甲府から自宅へ帰る途中だった。駿河湾に流れ出る富士川はこの地に遡るまで幾つにも分かれる。本流は釜無川と呼ばれる。それに沿った道だった。甲府には修理のために自転車を車に載せて店に訪ねて行った。プロの手によりそれは直ぐに治った。自分はサイクリストを名乗りながらもチェンリング一つ自力で外せなかった。さすがプロだという感心と、自分は何もできないし直そうという気概もない、そんな敗北感が混じりあい自分を運転に集中させなかった。釜無川に沿って緩く登る国道二十号線は決して楽しいルートではない。特に自分が乗っているような旅をする自転車・ランドナーに乗るのなら多少遠回りでも旧街道や並行して走る農道や里道が楽しい。…