ある森にきのこが一本生えています。 大きなぶなの木を真っ直ぐに見上げています。 じっと動かず、目を逸らすことなく、ただじっと目の前の大木を見つめています。 ぶなの葉をすり抜ける木漏れ日の雨は、真っ赤な傘をキラキラ照らします。 炎のように暖かく輝く赤。 きのこ自身さえも焦がしてしまいそうな不安定に揺れる赤。 どれだけ見つめても地上のきのこははるか空のぶなの葉をはっきり見ることはできないでしょう。 日の光が当たれば、それは暗くて大きな影にしか見えていないかもしれません。 それでもきのこはぶなの木を見つめ続けます。 ぶなの木はきのこの目の前にじっと佇んでいるけれど、きのこは近づくことなくひたすらぶな…