35歳のヒカリは、都会の片隅にある小さなカフェで働いていた。 そして昨年、最愛の母・陽子を病気で亡くし、深い悲しみに暮れていた。 陽子が亡くなる数日前、ヒカリに一枚のスカーフをプレゼントした。 鮮やかな黄色のシルクのスカーフ。 「いつもあなたのそばにいるからね」という陽子の言葉とともに。 陽子の死後、ヒカリはスカーフを大切に保管していたが、 なかなか身に着けることができなかった。 それは、スカーフを見るたびに、 陽子のことを思い出して悲しくなってしまうからだ。 しかし、ある日、ヒカリは思い切って スカーフを身に着けて街に出かけることにした。 一歩、また一歩と、足を進める。 時折吹く風。そして、…