は止められない…。

妖怪ウォーカー

妖怪雑誌「怪」のレギュラーメンバーである村上健司氏の妖怪スポット紹介本。
このブログで妖怪ものを扱うと、色々な障りがあるらしくずっと我慢していた(笑)一冊。


この本を一言で表すと「妖怪旅本」だろう。
妖怪を種族別で分け、それぞれの伝説などを解説、それを地図と共に紹介している。
「どうぞ、この本を持って日本全国津々浦々、妖怪探索の旅に出てください」
と言わんばかりの親切さだ。
伝説解説と地図につけられた説明の部分は専門書籍と比べると簡素な書き方だが、ポイントを
きちんと抑えてある上、読んでいてい楽しい。この「読んでいて楽しい」と言う部分が重要だ。
おまけに妖怪に詳しくない人でも分かり易い内容なのが嬉しい。
そして、妖怪伝説の地へのアクセス方法やお土産物情報(!)まで詰まっているのがナイス(笑)。
妖怪初心者への入門書として、こういったアプローチもありなのではないだろうか?
妖怪に少し詳しい人にとっては「思考遊びのヒント集」にもなる。
良い書籍は初心者も詳しい人間にも分け隔てなく面白いものなのだ。
(私自身妖怪に詳しくないのだが、この本は面白く読めたし、色々な思考遊びまで出来た)
読んだ後、自分の住んでいる地域の妖怪伝説を調べるのもまた、楽しい。
一粒で二度三度美味しい本、である。



ただ、ちょっと気になった点がある。
北は青森・南は沖縄まで載っているのだが、北海道のスポットが全くない上、九州地方は掲載数
が少ないのだ。
これはページ数の関係なのか、予算の問題(笑)なのか。
内容が薄くなるくらいなら……という編集方針からの英断かもしれない。
是非、今度は「妖怪ウォーカー地方版」として、各地方ごとにまとめたマニアック編を出して
いただきたい……って無理か(笑)。


読んだら、妖怪の旅に出たくなる一冊。
妖怪好きも旅好きも、是非。



参考リンク

■『怪』NETWORK

■妖怪ウォーカーデータベース

妖怪ウォーカー (Kwai books)

妖怪ウォーカー (Kwai books)

中国の鬼神 天地神人鬼

實吉 達郎:著 不二本 蒼生:画による中国神話世界のガイドブック。
と銘打たれた書籍である。
簡単に言うと、「西遊記」「後西遊記」「封神演義」などに登場した、神仙や妖怪等を
イラストと解説でまとめたもの。感覚的に「妖怪図鑑」に近い。
代表的なところは網羅していると思うし、イラストも味があってよい。
(イラストはあのジュブナイル小説時をかける少女」の表紙を描かれた不二本 蒼生氏)
ちなみにイラストは「伝説や小説で語られた」特徴を活かしたもので、かなりの力作だろう。
好き嫌いが分かれる絵柄とは思うが、オリジナリティに溢れている。


問題は解説部分の文章である。
これが実に解り辛い文章で、読んでいて何度か混乱した。
元々中国の伝説や小説等は、独特の表現や文体なので日本語に訳するときは苦労をする。
あちらの文化に精通して、なおかつ古の文化にも詳しくないと難しいのではないか?
日本語訳されている昔の「中国伝奇もの」や「怪奇短編小説」物を読むと特にそう思う。
(有名なところで「聊斎志異」などを読んでいただければお分かりいただけるだろう)
なので、それを念頭において読んでいたのだが、それを差し引いても読み辛い。
何故かと言うと……。
「文章があまり上手ではないから」だ。
色々と細かく調べ上げていても、それを伝える方法に間違いがあるのなら全く意味がない。
(調べ上げてはいるが、それが全て正しいかどうかは不明でもある。孫悟空のモデルになった猿
の名前とか……。キンシコウだと思うのだが、実は違うのか?とか細々と)
また、「読者が知っているのを前提をして」文章書いている部分があるので、それもマイナス点。
まあ、この手の書籍は「ファン」向けであるから間違いではないかもしれないが、馴染みのない
初心者にとっては辛いだろう。
解説部分をきちんと校正して、様々な注釈を付ければ更に良いものになっていたはずだ。
残念である。


