「こうして改めて見てみると……。人が住まなくなった家の傷みが早いと言うのは、本当だなあ」 暦の上では秋に入っているはずなのに、まだまだ日差しは強い。首筋を流れる汗をハンカチで何度も拭いながら、私は廃屋の前で立ち尽くしていた。 ここは、都市部からずいぶんと離れた山間の村だ。 電車はもちろん、汽車も通っていない。ずいぶん前から廃線の危機が叫ばれているローカル線の駅からバスは出ているものの、一時間以上山道を登ってこなければいけない。それでも、まだバスがあるだけ有難いと言うべきなのかもしれない。山一つ越えた隣の村には、もうバスも来なくなったそうだから。 盆地にあるこの村の主な産業は稲作だ。私の背中側に…