わたしはきょう、この物語の結末を、つまり、一九五三年三月、わたしが父の家で、父の死を見守りながら過した日々のことを、あなたに語りたいと思う。 いま論じられているように、ほんとうにあれはひとつの時代の終り、新しい時代のはじまりだったのだろうか? わたしはそれを判断すべき立場にはない。それには時をかそう。わたしの関心は時代ではなく、人間である。 それは怖ろしい日々だった。もう慣れっこになり、恒久不変と思われていたことが、ふいに足もとからぐらつきだしたような感覚―それがはじめてわたしを襲ったのは、三月二日、大学のフランス語の授業に出ていたわたしに呼び出しがかかり、「『近邸』のほうへお越しいただくよう…