日本に於いて黄砂が観測されるのは、三月から五月にかけてが通常であり、わけてもだいたい四月を目処にピークがやってくるという。 が、それはあくまで海を隔てた、この島国に限った常識(はなし)。 黄砂の供給源である大陸本土に至っては、だいぶ事情を異にする。 (Wikipediaより、黄砂にかすむ京都市街) 早や一月から黄塵万丈、濛々として視界を塞ぎ、その状態がおよそ半年、七月まで持続するから大変だ。日本式の気構えで悠長に臨もうものならば、たちまち白眼を剥かされる。 「昭和十三年度のおれたちが、つまりはそれ(・・)の生き証人よ」 と、満鉄社員金子茂は紙面を通じて物語る。 この人もまた日高明義と同様に、日…