参考リンク

■實吉達郎オフィシャルサイト

■不二本蒼生常設美術館



ちなみに「實吉達郎氏」はUMAの名付け親だという。
これには南山宏氏も絡んでいるので、詳しく知りたい方は調べてみていただきたい。


中国の鬼神―天地神人鬼

中国の鬼神―天地神人鬼

恐怖!!あなたの知らない世界

あの「新倉イワオ氏」が帰ってきた。
「あなたの知らない世界」(TVと書籍)で多くの人を恐怖のどん底に叩き落した、あの
新倉氏である。トラウマものの映像や話を未だに覚えていらっしゃる方は多いだろう。
その「あなたの知らない世界」がコンビニ向け書籍として蘇った。
(あ、ちなみにだけど、KAWADE夢文庫にて「心霊怪奇―あなたの知らない世界」と
いう文庫が今も入手可能。この夏にフェアをしていた)


ざっと2回ほど読んでみた。
古きよき時代の怪談だった。
目頭が熱くなった。


しかし。
しかしだ。
現代の怪談に慣れた状態で読むと、色々突っ込みどころが満載でもあった。
穴があるというか、どう読んでも「ここは違うだろ」と感じたり…。
それと、ホラー映画のあらすじをルポルタージュ風に書いた文章に違和感が。
ああ、そうか。思い出した。これが昔の怪談の醍醐味だったのだ。
この「胡散臭さ」が魅力だったのだ。
誰が語ったのか分からない話と、心霊専門用語の説得力と、強引なオチ。
細かい部分に拘らずにそれらを笑って楽しむのが、お勧め。
あの時代の怪談が好きな方は是非。


蛇足:そういえば新倉氏ってよく「亡くなられた」という噂が流れる。
ちゃんとご存命であるのだけど(笑)。
加門七海氏と対談をしたり、未だに「心霊研究」をしていたりしている
ようで、なにより。

恐怖!!あなたの知らない世界

恐怖!!あなたの知らない世界

オファーは来ていません(笑)。

えーっと、下の雑談にあったコメントに対する返信です。
コメント欄で答えるより、こちらで書いたほうが見易いかな?と思ったもので。

# 通りすがり 『山口敏太郎氏のイベントに参加って、本当ですか?
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1119849109/

上のリンク先を辿ってみると、

864 :本当にあった怖い名無し :2005/11/09(水) 23:15:07 id:FrtdeyaH0
キタキタキタキタ。
ttp://www.e-oma.com/oma-live.htm
怪談トークライブ「心霊妖怪百人組手」イベントやります!
        
■開催日 2005年11月26日(土)
■時間  20時〜朝4時
■会場  京都大将軍商店街
      百鬼夜行資料館(予約人数により変更する可能性もあり)
      http://homepage2.nifty.com/kamamesi/page002.html
          
■参加費  無料
■内容   妖怪・幽霊の語り部が次々を怪談を披露。飛び入りも可。
     
      司会:山口敏太郎 雲谷斎
      語り部予定:
      増田よしはる(妖怪絵師)/紙舞(妖怪研究家)
      あーりん(風水師)/茶羅尼(霊能者) 他にもUFO研究家など多数
     夜の8時から始発まで怪談を語り倒す、めっちゃ面白怖いライブ。
     妖怪王の山口敏太郎さんと、怪談メルマガ「逢魔が時物語」雲谷斎
     が初めてコラボします。
     そうそうたるその道の専門家たちが語りべとなって怪談や妖怪話を
     次々とくりだします。もちろん、参加者による飛び入りも大歓迎。

     会場にいったい何が起こるのか……
     怪談がメシより好きなあなたは、絶対に見逃せないお祭りです。

     京都近辺にお住まいの多くの読者の参加をお待ちしています。

これ、誰か行かないの?


865 :本当にあった怖い名無し :2005/11/09(水) 23:46:38 id:f3L6AQaa0
>>864
このイベント、豆と素人Aが参加決定ってきいた。
素人Aは和解の証拠らしい。

多分これのことかと思われますが……(素人Aが私ですよね)。
タイトルどおり、今現在オファーは来ていません。
なら「オファーが来たら参加するの?」と言う話になると思います。
それに関してははっきり書いておきます。
<正式なオファーが来たとしても、参加は致しません>
何故かといいますと、私は「語り部」ではないからです(笑)。
霊体験も体験談蒐集も、怪談を書いたりもしていない訳でして、言ってみれば
「一読者」「受け手」でしかないのです。
参加して出来る事といったら、『今の話、怖かったですねー』とか『ふんふん』
という相槌くらいしか出来ないですから、ね。後は突っ込むくらいですか(笑)?
参加しても意味がないわけです。
それにほら、山口氏とそのお知り合いの方とは知己でもなんでもないですから、
オファーなんて来ませんって。
……それと、和解というのも分からないんですよ。
例のあれ以来なんにもないですから。
和解も何も、あれは喧嘩ですらないわけでして……(苦笑)。


ということで、これがお答え、という事でよろしいでしょうか?>通りすがり様。