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テロワール

(一般)
てろわーる

株式会社 テロワール  TERROIR Inc.


芸能プロダクション。タレント事務所。
東京都台東区。パル企画をはじめとするパル・エンターテイメントグループに所属。

テロワール

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てろわーる
  1. ワインに現れる葡萄畑の気候・地勢・土壌の個性。
  2. ワイン産地、とくにフランスの有名ワインの伝統的な特徴
  3. (人や、ありとあらゆる作物についての)土地柄

学術的には1の意味で使われるが、2の意味で使われることも多い。そのためワイン生産の歴史が短いニューワールド産のワインにはテロワールがない、などと表現される。ある地方や特定の畑は、ワインに類似性や独自性をもたらすと考えられており、その原因がテロワールである。「このワインはテロワールがよく反映されている」と言う場合は、新興国で好まれる果実味たっぷりのワインや収量重視で味わいの乏しいワインではなく、フランス風の抑制の効いたワインという程度の意味で後者に近い。

しばしばワイン以外の作物でも、生産物の違いをテロワールの違いで説明することがある。

テロワールの実体

 「特定の地方や畑からつくられたワインは特定のニュアンスをもつ」という考えはフランスの原産地統制呼称法(AOC法)の基礎となっており、テロワールは土壌の化学物質に強く依存し、移し替えたりすることはできないと考えられていた。

 現在、学術的にはテロワールを地勢、土壌、気候に大別して考えるのが普通である。研究の結果、マクロクリマ(気候帯)、ミクロクリマ(微小気候)、土壌の化学組成、物理組成、生物相の影響の仕方が解明されつつある一方で、従来テロワールとして考えられてきたものが実は醸造法や葡萄品種・クローンの違いに還元できると明かにされているものもある。全般的にはテロワールとされてきたものの中には、他の土地でも再現できるようになり、ますます土壌成分に由来するテロワールという概念は揺らいでいる。また畑の土壌に含まれる微量元素がワインの味に与える影響は十分に科学的な説明はされていない。

人の手によって作られるテロワール

 古来「バッカスは丘を好む」といわれ、多くの優良なワインが丘陵地で作られてきた。しかし農学の発展によって丘陵地の特徴がなぜワインの品質に関係しているのかが明らかにされつつあり、その特徴の一部は他の畑に移すことが可能である。そのうち貧しい表土、日当たり(傾斜)、水はけが重要であると考えられている。

 よく指摘されている丘陵地の特徴は、雨などで土が流されやすいために表土が薄いことである。この結果、葡萄の樹は根を地下深くに伸ばすことになる。このために雨量の少ない時期であっても枯れること泣く葡萄をならすことができると考えられている。さらに痩せた土地は自然に樹勢を抑え、葉や果実の過剰繁茂を抑え、果実への日当たりや風通しをよくするとされている。
 これをうけて現在のブドウ栽培は風通しをよくするために植樹密度をコントロールし、間隔を開けて葡萄を植樹することがある。葡萄の樹が若木と高齢木で優良な葡萄を生産するのは、葉の量が少ないために風通しがよいからだと考える生産者・研究者もいる。

 また丘陵地は水はけがよく、葡萄の水脹れを防ぎ、凝縮感のある果実を生産する。「教皇の畑」とよばれる丘の上部に儲けられた区画は砂礫質で水はけがよく、丘の下部の「修道士の畑」は粘土質で水はけが悪かった。現在では粘土質の畑でも高品質の葡萄を栽培するために、排水性を向上させるために暗渠排水が施したり、あまり深くまで根をはらない台木を使うことで根腐れを防ぐことで粘土質の畑からも素晴らしいブドウが生産されている*1。ときには収穫の数週間前からビニールシートで葡萄樹を覆って雨避けをして、水脹れを防ぐ場合もある。ただしビニールシートの場合、AOC法によって2000年以降禁止されたために、ペトリュスやマルゴーなどでは行われなくなった。逆に干ばつ時に水分が地面から蒸散しすぎないように、松の樹皮で表土を被う方法も開発されている。

