予備校時代、札幌で過ごした俺は、週に三度は「五丈原」の暖簾をくぐったものだ。あれから30年が経った今も、あの店は変わらず激戦区で繁盛している。俺がいつも頼むのは「とんしお」ラーメンだ。豚骨ベースのスープに塩味の繊細さが加わり、見事なバランスを保っている。五丈原といえば、とろけるチャーシューも外せない。受験勉強で疲れた深夜に、チャーシューおにぎりをかじりながら過ごしたあの頃を思い出す。そのおにぎりの味は、今も昔と変わらない。 チャーシューの脂はスープに深みを加え、そこに海苔の香りがふんわりと漂い、全体が一つにまとまっていく。昔は、デフォルトで茎わかめも入っていて、あの食感が大好きだった。今はもう…