お盆の帰省で賑わう秋田の片田舎。蝉の声と稲の匂いが混じる真昼、田んぼを抜ける生温い風に乗って、得体の知れない“それ”は現れた。遠目にはただ白く、ゆらゆらと波打つ影。だが双眼鏡を向けた兄は、二度と戻らない場所へ落ちてしまった──。 物語の背景 語り手は中学生の〈俺〉。夏休み、兄とともに祖父母の家へ帰省していた。周囲は見渡す限りの田んぼと用水路。澄んだ空気に、昼の陽射しが揺らめく典型的な田園風景だった。家族の中で最も好奇心旺盛だった兄は、毎年ここで昆虫採集や探検ごっこに夢中になり、俺はその後ろを追いかけるのが常だった。 出現する“くねくね” 正午過ぎ、生暖かい風が田を横切った瞬間、兄が「変わった案…