 丘陵地の傾斜は日射と強く関連している。川面からの照り返しによって得られるエネルギーは無視できない。伝統的には放熱効果のある岩を畑にまいて保温材として利用したり、近年はアルミシートを畑にしき、照り返しによって日照を補っている畑も存在する。

 当然ながら微量元素によって、生物の植生は大きく変化する。しかしまた長年の連作によって疲弊した畑に対して客土*2がなされていたり、また酸性に傾いた土地を中和するために牡蠣殻がまかれることも普通である。このような畑に対する人為的な働きかけは、健康な葡萄の生育に必要であり、作られるワインに大きく影響する。しかし、鉄分が多く含まれる土壌で育ったブドウで作られたワインから鉄っぽさが感じられているわけではない。

人の手によって変えられないもの

前述のように微小環境ならば変更も可能だが、気候条件は変えられないことも多い。そのために葡萄品種の選択に関して強い制約として働く。地球温暖化によってイギリスがスパークリングワインの生産が可能になったのもその一つと言える。

同一品種でも、気候の違いは重大な違いを生むと考えられている。堀賢一はカリフォルニアとブルゴーニュのピノ・ノワールの差異を以下のように説明する。

顕著な違いがあるとすれば、それは収穫のタイミングでしかありません。収穫時の糖度や酸度、生理的成熟の度合いの違いから、「ボルドーのカベルネ・ソーヴィニョンは渋みが強く、果実味がひかえめである一方、カリフォルニアのカベルネは渋みがおだやかで、果実味に富む」といった個性の相違が生まれていると考えられるのですが、これは自然環境要因の中の「気候」に由来すると考えることができます。
 すなわち、秋に雨が降ることが多いボルドーでは、果実の理想的な完熟を待たずに収穫を行わなければならないことがあり、そのため、伝統的に果実味のひかえめなワインが生み出されてきた一方、カリフォルニアの強い日差しの下で糖分の蓄積が加速されたカベルネ・ソーヴィニョンは、潜在アルコール度数が12.5%程度の段階ではフレヴァーの成熟が追いついておらず、この時点で収穫してしまうと、味わいの薄いワインにしかなりません。フレヴァーの成熟を待ってから収穫するようになった近年では、アルコール度数が14.5%に達することも珍しくありません。

http://www.wine.or.jp/wands/2004/5/uncork.html

 現在天候のような違いを除いて、科学的にテロワールとして確認できているものの一つは畑の物理組成である。例えばシャンパーニュ地方で有名な石灰質土壌は多孔質で、ある一定の段階までは水をよく蓄えてブドウに水分を供給するが、降雨量が多く閾値を越えて飽和すると高い浸透性を発揮し下層土に水を流し、水脹れを防ぐ。同時に養分の少ない土でもあり、自然に枝葉の繁茂を抑制するので、良質の果実が収穫可能になる。

天然酵母

現在ワイン醸造に置いて培養酵母を用いることが一般的で、そのために個性が失われたという批判は多い。
しかしビオディナミと呼ばれる特殊な自然農法や有機栽培を行うワイン生産者の中には、一般的に培養酵母でなく天然酵母を使う場合がある。酵母の選択に関しては、醸造技術に属しているが、畑やワイナリー由来のものであることも確かであり、テロワールの条件に合うと考えるものもいる。
単一の培養酵母を利用した場合、クリーンな香味を持ったワインになるが、天然酵母は複数、時には数百の異なる株が複雑に作用して、複雑なワインになることが知られている。とはいえ、天然酵母に拘泥した結果薄幸に時間がかかり、果実味がとんでしまい、逆に一様な印象になることも多く批判も多い。

テロワールではないと考えられるようになったもの

葡萄品種・クローン違い

 DNA分析によって、テロワールとされてきたものがクローン違いや品種名の違いに由来していたということが明かになる場合もある。カルメネールが北イタリアではカベルネ・フランとされてきたり、チリではメルローであった例が著名。また、ピノ・ノワールのモノセパージュとされているブルゴーニュの赤ワインにピノ・ムニエがブレンドされていると告発する生産者がいる。
 イタリアのように地元の品種を使っている地域の場合、今でもテロワールと品種の個性の区別がされることは少ない。

