新春第一日の空の完全にうららかな光のもとには、 どんな家の庭にも雪間の草が緑のけはいを示すし、 春らしい霞《かすみ》の中では、 芽を含んだ木の枝が生気を見せて煙っているし、 それに引かれて人の心ものびやかになっていく。 まして玉を敷いたと言ってよい六条院の庭の初春のながめには 格別なおもしろさがあった。 常に増してみがき渡された各夫人たちの住居《すまい》を写すことに 筆者は言葉の乏しさを感じる。 春の女王《にょおう》の住居はとりわけすぐれていた。 梅花の香りも御簾《みす》の中の薫物《たきもの》の香と紛らわしく漂っていて、 現世の極楽がここであるような気がした。 さすがにゆったりと住みなしている…