中高大と女子校で育った私には、恋愛というものに関して、あまりにも多くの空白があった。だからこそ、新卒で入った会社で、隣の席に座っていた木川くん(仮名)に恋をしたのは、ある意味でとても自然な成り行きだったのかもしれない。 木川くんは小太りで、色白で、ガチャピンみたいに丸くて垂れた二重をしていた。派手さはなかったけれど、誠実そうで、チャラくもなく、極端に陰気でもない、ちょうどよいバランスの持ち主だった。そう、バドミントン部の男子みたいな、そんな感じの人だ。 彼は私の小さなボケにも律儀にツッコミを入れてくれたし、朝食に持参した薄皮クリームパンを一つ分けてくれたりもした。同期の間では「ふたり、もう付き…