 とはいえ、葡萄品種の選択や地域品種それ自体がテロワールと考えられなくもない。

醸造法

 醸造法も重要な要素である。例えばワインのミネラル感や火打石の香りは、これまで土壌成分に含まれる石灰質土壌(キンメリッジ層)に由来するテロワールといわれてきたが、伝統的な醸造法では発酵において二酸化硫黄の過剰利用されていて、これが乳酸菌の働きを弱めワイン中のリンゴ酸が変換されないからといわれたり、ワインに奥行きを与える土の香りは微量の貴腐菌の作用であると指摘されている。樽熟成に使われるオークを蒸気か直火で曲げるかといった加工法もワインの特徴に影響を与え、テロワールと誤解されてきた例などがある。
 バローロのテロワールと言われてきた「収斂性のある強い渋みと酸味」も醸造法と密接な関係がある。伝統的に三ヶ月に及ぶ浸漬によって種や皮、果梗を抽から抽出された、深い色とタンニンを含んだワインを大樽で3年ほど熟成させることによってできた個性であり、土地柄とは別のものであった。
 この他、搾汁された発酵前果汁を逆浸透膜や減圧蒸発、セニエ(血抜き)といった方法で濃縮することで水分を除去することは一般的である。

貴腐菌・腐敗酵母の利用

一部のワイナリーでは貴腐化した葡萄を一定の割合で混合することで、独特の風味をワインに与えている例が知られている。また、腐敗酵母ポタノマイシスが生成する芳香成分を好む一部のワイン評論家からの評価を得るために、腐敗発酵させたワインをブレンドするワイナリーも存在する。

醸造師

 著名な醸造師であるアンリ・ジャイエは、現在なおDRCなどで行われている伝統的なスタイル「ピノ・ノワールの果梗を残したまま発酵させる」手法を止め、完全に除梗して果実のみを破砕し、低温で浸漬したあとに天然酵母で発酵させてから、100%新樽で熟成・マロラクティック発酵をへて、ノンフィルターで樽から直接瓶詰した。このスタイルは様々な地域で継承されており、テロワールとは考えられていない。

テロワールのためなのか疑惑があるもの

しばしば葡萄の老齢樹から優れたワインが作られるのは、よくのびた根が地下の微小元素をよく吸い上げるためにテロワールが反映されるからだという説明がなされる。高樹齢の葡萄から高品質のワインが生産されるという考えはAOC法にも反映され、樹齢三年以下の葡萄樹は利用が制限されている。しかし近年研究によれば、老齢樹の樹勢は根においても弱まっており、そのため自然に枝葉の繁茂が抑制されることで風通しや日当たりがよくなるから高品質の葡萄が実るのではないかという指摘がなされている。

懐疑派

 ワインの世界的な品質向上に伴って、ニューワールドの生産者を中心に懐疑派が増えてきた。日本人では、ワインジャーナリストの堀賢一が著名である。
 彼らの主張は以下のようなものである。

  • フランスだけが神の恩寵=テロワールに恵まれているわけではなく、優れたワインは他の地域でも作ることができる
  • 土壌の化学成分はワインの味わいに反映されない
  • ワインの味わいは人の手によって大きく変えられる

 テロワールは主にフランスワインの生産者や愛好者によって主張されることが多いのだが、フランス的なスタイルで作られたワインとフランスワインをブラインドテイスティングをすると、経験豊かなテイスターであっても往々にして間違えることが知られている。

懐疑派に対する反論

懐疑派が、醸造テクニックやクローン、気候を選抜することで望むワインを作り上げようとしている風潮に対し、伝統的な銘醸地の生産者は、テクニックやクローンもまたテロワールであると主張する時がある。つまり地元の環境に適したテクニック、クローンの選抜こそがテロワールの本質であると。

*1:典型的な例はドメーヌ・ルロワが所有するクロ・ド・ヴージョで、その2/3が修道士の畑で育てられた葡萄に由来する

*2:ロマネ・コンティやラ・トゥールでは大規模な客土が記録されている

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