訓読 >>> あしひきの山の黄葉(もみちば)今夜(こよひ)もか浮かび行くらむ山川(やまがは)の瀬に 要旨 >>> この山の黄葉は今夜にも散って、浮かんで流れていくことだろうか、山川の瀬に。 鑑賞 >>> 天平10年(738年)ころの冬、大伴書持が橘奈良麻呂の宴に出席し、諸詩人と競い合って詠んだ歌。「あしひきの」は「山」の枕詞。 この歌について、斎藤茂吉は次のように言っています。「皆黄葉(もみじ)を内容としているが書持の歌い方が稍やや趣(おもむき)を異(こと)にし、夜なかに川瀬に黄葉の流れてゆく写象を心に浮べて、『今夜こよひもか浮びゆくらむ』と詠歎している。ほかの人々の歌に比して、技巧の足りない…