同時刻、アカツキ島、アスハ家別荘。 この別荘の主たるカガリは、コツコツと木製の床板にヒールの音を響かせながら、終始落ち着きなく、神妙な顔である一室のドアの前をウロウロと行ったり来たりしていた。 銀のヘアーバングルで抑えた柔らかな金糸、同色のイヤリングにナチュラルに仕上げたメイク。更にスリットの入った紺色のネックホルダーのドレスと、同色のエナメルのハイヒールを身に着けたその姿は、夜会に出向く淑女のごとき装いだ。 にもかかわらず、どこか緊張の籠った表情で、時折眉間にしわを寄せながら、待ち疲れたように腕を組んでドアに寄り掛かる。するとドアの向こうから馴染みの声がかかった。 「さぁさ、お待たせいたしま…