■ 硫黄の時代 ──“オタク”という言葉に、まだ硫黄の臭いが染み付いていた時代。 萌えも推しも、世間から見りゃただの精神疾患。 営内の空気は淀み、“違う”というだけで笑い者にされた。 変態。異常者。排除対象。 だが──いた。 その業火の真ん中で、誰にも見つからぬまま── 燃え続けていた男が。 梅木三曹。通称、梅さん。 ──そして、伝説が始まる。 ■ 下宿という名の前線基地 高田の馬場。 学生たちが夢を食い潰しながら這いまわる街の、その片隅。 “下宿所”と呼ばれたが、実態は違った。 既婚でもない梅さんが、営外許可を得てまで構えた── 前線基地。 カーテンの閉じられた四畳半。 共同トイレ、共同シャ…